謝罪と後悔
ベッド傍に腰掛けた美穂は何から話していいのかわからないのか、ずっと無言のまま俯いていた。
俺が取り乱している姿を見てしまったからか、気まずそうだ。
情けない姿を見せてしまった。
だけど、このままでは意識が無い間も付き添ってくれていたであろう美穂に失礼だろう。
目の前にいる美穂は、中学校のジャージ姿で座っている。
おそらく部屋着だろう。
電話の時にそのまま家から飛び出して来てくれたのか、いつもはサラサラで綺麗にセットしていた髪が今はボサボサになってしまっている。
こんなに心配をかけてしまったのだから、しっかりと謝罪をしないと。
ベッドから体を起こし、美穂と向かい合わせになる。
「美穂、急にこんな事になっちゃってごめん。」
頭も下げて、誠心誠意の謝罪をする。
「奏真が謝る事無いよ。」
「いや、謝らせてくれ。美穂を巻き込んだのは紛れもない俺だ。」
あの時、美穂からの着信を拒否していれば美穂はデート前に着拒された可哀想な女の子程度で済んだのだ。
血塗れの死体のある場所にわざわざ出向く事はなかったはずだ。
ちょっと待て……。
俺はあのまま気絶したわけで、警察にも救急にも連絡してないわけだ。
だけど俺は今病院に居る。
電話をしていた美穂も一緒に。
まさか‼︎
「美穂‼︎ お前まさかあの死体を見たのか?」
そう問いかけると一瞬美穂の顔が暗くなった。
嫌な予感がした。
「うん。
だけど奏真の声が聴こえなくなって直ぐに家を出て探したんだけど、その時警察に電話してたから、私が着いて直ぐに警察官が何人か来て。
そのまま一緒に救急車で病院に。」
やっぱり。
「美穂は大丈夫なのか? 俺みたいに診てもらわなくて。」
「それは大丈夫、私はもう診てもらったよ。
なんともないから直ぐに終わっちゃったし、そのまま奏真の病室に来ちゃったくらいだからね。」
美穂は笑顔で話してくれてるけど、あの死体を見てしまったのだから平常心ではいられないはずだ。
きっと無理しているんだろう。
美穂にそこまで気を遣わせてしまっている自分が本当に情けない。
「私はなんともないから心配しないで。
私よりも奏真の方こそ大丈夫? さっきも相当取り乱してたけど。
まさか犯人の顔でも見ちゃったとか?」
「見てないよ。
見てたら今頃死んでるだろ?」
「そっか、そうだよね。」
どう会話を展開しても重苦しさは消えない。
また気まずい空気が漂い始めた時、病室のドアをノックする音が響いた。
『すみません、失礼しても宜しいでしょうか?』
聴き慣れない男の声がそう尋ねてきた。
美穂と顔を見合わせる。
「きっと警察の人だよ。
私に話を聴きに来た人と同じ人だと思う。」
そりゃそうか。
気絶したとはいえ俺が第一発見なんだから来て当然だ。
「どうぞ。」
ドアの向こうに聞こえるように返事をすると、ドアが開き二人の男が入ってきた。
さっき医師と話していたスーツ姿の男達だ。