第13話 冒険者ギルドと初依頼
俺とセラリアは冒険者ギルドにいる。
何故かというと冒険者登録して依頼を受けるためだ。
「ではまずここに必要事項をお書きください」
書類に個人情報を書かされる。
セラリアのほうをチラ見すると彼女は偽名などを使っていなかったので俺もそうすることにする。
名前、住所、出身地、種族などを書き、最後に容姿を写影魔法で撮影すると、それを書類に貼り付ける。
国の第二王女と魔族が登録したから驚くかと思ったが、受付嬢の表情に変化はなかった。
「請けた依頼の依頼票と部位などの証拠品を持ってくると依頼達成となります。依頼前には特に手続きは必要ないです。最初は一律D級冒険者からスタートで、達成依頼の難易度、依頼達成の回数によってランクが上昇します。ランクによって受けれる依頼などは変化しませんが、けがなどは自己責任でお願いします」
簡単に説明を終えるとDランク冒険者の証、Dランク冒険証を受け取る。
こうして特に何事もなく俺たちはDランク冒険者となった。
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取りあえず簡単すぎてもつまらないので推奨ランクB以上の依頼を受けた。
ビッグドッグの討伐。名前はダサいけど群れることによって凄まじい戦闘能力を手に入れる。
まあ俺とセラリアなら余裕だろう。
索敵魔法で敵を探して見つける前に範囲魔法で仕留めれば前衛いなくても問題ないし強化魔法があれば近接でも十分に戦える。
「お、早速索敵に引っかかった。あっちだ」
俺が指を指す方にセラリアが範囲の火魔法を打ち込む。
俺がやらないのには、2つの理由がある。
1つは魔法の才能があるということをセラリアに自覚させるためだ。ビッグドッグをまとめて処理させることでセラリアは自分がBランク以上の強さを持っているということを自覚するだろう。
もう1つは俺が魔法の威力を調整中だからだ。あまり強いを使うと、折角覚え始めてた手加減の仕方を忘れてしまう。さらにセラリアより強い魔法を俺が使ってしまうと自信をなくしてしまうだろう。
セラリアが魔法を打ち込んだ方向にしばらく歩くと、そこには焼け焦げたビッグドッグの死体が大量にあった。
俺達は分担してそいつらを解体していく。
解体した体は証拠になる耳と高く売れる毛皮を除いて全て捨ててゆく。
焼け焦げているのは体だけで、耐熱性耐火性に優れる毛皮は無事だ。因みに毛皮が高く売れるのは炎に対する適性を高められるからだ。
それを内側だけ焼き殺すセラリアはやはり凄まじい。
これを空間魔法でつくった異空間に放り込む。
この作業を繰り返していると空が暗くなり始めた。
遠くまで来てしまったので、2人で強化魔法を使って走って帰ろうか。
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俺達は冒険者ギルドにいた。
目の前には固まった受付嬢がいる。
何故だかさっき討伐証拠の耳を受付に出すと悲鳴を上げたきり黙ってしまったのだ。
「あの……どうかしたんですか?」
恐る恐る尋ねてみる。
「いっ?いえ……数があまりにも多かったので……」
「え?そうですか?たったの1000匹ほどじゃないですか。群れてるからこのくらい普通でしょ?」
「いえ……皆さん平均1日100匹程度、多くても倍程度です」
「「え……」」
俺とセラリアのかすれた声が重なる。
まさかそんなに少ないなんて……。
「ところでビッグドッグは毛皮が買い取り対象になっていますがどうなさいますか?」
「ああ、じゃあお願いします」
ドサドサドサッ……。
俺が下向きに空間魔法を展開すると入ってた毛皮が出てくる。
……ちょっと取りすぎたかな。カウンターから既にこぼれ落ちてるんだけど……。
「何ですかこの量!しかも質も素晴らしいですし!」
なにやら受付嬢が興奮している。
尋ねると解説してくれる。
「普通ビッグドッグの毛には血が付着するんですよ!物理攻撃は勿論、基本魔法のうちの水、土、風はほとんどの場合殺すときに出血させますし火は毛皮があって使えない、闇と光は使い手が極端に少ないですから。つまりビッグドッグの毛皮をこんなに綺麗に保って処理できるのは余程高威力な火魔法を使うか、希少な光、闇、基本以外の魔法を使うしかないんです!」
早口に解説してくれる。それほど興奮しているのだろう。
「これなら合計1000000Sで買い取りできます」
物凄い額だ。
大体平均的な冒険者が毎日欠かさず依頼をこなして一月で得られる額がこのくらいだろう。
あと、この国の金の単位は国名であり王族の名字であるサイギルだ。
「その実力があればAランクまで一気に昇格させても問題ないと思いますがどうされますか?」
ん?こんな簡単に上がるモノなの?
「セラリア、どうする?」
「上がれるなら上げてもらいましょう!」
「じゃあお願いします」
俺達は半日でDランクからAランクに上がるという前代未聞の偉業を成し遂げたのだった。
あ、ちなみにAの上がSでそれが最高位な。