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クロノティアーズ〜女神様のギャンブル〜  作者: 雁洲型 芳信
第一章  ぶらんど にゅう げいむ
2/2

ぶっちぎり☆レボリューション




 窓の外を流れる景色は、まるでファンタジー映画の様だ。見渡す限りの広大な畑では、見上げるほどに馬鹿デカイ蛞蝓みたいなドラゴンが農作業に勤しんでいる。サイズ感としては某モンスター狩りゲームの老○龍ぐらいあるんじゃなかろうか。


 私たち一家は今、魔力駆動列車に揺られて王都に向かっている。私のドレスを仕立てるために約10時間の短い旅路である。

 

 前世の記憶を思い出してから早6日、私は途方に暮れていた。一言で言うとめちゃくちゃだ、まるで意味がわからんぞ。この訳の分からない状況に色々考えすぎて知恵熱が出たらしく二日間寝込んだ。それ程に意味のわからない状況なのだ。


 乙女ゲーム『クロノティアーズ』。前世の私がプレイした数ある乙女ゲームの中でも、上位に入る程に好きだった作品。設定資料集や公式ガイドブックも買ったし、移植作が出たときはハードごと揃えた。


 それだけのめり込んだのだ設定もほぼ覚えている、覚えているからこそ熱が出るほどに混乱したのだ。まず記憶のトリガーになったレオノール王女だがゲームでは攻略キャラクターだし、そもそも男性である。王子様ぞ。


 次にゲームの舞台、私達の住むクロノス王国は面積が四倍になっている。作中で戦争する国も隣接していたはずの小国も軒並み吸収されてるんだぜ?どうなってるんだってばよ。


 国土の拡大に伴ってか、主人公であるラヴィーナの環境も変わっている。ゲームでは没落貴族(男爵)の貧乏人でアルバイトや冒険者ギルドで学費を稼ぎ魔法学園に通っていたが、今我が家は領地持ちの伯爵だし冒険者ギルドなぞ存在もしていない。冒険者の攻略キャラも居たのに、彼は今何をしているんだろうか。


 極め付けは天丼に魔力駆動列車だ。中世西洋風ファンタジーだぞ、ふざけてんのか。


 私は自分を疑ったよ。前世がなんだのゲームがなんだの、齢5歳にして頭がおかしくなっただけじゃないのかと。だって前世を思い出しても依然、私はラヴィーナ・フレイレだったのだ。陽子・葉山としての生涯を思い出しても私の自意識はラヴィーナで、陽子であった記憶が急に脳内に湧いてそれを前世だとすんなり受け入れはしたが私は陽子ではないと自覚している。だから自分を疑った、頭がおかしくなったんじゃないのかと。


 だがしかし王国の歴史を綴った本を見て、世界の方がおかしいのだとわかった。最初の1ページ、のっけからおもっくそ日本語で犯行声明が書かれていた。それがこれだ







 オッス、オラ転生者!

 せっかくファンタジー世界に転生したんだし、前世の科学知識を活用つつもファンタジーな魔法文明方向に伸ばして最高に浪漫溢れる世界にしようぜ!

 あっでも奴隷とか無しで、後々面倒臭そうだし。何より現代に近い倫理観とか人権意識とかないと、初手奴隷で詰む人も出て来そうじゃん?

 転生者の先鋒としてそんな人がいるのは忍びねぇし何より楽しくないだろ?と言う訳で、奴隷解放宣言!


 あと銃と火薬も出来れば無しで。いやコレは俺の浪漫の問題だから出来ればでいいんだけどさ、やっぱ魔法があるんだから魔法使うべきでしょ。


 そんでファンタジーお約束の冒険者ギルドなんだけど協議の結果この国では作らない事になりました。俺は別にあっても良いと思ってたんですよ?恨むなら他の皆んなを恨んでね。


 まぁこんなもんだな。あんま色々言うのも鬱陶しいだろうけど、何のガイドラインもなかったら世界が核の炎に包まれてモヒカンがヒャッハーしそうだからな。ある程度は決めとかんとね。

 別に無視しても良いよ、無視したら何かあるとかでも無いし。唯、俺は建国に携わってるからそう言う方向に行くようにしますよってだけね。まあ一番乗りの特権だな。


 それじゃそう言う事で、良い異世界ライフを。



             ビルマー・リング・ゲイツ







 なんなのコレ!?どういうことよ??助けて!誰かー!助けてくださーい!!


 もうどうしていいのかわんなくなった。クロノティアーズじゃねぇの?先鋒ってどういうこったい。私何も知らないんだけど?は??


 クソみてぇな最初のページ以降は王国語で書かれてはいたが王国千年の歴史の中でちょいちょい居るんだわ、転生者っぽいヤツらが。


 そいつらはビルマーの提案に乗って異世界ライフをエンジョイしたらしく、生活環境は現代地球に迫る勢いだ。中世風要素なんて街の中で馬車がまだ現役なぐらいである。なぜ今尚馬車が使われているのかというと、魔力エンジンの小型化に手こずっているかららしい。この列車も先頭の動力部は他の車両の倍近くある、そりゃあ街の中では走れまいて。


 ここ迄でも相当だが一番訳わかんないのが魔族だ。青い肌、頭に角、高い身体能力を持つ敵対種族。ゲームでは人族とバチバチに争い最終的に邪神を復活させて世界の破滅を目論む連中だったのだが……普通に共生してますね。家の使用人にもいるし貴族にもいる、人と結婚するのも何も珍しくないし子供も出来る。そもそも魔族なんて呼ばれてない、角人族と呼ばれている。ちなみに人族は魔人族と呼ばれてる、こっちに魔が付いちゃってるよ。


 なぜ魔人族なのかというと、角人族に比べて高い魔力があるからとの事。身体能力の角人族、魔力能力の魔人族って感じ。傾向ってだけで勿論個体差はあるけどね。ハーフの場合はどっちかに寄るらしい、比較的母体側に寄ることが多いそうだ。


 うん。クロノティアーズじゃなくない?邪神以外の要素ほとんど解決してんじゃん。逆に邪神さんってなんなの?


 なんでわざわざラヴィーナなんだ私は。邪神さん対策なん?つってもラヴィーナに特殊な設定なんかないぞ、邪神さんは人類と魔族の良識派が頑張って倒したんだ。ラヴィーナは確かに中心人物ではあったがそれだけだ。作中に邪神さん特攻の聖なるパワー的な物はなく、ただただ物理的にぶっ殺したのだ。


 色々謎な状況を調べるため家庭教師のモングリ先生を質問攻めにして判ったのは、この世界はゲームとほぼ別物だと言うことだった。一緒なのは大陸の形と国の名前くらいである。


 そんなこんなで途方に暮れた私は、とりあえず王都でのショッピングを楽しむ事にした。わーいショートケーキ楽しみだなぁ。




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