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机上の私  作者: 師走次郎
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プロローグ

私は彼に呼び出された。

何だろうと思いつつ呼び出された場所に向かってみると、彼はすでにそこにいた。

彼は私に気がつくと、気まずそうに私から目をそらした。

私が軽く手を上げて挨拶すると、また私に視線を移して小さく手を振ってくれた。

「急に呼び出してごめん」

「全然大丈夫だよ。話があるって言ってたけどどうしたの?」

「あっ、あのさ、、、」

数秒間の沈黙が流れる。

私は息を飲んだ。

彼が沈黙を破り、重たい口を開いた。

「君のことが好きなんだ。」

「えっ、、、」



新藤涼夏は県立榊ヶ丘高校に通う高校一年生だ。

中学ではソフトテニス部に所属していたが、高校では写真部に入っている。

周囲の友達に恵まれ、成績も毎度クラス十位には入るほどである。

一見順風満帆に見える彼女であるが、中学三年生のもう少しで受験本番だとゆうタイミングで両親が離婚し、現在は父親とともに過ごしている。

父親の前では気丈に振る舞ってはいるものの、両親の離婚は涼夏にとってこれまでにない程の苦痛だった。

両親の離婚の原因は端的に言って母親の不倫である。

涼夏の父親は、この件について涼夏に打ち明けるか迷ったが、涼夏はすでに分別のつく年頃だろうと考え、打ち明けることにした。



私が初めて父親から母の不倫について聞いたとき、まず、私のお母さんに限ってそんなことするはずない、何かの間違いだと否定した。お母さんを疑ったお父さんを罵ったりもした。

それでも、お母さんの不倫が事実だと理解したとき、怒りよりも裏切られたショックで心がいっぱいだった。

どうしてお母さんは不倫なんてしたんだろう。

私とお父さんに何かいけないところがあったんだろうか。

いろんなことを考えれば考えるほどとめどなく涙が溢れ出してきた。

自室の隅でうずくまって嗚咽混じりの声にならない声で泣いていると、お父さんが何も言わず背中をさすってくれた。背中にお父さんの武骨だけど優しさのこもった手の温もりを感じた途端、さっきまで枯れるほど泣いたはずなのに限度がないのかと疑いたくなるぐらいまた溢れ出してきた。

ふとお父さんの方を見ると、お父さんは微笑んでいた。目に大粒の涙を浮かべながら。

そうだ。辛いのは私だけじゃない。

お父さんも本当は泣きたいぐらい辛いんだ。

なのに私に心配をかけないために、心の奥に複雑な感情を押し込んで気丈に振る舞ってるんだ。

お父さんがそこまでして私のことを心配してくれてるのにいつまでもメソメソしてる訳にはいかない。

私も強くならなければ。

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