ギフト
「いってぇええ」
『もう一度言います。お前はここで死ぬべきではない』
改めてこの球体を観察してみる。ピカピカ光ってるが、どことなく球体の形をした"ナニカ"というのは目視できた。どうやら神様らしいが、それにしては頭にぶつかってくる感触が...どちらかと言うと金属のような...。
『それはいまここに"在る"のが私本体ではなく、私の分体だからです』
ーーなるほど。俺は妙に合点がいってしまった。少なくとも死んでるはずの状況で、いまこうして生きてるのは何か特別な力が働いていないと説明はつかなかった。それに本体ではなく分体という説明も妙に納得してしまった。
『創造神がぷかぷか浮かぶ球体なわけないもんな』
『...話を続けましょう。私がお前を助けたのには大いなる理由が存在しています。お前は偶然にも私に命を拾われたのではない。"お前"だからこそ私は助けることにしたのです』
...さっきから俺だからとか言ってるけど、未だにその答えがわからない。俺は至って普通のなんなら冒険者ランク的には最底辺レベルで"弱い"人間なんだが。一体何が特別だと言うのか。
『その黒髪と瞳』
『え?黒髪?』
濡れた手で自分の前髪に触れてみる。何らいつもと変わらない自分の変な色の髪の毛だった。
『いいですか。今から言うことをよく聞くように。この世界エデンシアには色々な種族が生きています。それらは全て私が創りました。もちろん人間もです』
そこでマズルカは話すのを止めて沈黙する。ややあって今までの声色とは違う、すこし言いにくそうな言い方で話し始めた。
『たしかに私は人間も創りました。しかしライザよ。お前はこの世界の人間ではありません』
『ーーーーーえ』
何を言われているんだ俺は。確かに親は物心ついた時には居なかったが、それでも育ててもらった記憶はちゃんとある。なのに俺がこの世界の人間ではないってどういう意味で...。
『はるか昔。私がこの世界に"出た"時、この世界は何もない世界でした。私はそこに海を、陸を、空気を、生き物たちを創っていきました。そして私が眠りにつく前、最後に創ったのが人間です。』
この辺はエデンシアで生きる人間なら一度は耳にしたことのあるお伽話だ。まさか本当だったとは思わなかったが。
『ですが最後の生き物を創るとき、私にはもうあまり力は残されていませんでした。ですが私は創造神としてこの世界に在る身。創造こそが私の使命なのです。ーー残る力を出し切り偶然にも生まれたのが人間という種族でした。』
俺はいつの間にか真剣にマズルカの話に耳を傾けていた。何か大切なことを今から話される、そんな予感がしていたからだ。
『...その際に偶然とも言える産物でしたが、この世界に歪みのようなものが出来てしまったのです。それはこことは違う"何処か"に通じている言わば出口であり入口のようなものでした。私は自身の力を誤りこの世界に孔をあけてしまったのです』
マズルカは話し続ける。
『私は力尽きてしまい、その"孔"を塞ぐ力はもう残されていませんでした。その孔の先は2つの世界があることが分かりました。一つはこの世界に似ている世界。もう一つが"魔物"と呼ばれるものが生きる世界』
...つまりマズルカの話が本当だとすると、魔物は元々この世界の生き物ではなかったということになる。違う世界からやって来たのか。ーーーてことは俺は?
『貴方の祖先は遥か昔にその"孔"を通ってこちらにやってきた別の世界の人間だったのです』




