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小魚

作者: 三毛

 しらすとねぎを刻んだものが納豆に入れられて置いてあった。私はこの手の食べ物が好きなので、白米にこれをかけた。

 ところがどうだろう。食べ始めて四口目で、小魚の目が目に入った。頭部側からも見える、黒々としたふたつの点。

 ぞわ、とした。頭皮の一部だけが泡立つ感覚。そのとたん、ああ、我々はなんて残酷なことをしているんだ、という気持ちになった。これを感謝して食べる以外の選択肢があるだろうか。たとえば隣に親しい者がいたとする。さかな、あげるよと言ってその茶碗に小魚を入れたとする。そいつがああ、どうもとかなんとか言ってそれを食べたとする。これなら問題ないかもしれない。小魚は食されたのだから。でも今私は一人だ。

 わかるでしょう、そこのお方。私はこれと目があったことで、おっかなくて口に入れられずにいるのだ。かと言って、ていねいにティッシュにくるんでくずかごへ入れるときに、ありがとうございますと言えばいいかというとそんなことはまったくない。けれど想像してしまったのだ。このしらすが私の中におさまった後、この体の内側をじっと見ているところを。


 そんなくだりでいつまでも箸が進まないので、こんな文章を寄せるなどしているのである。

なんでもないと思っていたことに、突然ショックな気付きがもたらされることで感謝できたことが、この短いような長いような人生の中で何度かあった気がします。小魚の他にも。

ごはんはありがたくいただきましょう。

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