あの木の葉が全て落ちたら
「あの木の葉が全て落ちたら、私の命もそこまでなのね」
僕の隣に座る彼女は窓に映る景色を見ながら、そんな言葉を口にした。その小さな身体は震えている。映画なんかで良く登場する、その台詞。己の命の灯火が間もなく終わるという宿命を受け入れているかのようなその台詞は、ベタながら心打たれるものがある。そんな台詞を今のように現実で言われてしまえば、全身全霊で相手を励ましたくなるのだろうと思っていたーーこの時までは。
しかし実際にそうならなかったのは、何も僕が冷たい人間だからではないだろう。
「……それ、木の葉が見える所で言う台詞だよ」
少なくとも今みたいに、遭難した雪山で言うような台詞ではなかった。山小屋内の窓から見える景色は真っ白である。生きる気満々じゃん、めちゃくちゃ生きる気じゃん。だって落ちる木の葉がねーもん。
「やっべー、逆にテンション上がるワ…… 現実なんかにゼッテー負けねえから…… 推しに会うまで死んでも死にきれねえ…… マーくん待っててね……」
絶望的な状況にも関わらず、彼女の目は死んでいなかった。彼女は来月にあるという推しアイドルのイベントを燃料に、今を全力で生きている。それを見習い、密かに彼女を推している身の僕も、彼女の懸命な姿を燃料にこの場を耐え凌ぐことを誓った。




