誕生
世界が冷やされ海水の火口から熱で溶かされた分子同士が結合し合い、新たな生命を誕生させ始めた頃。
陸が形成されその上には緑苔の芝生と、菌糸類が空からの栄養を得ようとしていた。
一方その頃───
レヴィアンが住まう海では、マリアラムが育んだ死せず繁殖せずの生命が漂っていた。
最初の彼等は、結合と分離を繰り返し、自分が持たない能力を相手から貰い、相手が持たない能力を自分から切り離して進化を遂げて行った。
現代より二十億年前の話だ。
偶然が必然か、その進化は波及するように形を形成し、各々が種として確立していく。
あるものは深海の少ない光から自分が持たない能力を奪う為に。
あるものは浅瀬の高濃度の酸素の中でより肥大化するように。
深海は魔界と呼ばれ、強者のみが乱立する力こそ全ての世界だった。
しかし、永遠の命は朽ちず滅びないが故に身体を生まれ変わらせて傷を治すしかなく、どれだけボロボロになろうとも、決して意識は途絶え無かった。
その状況にマリアラムは静観し、ロンドベェティは大地に進出させるための整備、アゼェルはロンドベェティと結託しより生命が生きやすい大陸を作った。
陸が形成されその上には緑苔の芝生と、菌糸類が空からの栄養を得ようとしていた。
そんな状況が十四億年続いた時、変わらない現状とこのままでは星が無駄なエネルギーを使って滅びることを憂い、星を魅せる龍アストイヴスと大海を動かす龍レヴィアンは世界を閉じ、地球を守る為に星を凍らせる。
それに激怒したマリアラム、ロンドべェティ、アヴェルは初の争いを始めた。
マリアラムは生命に単一繁殖を与え、ロンドべェティは大気に酸素を満ちさせ、恒星を含む星からのエネルギー供給を停止させ、アヴェルは海の面積を減らした。
その不毛な争いは二億年続き、星は確かに生命にとって過ごしやすい世界となった。
──だがそれは地球の望むものでは無かった。
唯一地球と月を繋ぐ龍であるアストイヴスは、月にいる最後の龍に星の命運を託し、自らの力を代償にその龍を目覚めさせる。
その龍の名はゼヴェルィドラ──
──この龍の誕生により、世界は大きく動く。