王立学園へ入ったけれども、虐められているの。
金髪碧眼で長い髪の小柄な少女ミルデリア・ユーリテクス伯爵令嬢は、王都での生活に期待で胸を膨らませていた。
地方の領地から、両親に頼み込んで、王立学園に入学させて貰ったのだ。
どんな学園生活が待っているのかしら。
放課後に王都へ買い物に出かけたいわ。
ああ、見る物聞く物全てが真新しい。
幸せ一杯で教室にいれば、そこへこの国の王太子ディアスが現れて、
「遠い所、良く来たね。ミルデリア。」
「ディアス様。お久しぶりですわ。」
「学園を案内してあげよう。」
「まぁ嬉しい。よろしくお願いします。」
何故か、教室中の女性達から睨まれているような気がしたのだが?
気のせいかしら…
ディアス様はそれはもう、黒髪碧眼の美男子でイイ男だからきっとモテるのね。
呑気に考えていたのだが。
お昼休みに、数人の令嬢達に絡まれた。
「ちょっと、貴方、ディアス王太子殿下の何?」
「ディアス王太子殿下は未だに婚約者もいないのよ。貴方が特別な婚約者だっていうの?」
「まぁ…許せないっ。許せないわ。」
ミルデリアは焦った。
「私は…その…」
だが、ディアス王太子殿下との関係は口外してはいけないと両親に言われているのだ。
仕方がないので、にっこりと微笑み、
「私とディアス王太子殿下はお友達ですわ。」
「「「お友達ですって?」」」
「はい。ただのお友達です。」
令嬢達は目くじらを立てる。
それからのミルデリアの扱いは酷かった。
特にユリアーネ・ハレスティ公爵令嬢や、マリー・カリステロ公爵令嬢、ミリアーナ・エストロッテ公爵令嬢のいじめが酷かった。
皆、令嬢達はこの三人の令嬢の命令を聞いているのだ。
他の令嬢達は無視するが、この3人は口汚く、ミルデリアの事を罵った。
「田舎の伯爵令嬢風情が、お友達ですって?」
「ディアス王太子殿下の?なんて図々しい。」
「教室が今日も田舎臭さいと思ったら、下賤ですこと。」
この三人の令嬢達は、ディアス王太子殿下に熱を上げている事で有名だった。
自分こそ王妃になると意気込んでいて、他の公爵家からの婚約の申し込みも断り、
虎視眈々とディアス王太子の事を狙っているのだ。
友達も出来ず、ミルデリアは一人でぽつんとご飯を食べるしかない。
何で?何でそんな酷い…酷いわ。
泣くミルデリアを見かねたのか、ディアス王太子が、
「私と共にお昼を食べよう。大事なミルデリアが泣くのを見てはいられない。」
「有難うございます。ディアス様。」
ディアス王太子と共にお昼ご飯を食べる。
令嬢達が遠巻きに睨んでいて…ミルデリアにとって針の筵だった。
「ディアス様。早く婚約者を決めた方が良いのではないですか?皆、私を睨んでいますわ。」
食堂でディアス王太子は昼ご飯を優雅にフォークとナイフを使って食べながら、
「そうだな。なかなか、いい令嬢がいなくて…皆、気位ばかり高くて困る。
王妃となるからには、もっと器が深く広くないと…」
「確かに。そうですわね。」
ディアス王太子に向かって、ミルデリアはかねてから頼みたかった事を思い切って言ってみた。
「お願いがあるのです。ディアス様。」
「何だ?ミルデリア。」
「私にふさわしい殿方を紹介して下さいませんか?」
「確かに、ミルデリアもいつの間にかこんなに大きくなって。昔、会った時は小さな少女だったのに。」
「いつまでも私は子供ではありませんわ。」
「良かろう。誰か見繕っておこう。」
「有難うございます。」
いやもう、ディアス王太子殿下には早く婚約者を決めて貰って、いや…その前に、自分が婚約者が決まればこんな針の筵状態から解放されるのだ。
せっかく、地方から出て来て、王立学園で楽しい学園生活を夢見ていたのに、
もうこうなったら、ディアス王太子に、自分と身分的にふさわしい殿方を早く紹介して貰うに越したことはない。
これから楽しい学園生活を送るんだと思っていたのだが…
いつまでたっても、殿方を紹介してくれる様子がない。
毎日お昼を一緒に食べる。しかし、ディアス王太子殿下からは見合いの話とかまるで出なかった。
たまりかねたミルデリアはある日、思い切ってディアス王太子に聞いてみる。
「あの、ディアス様。私にふさわしい殿方を紹介して下さる件、どうなっていますか?
毎日、毎日、令嬢達から睨まれて、私、とても辛いんですけど。」
すると驚くべき答えが返って来た。