表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

ブロッコリーを讃えよ

 どこかにある、不思議な雑貨店のお話。


 朗読台本としてご自由にご利用いただけます。

 ご利用の際は、作品URLをご明記ください。

(ライブ配信等、上記が困難な場合は、「台本:おさくらもみじ」とお入れください)

 著作権は放棄していません。


 朗読目安:三分

 登場人物三人+ナレーション

 ブロッコリー。アブラナ目、アブラナ科、アブラナ属。


 茎の先に広がる緑の蕾は、豊かな森の源だ。遥か昔、原初のブロッコリーが産声を上げ、瞬く間に産地拡大。こうして世界に、数多の森が生まれた。


 皆は忘れても、大地は覚えている。始まりの緑ブロッコリー。愚かな生き物達よ、思い出せ。


 ブロッコリーを讃えよ。ブロッコリーを讃えよ。


 *


「父が捕まえた、異常増殖するブロッコリーです」


 神社の娘である結衣子が、薄暗い雑貨店のレジ台に風呂敷包みを置いた。店主のイナリが中身を確かめる。丸いタッパーに封じられた、手のひら大のブロッコリーが一株。未加熱のため色は薄い。


「ブロッコリーって、キャベツの変種だよね?」

「そうなの? ……ですか。だったらこのブロッコリー的には、キャベツは草原の始まりなのかも」


 咄嗟に出た言葉を無理やり敬語にして、結衣子はタッパーを見つめた。自認が森なのだから、ありえない話ではない。十五歳になったばかりのこの少女の勘は、妙なところで鋭いのだ。


「一日五個増えるって話だったよね? とりあえず開けてみようか」


 イナリが風呂敷の中心でタッパーを開ける。


(ブロッコリー! ブロッコリーを讃えよ!)


「え⁉︎ 何⁉︎ うるさ!」


 結衣子が耳を塞いだ。しかし脳内に直接響くブロッコリー讃頌には意味がない。


 増殖したブロッコリーが、タッパーから溢れて風呂敷に転がる。イナリは、タッパーに原因のブロッコリーだけを残して再びフタをした。


「封印されて力が溜まってたようだね。一気に五個増えた」

「え? じゃあ、百日閉じ込めたら、一気に五百個のブロッコリーが……」

「いや、それはない」

「千年の封印を経て、地球がブロッコリーになったり」

「しないよ」

「良かったぁ」


 イナリが風呂敷に転がるブロッコリーの一株を手に取る。


「どうするんですか? それ」

「普通に食べれるよ。いるかい?」

「はい! きっと母も喜びます」

「タッパーの子は、知り合いの筋トレ好きに聞いてみるよ。毎日新鮮なブロッコリーが食べれるとなれば、望み通りいっぱい讃えてくれるはずさ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ