ギフト2
開いた口が塞がらなかった。つまり要するに俺はこの世界の人間じゃないと言われているのだ。
『...じゃあ俺の髪が他の人と違うのって』
『その通りです。本来エデンシアには黒髪の人間は存在していません。その髪と瞳は別の世界より来た証でもあるのです』
『質問を変える。俺を助けたのには何か特別な理由があるとマズルカは言ったが、その理由は一体何なんだ。俺が別の世界の人間というのと何の関係があるって言うんだ』
マズルカはふわふわと浮かびながら俺の質問に答えてくれる。
『お前も既に耳にしていると思いますが、魔物の数が増えています。そして新しく見つかったとされるダンジョン。これらは無関係ではなく全ては一つの線で繋がっているのです』
『...どういう意味だ』
『魔物の王と呼ばれる存在がダンジョンの奥深くにて現れました。別の世界のものを倒せる可能性があるのは、別の世界より来たるもの、つまりは異世界の血を引き継ぎしライザ、お前なのです』
ゆっくりと手の届く目の前までマズルカは降りてくる。
『今から私はお前に力を授けます。この世界の理より外れているお前になら、他の人間が持つことのできない権能を授けられます。それを使いダンジョンの奥深くに赴き、魔王を倒しなさい』
輝いていて何となく球体としか判別できなかったマズルカが徐々にその姿を現し始めた。光が収まっていき、中から現れたのは見たこともない模様が浮かぶ銀色の球体だった。やはり球体だったのか。思い切って触れてみると思ったより温かい。
すると突然、球体に縦一線ヒビが走った。壊してしまったと焦った俺が手を引っ込めそうになるとマズルカの声が響いてくる。
『そのままでいなさい。これは私の分体故に何ら心配はいりません。ライザよ、よく聞きなさい。どのような権能がお前に宿るのか私も検討が付いていません。そしてこの力をお前に託したのち、私の分体としての役目は終わります。あとは自力でなんとかしなさい』
俺が返事をする前に球体が真っ二つに割れてそれぞれが塵となって消えてしまった。残ったのは先ほどよりも優しい色をした光だった。
突然その光が俺の体に吸い込まれいく。驚いた俺が思わず目を閉じるが、何秒経っても何ら変化はなく、穏やかな海の音と香りがしているだけだった。
もうマズルカの声は聞こえない。
「...夢だったのか?いったい俺はどうなったというんだ」
海に浮かびながら自分の体を確かめてみるが特に変わった所は見受けられなかった。ただ何となくほんの少しだけ体の芯があったかいような気がする、本当にそれだけだった。
そこから俺はひたすら流されるまま、見慣れた木片と共に海に浸かって漂っていた。何故か海は夜になってもとても温かく、一切寒さを感じられずにいられた。そうして丸一日が経った頃だろうか、目を覚ますと俺は砂浜に倒れていた。
「ぺっ!げほ!口の中がしょっぱいなぁ...ここは?俺は辿り着けたのか...?」
そばにずっと自分を助けてくれた木片を確認できた。同時に自分だけが生き残ってしまい、こうして生を実感できていることが変な気分だった。
「とりあえず...人間を探すか」
俺はゆっくりと立ち上がり、砂浜から北へ、遠く見えている山の方角へとゆっくり歩き始めた。




