フィルム写真のような
とても静かだ。
全くの無音ではないものの、とても静かで落ち着く。
瞼を閉じていてもわかるくらい明るい空間にいる。
いったいここは何処なのだろうか。
重たく閉ざした瞼をゆっくりと開くと、ぼんやりと人影が見えてきた。
俺の目が開いた事に気がついたであろうその人影からは、聴き覚えのある声が俺の名前を呼んだ。
そうだ。美穂の声だ。
意識が消えていく中で最後まで俺を呼んでいたあの声だ。
同時に思い出してしまった。
意識が消える直前の出来事を。
「おぇっ‼︎」
「奏真‼︎ 大丈夫?」
美穂からの呼びかけに返答できない。
目眩と吐き気が押し寄せてきた。
パニックに陥った状態の俺には、自身を落ち着かせることはできなかった。
慣れた風景に突然現れた『死体』という非日常的な存在。
真っ赤に染まった自分のスマホと服。
どうすることもできないまま立ち尽くしていた自分自身。
全てが写真で撮ったかのようにはっきりと脳裏に焼き付いている。
目を閉じてもその光景は離れなかった。
段々と呼吸が荒くなり、喚き始めていた。
どれくらい経ったのだろうか。
少しずつ冷静さを取り戻し、落ち着いて呼吸ができるようになってきた。
相当取り乱していたのか、周囲にいる医師や看護師達の額には汗が滲んでいる。
病室の隅には美穂がこちらを心配そうに見つめて立っている。
俺が落ち着いたことを確認した医師達は、美穂に声をかけて病室を後にしていく。
病室のドアを開けた先には、見慣れないスーツ姿の男が2人医師と会話を始めたが、すぐにドアが閉まってしまった。
ドアの方を気にしていると、美穂がベッド傍に椅子を持って腰掛けた。