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プロローグ

適当に書いて投稿した短編から二、三年ぐらい経ちました。

筆力が確実に落ちてますけどどうぞ末永くお付き合いください。

 体内に冷たい異物が入る感覚。それに伴う激痛。赤黒い染みがどんどん広がっていく。どうして自分がこんな目に遭わなければいけないのか、思い当たる節を探すも見つかるはずがない。

 いつも通り部活が終わり、いつも通り家に帰宅し、いつも通り眠りに就こうとベッドに横になった矢先、目の前にフード付きの黒い服を纏った人物が現れ胸に鋭利な刃物を突き立てたのだった。


「気分はどうかな? 長谷川(はせがわ)大和(やまと)君?」


 男の声でそう問われた大和だが答えられる余裕などない。


「痛いか? ふふっ、そりゃそうか。普通に生きている限り刃物で刺されることなんてのはまず経験しないだろうからね」


 男の顔はよくわからない。フードで隠れていない口だけが気持ち悪い笑みを浮かべていた。常人の神経ならばこの状況で笑うことなどするはずないがこれが世に言うシリアルキラーというものなのか。

 呼吸が苦しくなる。刃物は肺を傷つけていた。


「さて、目的は完了したし用事が控えてるんでねここらで失礼するよ」


 立ち上がろうとした男の袖を掴んだ。「おっ」っと男が漏らした。

 ここで逃がしてなるものか。大和は殺気を込めた目で男を睨む。相変わらず口だけしか見えていないので何を考えているのかわからないが、少なくとも刺されて瀕死の大和に驚いているのは確かだ。


「はっはっはっ!」


 男が大きく笑った。家中に響いてるはずだが階下にいる家族が上がってくる様子はない。


「いやはや素晴らしいね。君を選んだのは正解だったよ。窮地に立たされた人間というのはどうしてこう………魅力的なのだろうか」


 『君を選んだのは正解だったよ』という台詞が引っかかった。

 この男は何を言っているんだ。それに窮地に立たされた人間が魅力的?ますますこの男がわからない。

 胸が痛い。誰でもいいから助けてくれないのか。


「よし、ご褒美だ。君が今知りたいことを答えられる範囲で教えてやろう。言ってみたまえ」


 瀕死の大和を前に男は穏やかな口調で語りかけた。ある種の挑発ともとれるその口振りは大和を徹底的に見下しているようだった。

 苦痛が全身を支配する中、大和は絞り出すように言葉を発した。


「だ……れ…? なぜ………?」

「質問は二つか。了解した、まず一つ目『お前は誰だ』ということだな。これに関しては今は教えることはできない。いずれ答えに辿り着くかもしれないし辿り着かないかもしれない。どうなるかは君次第だ」


 ノーヒントだった。


「次に二つ目『どうして自分をこんな目に遭わせたのか』だが、これは答えを言おう」


 男は鼻先が触れそうなくらい大和に顔を近づけた。


「これは答えというより頼みだ。この世界をもっと面白くしてくれ。私は退屈してるのだよ。毎日毎日平和ボケしてる者共の顔を見るのはもう飽き飽きだ。だが、君というイレギュラーな存在が加わることで世界は変わる」


 全身に力が入らなくなってきた。意識が薄れていく。

 まだ、まだ耐えるんだ。こいつの一言一句を聞き逃してはいけない。


「覚えておくといい、君の平凡な日常は終わりを告げ新たな日常が始まる。それを君は生き抜かなければならない。なぁに、どうにかなるものさ。何でも君は剣道という武術を十年もやってるそうじゃないか」


 なぜこいつがそんなことを、と大和は驚く。

 実際大和は、六歳の頃から十六歳になる現在まで剣道を続けている。一応二段取得したり、大会でそれなりの結果を残したりと戦績は優秀な方だった。


「その力はきっとこの先優位に働く。そこは安心したまえ」


 限界が迫ってきていた。


「もう力尽きる頃だろう。無理はよくない。さぁ、ゆっくり目を閉じて。君に出会えて嬉しかったよ。さようなら、そしてまた会おう」


 プツンと何かが切れた感じがした。

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