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第7話 狙われるフェル

 合宿二日目、俺たちは飯を食べるとすぐに森へと向かった。

 この森は固有生物や美しい景色など自然に恵まれたところだ。

 魔界は荒れていて自然などなかったので結構楽しみだったりする。


 しばらく森を歩きだんだんと木が増えてきたなぁなどと思っていたとき、フェルがいきなりおかしな提案をしてきた。


「ねぇ、こっち行ってみない?」


 フェルが一本の脇道を指差した。

 フェルが提案した道は本来通る予定の道ではない。

 しかも、事前に地図で調べたときにはこちらにはなにもなかった。


「どうしてだ?こっちにはなにもないぞ?」

「……行きたいからよ」


 本当にどうしてしまったのだろう。

 フェルは一瞬言葉に詰まった後、全く筋の通ってない理由を述べた。


「実はさっきからヤバい気配がしてるんだ、やめた方がいいと思う」


 俺がそう言うとフェルは驚いた顔をしたがすぐに元に戻る。


「とにかく行きたいのよ、お願い」


 フェルの懇願に俺は困る。

 間違いなく行かないのが正解だが、フェルがどうしても行きたいというのなら行っても良い気がする。


「フェルが……行きたいなら……行ってもいいと思う……」


 ノロアがそう言ったことで俺の心は決まった。

 それにしてもノロアはここ数日でかなり話すのうまくなったなあ……。


 ▼


 脇道にそれて30分ほど経ちさらに森が深くなってきた頃、俺は近くの木に10ほどの強い気配を感じた。

 まだ何もしてきていないので警戒しながら無視して進もうと思ったとき、そいつらの全員が多くの魔力を操った気配がした。

 俺は瞬時に3人全員を前方向から守れるように結界魔法を使う。

 敵の使った俺も見たことのない魔法はまっすぐにフェルの方に向かい、俺の結界魔法を破ることなく消えた。


「おい、2人とも大丈夫か……ってどうした!?」


 無事を確認しようとしたらフェルが何かを呟きながら震えていた。


「どうして……どうしてよ……どうして私を狙ったの……標的はリンクじゃないの?」


 標的?俺?何のことだ?


 思考の末、ひとつの結論にたどり着く。

 つまりフェルは今回の襲撃のことを知った上で俺を狙うと思っていた?

 でも自分が狙われたから驚いているのか?

 そういうことなら今言ったこともこっちの道に行きたいと言ったことも俺とチームを組んだことも納得できる。


 つまり、もともとフェルを殺すためにフェルに接触し、俺を殺すと言って協力を仰いだということか。

 回りくどい気がするがそれ以外に思い浮かばない。


 そんなことを考えたとき、敵逹が一気に切りかかってきた。

 俺は結界魔法の威力を弱めずに敵の斬撃を全て受けると、ノロアに合図して一緒に森の奥を目指して走り出す。フェルは俺が抱き抱えている。


 走り出して間もなく、俺は足元に違和感を覚えた。

 そしてそのまま土を踏み抜いて穴に落ちる。落とし穴が仕掛けてあるとは驚きだ。


「リンク!」


 普段の弱々しい話し方からは考えられないほど強い声でノロアが俺を呼んだ。


 そして、穴に落ちている途中で魔力の動きを感じた。

 上から無数の魔法が放たれる。

 結界魔法は消費魔力が多いので、俺は土魔法で盾を作り出す。

 俺は土魔法で敵の魔法を押し返しながら風魔法を同時に使用して穴の外へ脱出する。


 外に出て最初に見えたのは木の上に立つ、体中に黒い布を巻いた怪しい集団だった。

 俺はそれを本で見たことがあった。


 忍者。

 隠密行動、立体移動を得意とし、手裏剣やまきびしを武器として使用する。

 恐らく俺にもわからなかった魔法は忍術と呼ばれるものだろう。

 忍術にも魔力は使い、忍者でも魔法は使える。

 忍者が情報を広めようとしないために忍者にしか使えない魔法を忍術と呼んでいるだけである。


 俺は敵が次の攻撃を仕掛けてくる前に、火の範囲魔法で周りの木を焼き尽くす。

 恐らく落とし穴はひとつではない。木がなくなれば敵も戦い辛くなるだろう。立体移動が得意な忍者の強みもなくせて一石二鳥だ。

 しかし敵もそんなにやわではない。

 水を操る忍術で火を消す。


 そして、俺が忍術を事前に関知していることに気付いたのか死角から手裏剣を投げてくる。

 それに直前に気付いた俺は何とかかわすが、手裏剣は予想以上に早く腕を浅く斬る。


 忍者たちが俺を囲むように10の手裏剣を投げる。

 手裏剣がこちらに到達するまでに動けるどの位置にいても手裏剣が当たると判断した俺は落とし穴を脱出するときに使った土の盾で俺に当たりそうな手裏剣を全て弾く。


 そして、そのままの勢いで忍者のひとりに盾を投げる。ものすごい勢いで回転しながら飛んでいった盾は避けようと跳んだ忍者の脚に当たり膝から下を切断した。

 この盾、実は刃物のように尖っているのだ。


 脚がなくなり動きの鈍くなった忍者を灰にすると、敵の足場を減らすためにそのまま木も燃やしてしまう。

 ひとりを残して同じように燃やし、残りのひとりは下半身を氷魔法で凍らせて動けないようにする。


 俺はそのまま縄で縛り付け、縄の材質を変化させる。


 フェルをおんぶし、忍者のひとりを空間魔法でつくった異空間の中に放り込むと、俺は呆然としていたノロアと朝いたテントに戻った。

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俺の脂肪が最強だった件 ~脂肪魔法とエネルギー操作で《勇者》に復讐する《魔王》になる~ 元デブが脂肪を、その応用でエネルギーをも自在に操り、元親友の《勇者》や元カノの《聖女》に復讐をする《魔王》になる物語です。是非こちらも読んでください。
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