3.王盛組調査(Ⅰ)
事件から1週間。
俺はまだビジネスホテルに泊まっている。
誤解の無いように言っておくが、何か嫌疑がかかっているだとか、軟禁されているといったことではない。どうやら事後調査がめちゃくちゃに難航しているようで、嫌じゃなければビジネスホテルにいる方がコンタクトを取りやすいので協力してほしい、いつでも連絡が取れるようにしてほしいとの要望があったため、仕方なく協力しているのだ。
決して通勤するのに駅から徒歩2分であるだとか、ビジネスホテルにいる間は1泊2食を約束してくれているからではない!あくまで善意だ!
まぁなにが難航しているかというと、どうやら銃弾に問題があるらしい。
詳しくはわからないが、弾丸というのはお尻についてる火薬を破裂させ、そのパワーで鉛を飛ばしているそうなのだが、間違いなく火薬は炸裂しているのに、問題の先端部分が全くと言って変形していないらしい。弾丸なんていうのは葉っぱ一枚にぶつかっただけで変形の後が残るものらしいので、飛んできた弾丸を空中で箸かなにかで摘まんで捕まえたようなことをしなければそういった現象は不可能らしい。
あとは銃創だ螺旋痕だとなんか小難しいことを言っていたが俺にはよくわからん。
結局快適なビジネスホテルライフも9日間で終わりを迎え、今後は電話だけ出てくれればいいということで警察とのやり取りを終えた。
さて、意外と時間がかかってしまったが、そろそろヤクザ屋さんにお話を聞きに行くこととしよう。
しかし、ここで致命的なミスが発覚。
ヤクザAから王盛組からの鉄砲玉であることは聞いたが、肝心の住所を聞いていなかった。忘れていたといよりかは、今の時代名前さえわかればGoogle先生でなんとかなると思っていたので。
しかし、どうでもいいゴシップ記事が多く、さらに王盛組でもさらにそこから枝葉が分かれているので、結局よくわからなかった。
うん。とりあえず街のチンピラ屋さんに聞いてみよう。
新宿に移動し、明らかにそれ風の男性グループに丁寧に声をかけてみた。
「突然申し訳ありません。お尋ねしたいことがあるんですが今お時間よろしいですか?」
「あっ?お前誰に声かけとんじゃ!殺すど!」
こんなに丁寧に聞いたのに。まぁいいや。
「すいませんお忙しいようなので他をあたります。」
「ちょっと待て。迷惑料おいてけや!お前が話しかけたことによってすげー迷惑しとんのじゃ!」
リーダーは意外にもやせ細ったこの男らしい。まぁ確かに細身の輩が一番やばいっていうもんな。
「いやー、ちょっと無理っすね。質問に答えてくれたらコーヒーくらいはおごりますけど。」
「よしわかった。ナメてんるんだよな。俺らのこと。ちょっとそこのビル行こうか。うちで経営してるテナント入ってるからそこでゆっくり話聞こうや。」
おっ、丁寧な交渉の甲斐あってか話を聞いてくれるそうだ。さっきまであんなにキレてたのに今はなんかニヤニヤしてるぞ。やっぱり誠意って大事だわ。