表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

貝殻ビキニと豚と真珠

 どこかにある、不思議な雑貨店のお話。


 朗読台本としてご自由にご利用いただけます。

 ご利用の際は、作品URLをご明記ください。

(ライブ配信等、上記が困難な場合は、「台本:おさくらもみじ」とお入れください)

 著作権は放棄していません。


 朗読目安:三分

 登場人物二人+ナレーション

「ねぇ、イナリさん。パーフェクトパールって曲、知ってますか?」


 薄暗い雑貨店で商品を眺めていたトン吉は、ちらりとレジへ目をやった。椅子に座り本を読んでいた店主のイナリが顔を上げる。


「えぇ。最近流行ってるみたいですね」


 イナリの脳裏にぼんやりと、貝殻ビキニと短いデニムパンツ姿の女性アイドルグループが浮かぶ。


「その中に、豚に真珠って歌詞があるんですが……」


 躊躇いがちに言いながら、トン吉はイナリに近づく。


 トン吉は、トンカツ屋の軒先に立つ看板豚だ。全長一メートル弱。コック姿の二足歩行の豚像が、人に愛され妖怪となった。


「見てもらえますか?」

「はい。構いませんよ」


 イナリはレジを出て、頭一つ以上小さなトン吉と向き合った。白いコックコートに蹄がかけられる。


 ちなみに、ただいま来店中のピンク肌のトン吉は、分身である。本体は燻んだ金色の豚像で、コックコートは一体化していて脱げない。


 トン吉のコックコートがはだける。紐で左右が繋がった、六対の貝殻ビキニが現れた。張りのあるピンク肌にホタテの貝殻が十二個。紐が食い込むわがままボディーは、まるでハム。


 思わぬ姿にイナリは息を飲む。トンカツ屋看板豚の名誉を守るため、ハムは頭から追い出した。


「驚くのはまだ早いですよ」


 虚ろな表情で、トン吉が貝殻ビキニをずらす。純白の球体が姿を見せた。


「真珠ですか」

「えぇ。乳首が真珠になりました」


 まさに豚に真珠。だが、イナリは首を傾げる。


「真珠といえば、あこや貝。トン吉さんのそれは、ホタテでは?」

「歌ってる子達がホタテの貝殻ビキニなので……」

「結構いい加減なんですね」


 トン吉の目が、遠くを見やる。


「私は、人の思いにより生まれました。そのせいで、世間の影響を受けやすいんです」

「民意の反映ですか」

「でもこれじゃあ、トン吉じゃなくてトンチキですよ」

「心中お察しします」


 力なく笑うトン吉を労い、イナリは仕事に取り掛かる。


「そのビキニと真珠でしたら、うちで買い取り可能かと」

「査定、よろしくお願いします。ハム状態はもう嫌だ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ