第9話 仲間と姉妹
PV増えててビビりながらも喜んでます。
私はリンクの背中の上で目を覚ました。
だけどもうしばらくはここにいよう。
その温もりは私の傷ついた心を癒してくれる。
テントに戻るとリンクは優しい声で私に大丈夫か?と確認した後、今回のことについての説明を求めてきた。
この先も彼らとは仲良くしたいので全てを話すことにする。
私の過去のこと。
今回の犯人のこと。
そして……裏切りのこと。
許してください。という言葉で締めくくった私はリンクとノロアの反応を窺う。
すると、リンクもノロアもあまりにも軽く
「いいよ!」
「いいよ……」
と返してきた。
「どうして!?私はあなた達を裏切ったのよ!?」
意識せずに言葉が飛び出た。
彼らは裏切って命まで奪おうとした私をこうも簡単に許した。
あるいは罵倒のひとつでも浴びせてくれればいくらか気が楽になったかもしれない。
私はこんな善人たちを裏切った罪悪感でいっぱいだった。
「確かに俺は殺されかけたし場合によっては死んでいただろう。でも、フェルの事情も知ったし、何より仲間だからな。俺は仲間を裏切ることをしたくはない」
彼は善意のみでそういっているのだろうが、裏切ることをしたくないという言葉は裏切った私に重くのしかかった。
彼らの優しさと罪悪感に板挟みにされた私の瞳から涙が溢れ出す。
「ごめんなさいっ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ……」
私は嗚咽をこぼしながら泣く。
謝り、泣くことしかできない。
ふと、顔に暖かい感覚を覚えた。
涙と鼻水にまみれた私の顔は優しい暖かさに包まれた。
私はそのまま長い間泣き続けた。
その間、リンクはずっと私を包んで撫でてくれていた。
▼
フェルラータの妹であるサイギル王国第二王女、セラリア・サイギルは誰もかもが消え去った森の中で呆然としていた。
当然だ。用意した腕利きの暗殺者や忍者たちが全員、たったひとりに倒されたのだから。
彼女は完全にリンクの実力を見誤っていた。
いくら模擬戦で姉に勝ったといってもギリギリか偶然だと思っていた。実際、フェルもそう思い、セラリアにはそう報告していた。そしてその程度なら海獣や暗殺者、忍者の敵ではないと考えていた。
しかし実際にはそうではなかった。
驚くことにフェルとの模擬戦では全力を出していなかったのだ。
もうじき忍者のひとりから私の居場所を聞き出してやってくるだろう、セラリアは考える。
忍者もプロだ。並大抵のことで依頼主のことをバラしたりはしないだろう。
しかし、忠誠を誓った主というわけでもない。
命が危険に晒されれば迷わず依頼主のこともバラすだろう。
その前に王城まで逃げる。
そうすれば彼ももう追ってこない、その可能性にかけて強化魔法を使おうとしたとき。セラリアの前にリンクが現れた。
セラリアにもフェルラータにも使えない超高難易度魔法、空間魔法を容易く操る魔族。
セラリアが命を諦めかけたとき。
「どうしてお前はフェルを殺そうとしたんだ!」
殺そうとはせず、ただただリンクは激怒した。
「確かにフェルはお前たちよりも才能に恵まれていたかもしれない。周りに認められてたかもしれない。それに嫉妬するのも仕方がない。けど!お前らだってフェルほどでなくても恵まれてたんだろ!?毎日努力だってしてたんだろ!?だったらそのまま頑張ってれば良かったじゃねえか!」
「だって私が見てたのは姉上だけだもん!あんなの見てたら誰だって絶望するよ!」
「それがフェルを殺す理由になるのか?お前がフェルだけを見てたならどうしてフェルも苦しんでたということに気付かなかったんだ?」
言われてセラリアははっとする。
姉上が苦しんでた?そんなことあるわけがない。
「そんなわけない!姉上は苦しんでなかった!才能があるのに苦しむわけがない!」
「本当にそうなのか?フェルがお前を見るとき、どんな顔をしてた?」
「……」
思い出せない。どんな顔をしていたのか。
「フェルはただお前らと仲良くしたかったんだよ!仲良い姉妹になりたかったんだよ!」
思い出した。姉上は私たちを見るとき苦しそうな顔で私たちのことを見ていた。
セラリアも根は善人だ。
いくつも思う節のあったセラリアは涙を浮かべる。
「ごめんなさい……姉上っ……」
リンクは大したことを言ってない。
リンク自身もこれで説得ができたことに驚いていた。
それほどセラリアはよい人だったということだろう。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
―――良いわよ。
セラリアは姉の声が聞こえた気がして顔を上げた。
「良いわよ」
今度ははっきりと聞こえた。
セラリアとフェルラータは一目散に互いの方向に駆けていき、抱きつく。
「姉上っ、姉上ぇぇぇええええええ!!!」
「セラリアっ!セラリアっ!!ううっ……」
「ごめん姉上っ、私姉上のこと、見てたと思って見えてなかった……」
「良いのよ、良いの……これからは仲良くしてくれるわよね?」
「うんっ、うんっ!」
ふたりはお互いを抱きしめ合いながら泣き続けた。
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