プロローグ:記憶は天丼の味
「レオノール…王女……ですか?」
何故か、お父様から発せられたレオノール王女という言葉の響に違和感を感じる。何かが間違っている気がしてならない。ボタンを掛け違えている様な、靴下を裏返しで履いている様な感覚。
「そうだよレオノール王女殿下の御披露目パーティーだ、ラヴィもウーンとおめかししないとね。フフフ、週末にガルディエに行くよ。トップデザイナーを抑えたんだ!とびっきり素敵な可愛いドレスを作ってもらおうね」
「王都には一週間滞在しますから、ガルディエの他にも色々ショッピングしましょうね。そうそう新しいケーキ屋さんが出来たんですって、ラヴィちゃんの大好きな苺のショートケーキがとっても美味しいらしいの。絶対に食べにいきましょう」
お父様とお母様が楽しそうに微笑みながら食事を続けているが、先程から湧き上がる違和感に私の箸は止まっていた。そう箸だ。今まで気にした事もなかったがこれにも違和感がある。それだけじゃない、これまで見てきたあらゆる物に対してもだ。何かがおかしいのだ、何なんだこの奇妙な感覚は。
考えれば考える程に私と世界がズレて行く。何もかも知っているはずなのに何もかも知らない、見たことがないはずなのに見たことがある。私は私であるはずなのに私は私ではない。レオノール王女から始まった違和感に私と世界が軋んで行く。だんだん頭が痛くなってきた、ダメだ早く違和感の正体を突き止めないと気を失いそうだ。
一体レオノール王女の何がおかしい?私は何に引っかかっているんだ?おかしな所など何もないはずだ。そのはずなのに私の中のナニかが叫んでいるのだ、コレは違うと間違っていると。激しさを増す頭痛と共に叫び声が大きくなっていく。
体の奥底から心の奥底から、魂の奥底から声が聞こえる。世界に対して、レオノール王女に対して。私の中の私が大声で叫ぶ声が聞こえる。
『王女じゃなくて王子やろがい!!』
その声が聞こえた瞬間。
全てを思い出して。
全ての違和感の正体に気付き。
その全てに混乱した。
「うん?どうしたんだいラヴィ。もうお腹いっぱいなのかい」
「あっ、いえ。ちょっと考え事を……」
心配そうに私を見る父に尋ねられて少し落ち着きを取り戻し、食事中であることを思い出した私は箸をのばす。
頭の中に噴水のごとく噴き出す"前世"の記憶は。
天丼の味がした。
書き溜めなんてない、ストーリーも考えてない。深夜のテンション、一週間で更新出来れば大金星。等と予防線を張っていくぅ!!チッス!よろしくしゃっす!