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権能の正体2

「さすがにこれだけ夜もふければこんな辺境の警備も昼間よりは手薄になるか」


 俺はずっと身を潜めていた岩陰から身を乗り出し、麓で警備にあたっているドラグナー達を確認した。昼間は4人体制で警備に当たっていたようだが、夜もふければ2人体制で交代しながら警備しているらしい。 これなら見付からずに突破できる可能性がある。どうやら俺は権能の力で夜目も問題なさそうだが、おそらく普通の人間だと篝火などの灯りが必要不可欠だろう。


「これなら少し迂回して回り込んでも近付かれない限り大丈夫だな」


 闇夜に紛れながら俺は行動を開始した。野営している場所からできるだけ離れて下山を開始する。もしこれが空が明るいうちは見回りが来て上空からでも簡単に見つかってしまっただろうけど、今の内ならなんとか...。

 俺はできるだけ迅速に下山し、野営している兵士達から離れる形で山岳部を抜け切った。俺はそのまま平原を走り続け、山頂から見えていた村を目指していく。


「村に着いたらなんとかして食料確保しなきゃな...。おそらく俺のギフトは身体強化系なんだろうけど、それでいてこれだけ空腹なのはもう限界が近付いてる証拠だもんな...」


 色々自分なりに考えてみたが、俺のギフトの特徴は付与されるまでの自分と比べて、圧倒的に身体能力が向上している所にある。身体能力向上というのは何ともシンプルでありきたりに思うが、振り幅がとても大きいことには気付いてる。

 敵の攻撃が遅く見えそして宵闇でも見通せる目に、無尽蔵かと疑いたくなるこの体力。走り続けているのに疲れない筋肉にしても、いま思えば一撃で熊を殺れたことを鑑みると、筋肉にも何らかの作用は働いてると見て間違いないだろう。

 明らかに常人を超えている。...くそ喉も渇いた。当たり前か、そろそろ飲み食いせずに何日か分からないもんな。村に着いたらどうにかして水と食料を分けてもらうなりして、その後のことはその時に考えよう。

 それからも北へ走り続けた俺は夜が明ける頃、目指していた村がそろそろ見えてくるぐらいまで辿り着いた。ひとまず村に入ったらどうにかして食べ物だ。もう割と限界がきてる。倒れないのは権能の力ってとこか。


「ーーーかーーたーーーけて」


「...ん?何だ?声...か?一体どこから」


このまま平原をまっすぐ北に走っていけば村に着くが、俺は微かに聞こえた声がどうしても気になってしまった。耳を澄ますと村の方角より西側、どうやら森が広がってる方から聞こえてくるらしい。

 俺は急いで声が聞こえる方へ走り続ける。森にはすぐ着いた。俺は迷いなく森に入ると声が聞こえてる方へ全力で走り続ける。


「いやぁ!誰かっ助けて!離してってば変態!」


「へへっそう抵抗すんなよお嬢ちゃん。ここはラプラスの森だ。こんな朝早くにここを訪れるような酔狂ある人間はいねえのよ...へへ。大人しくしてれば命までは取らねえよ。それどころか気持ちよくしてやるよ」


「ひっ...やめて!触らないで!やめて!」 


 襲われてるのは人のようだ。それも強姦されそうになっているらしい。声のするままに走り続けると森の中の開けた場所に出た。眼前に男にのしかかられて必死に抵抗している女の子を見つけた。俺は瞬間的に近付くと男を無造作に蹴り飛ばした。


「ーー何してんだ、この変態野郎が!」


ドガッ!!


「がっ」


 男は俺に腹の部分を横から蹴られて、無造作に吹き飛んで転がった。女の子を見る。...どうやら間に合ったらしい。震えているが下着はまだ付けたままだった。女の子は俺を信じられないものを見るような目で見てくる。あれ?俺助けたんだけどな。もしかして勘違いされてない?


「...あなたも私に何かするつもりなの...?」


 やっぱり勘違いされてた!!さっきの変態野郎を吹き飛ばしたの俺なんだけどな!...気が動転してるだろうし仕方ない、か。


「...違う。俺はアンタの声が聞こえて走ってきたんだ。アンタを襲ってた男は向こうで伸びてるよ」


 俺は吹き飛ばした際に無様に気を失ってしまった男を指差す。指差す方向を女の子が見ると男は気を失ってるのかピクリとも動かない。

 そこで緊張の糸が切れたのか女の子は勢いよく泣き出してしまった。


「う...うぅ...うぇえええん!!!」


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