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第二章:永遠の命と沈まぬ魂

永遠の命を与えられた生命たちが、死ねない苦しみの中でもがいていた。ゼヴェルィドラはその声を聞き、彼らの代表──タンタロスの願いを受けて行動を起こす

深海の底は暗く、海流さえも届かないほどの静けさに満ちていた。

そこには、永遠に死ねぬ生命たちがうごめいていた。


体は何度裂かれても再生し、

魂は何度壊されても消えることを許されない。

それは、マリアラムが生命に与えた「永遠の命」の副産物。


死を奪われた彼らは、

痛みも苦しみも、永遠に続く罰として抱え込んでいた。


その中に、一際強い意志を持つ者がいた。

名をタンタロス。


彼はかつて弱者として虐げられ、肉体を何度も失いながらも、意識だけが残り続けた。

やがて彼は「死にたい」とも、「生きたい」とも言わなくなり、

ただ静かに、終わりを願う存在となった。


だがある夜、彼は再び口を開いた。

波に溶けるような、微かな声で。


「……この終わらない世界に、意味はあるのか?」


その言葉が、地球の深部に響いた。

ゼヴェルィドラの心に、痛みとして届いた。


ゼヴェルィドラは静かに海底へ降り立つ。

彼の足が海底の泥に触れた瞬間、

時間がわずかに緩み、再生を繰り返していた生命たちの動きが止まった。


彼は周囲を見渡す。

タンタロスの身体は無数の傷で覆われ、裂けた部分からは光が漏れている。

だが、その光は命の証ではなく、苦痛の痕跡だった。


ゼヴェルィドラは問いかけた。


「タンタロス。君は何を望む?」


「……眠りたい。もう、痛みを感じたくない。

 けれど、もし次があるなら……“選びたい”。」


「選びたい?」


「うん。

 生きるか、終わるか。

 それを、自分で決めたい。」


ゼヴェルィドラは目を閉じた。

その言葉に、確かな真理を感じた。


永遠の命──それは安らぎではなく、自由の欠如だった。


ゼヴェルィドラは両手を広げ、海の流れを止めた。

彼の掌に集まるのは、地球の鼓動そのもの。

静かな圧力が深海を押し潰し、音も色も吸い込んでいく。


「では、君に“終わり”を返そう」


タンタロスの肉体が淡い光に包まれ、徐々に輪郭を失っていく。

肉が溶け、骨が崩れ、魂が静かにほどけていく。


だが、ゼヴェルィドラはそれを“消滅”とは呼ばなかった。


「終わりとは、消えることではない。

 終わりとは、選ぶことだ。

 君が次に生まれる時、死を選べるようにしておこう。

 それが、自由だ。」


その瞬間、深海を覆っていた沈黙が柔らかく崩れ、

長く歪んでいた再生の連鎖がほどけていった。


再生を強いられていた生命たちは、初めて“眠り”を知った。

波の音が、祈りのように彼らを包み込む。


ゼヴェルィドラは海底に残ったわずかな光を見つめ、静かに呟いた。


「これが、永遠の命の果てか……」


彼は理解した。

死がなければ、生命は循環しない。

痛みも再生も、意味を持たなくなる。


生命とは、終わりを前提としてこそ輝く。

永遠は、進化を奪う毒である。


その真理を胸に刻み、ゼヴェルィドラは立ち上がった。


「マリアラム。

 お前は生命を愛したのだろう。

 だが、愛の形が間違っている。」


波間に残るタンタロスの残光が、

まるで導きの灯のように揺れていた。


ゼヴェルィドラは静かにその光を見送り、

やがて大地へと向かう。


彼の足跡が残すたびに、

地球の鼓動はゆっくりと整い、

過剰だった再生の波が落ち着いていった。


これが、最初の「死」が訪れた瞬間であった。

そしてそれは、地球にとって“初めての安堵”でもあった。


マリアラムとロンドベェティへの対話が始まる。

永遠の命の真意を問うゼヴェルィドラと、創造の母の衝突する──

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