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8月は彼女の姿を見ることはなかった。

授業や補習の関係で時間が違うのかもしれない。

ただ彼女がいない、それだけで駅と電車はただの場所でしかなかった。


9月に入り、いろんなことが慌ただしくなる。

進路が具体化していく。

そういう現実は、自分の進路が決まっていくという自分主体の話のはずなのに、

どこか自分そっちのけのような、違和感。

そして、改めて彼女のことを何も知らないと思い知らされる。

SNSで掘れば、何か手がかりがわかるかもしれない、

どこかの片隅に写りこんでいてそこからとか考えなかったわけではないが、

それはなんだか冒涜のようで、そんな知り方はしたくないと思った。

でも、これだけ時間と空間を共有してるのに、僕たちにはなにもない。

当たり前の話とはいえ。


秋晴れの朝。

暑さは過ぎ去り、寒いというほどでもなく、心地よい涼しい風がホームをさらう10月。

いつもは薄い文庫なのにここのところ分厚いのを夢中で読んでいる。


プラットホームに鮮やかな小鳥が舞い降りる。

オレンジと黒のしっかりとしたコントラストのジョウビタキの雄。

たまに見かける鳥とはいえ、駅では稀な光景。

彼女は本を閉じ、鳥を目で追っている。

線路よりのきわまでちょんちょんと跳ね、そしてベンチの上へ、

それから木の枝へと飛び移る鮮やかな姿を、僕と彼女は今一緒に見てる。

ただし一定の距離を保ったまま。

これが11月のやや寒いある朝。



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