第12話 セラリアとデート
今日は10日に1日だけある休日だ。
通常の学校では3日あることを考えると少ないが、この学校は普通の学校とは違い優秀な人材を育てることを目的としているのでこれくらいでいいのだ。
ちなみに国直属の部隊に入るくらい優秀な人たちが毎年何人も出て行く。
合宿で疲れていた俺はその休みを一日中家でダラダラ過ごすことにした。
とりあえず朝食をとり、その後ソファーに横になってフィクション小説を読む。
この小説は最近流行りの「異世界召還」とかいうくくりに入るもので、科学という不思議な力の発展した世界に行ってしまう物語だ。
みんなが科学とやらを使ってる中、ひとりだけ魔法を使って活躍するのはなかなかに快感。
しばし小説に没頭していると俺の携帯通信機―――通信魔法を板に施して好きなときに通信ができる―――が鳴った。相手はセラリアだ。
「お兄さん、今から王城に来てくださいませんか?」
「お兄さんて……まあ行けるが……」
「じゃあ来てください!」
あ、切れた。
……それにしてもお兄さんてなんだ?
▼
俺は王城の前に立ち尽くしていた。
―――そう、美しかったのだ……。
学校と比べてもこっちの方が大きく、美しい。
俺はまた思考停止に陥った。
「おい貴様、何をしている?」
門番のそんな声で思考停止から立ち直る。
「セラリアに呼ばれて……」
「王女様を呼び捨てとは……まあいい、呼んでくるからここで待っていろ」
門番は門の中に去っていった。
門番ひとりしかいなかったのに城の中に入っていってしまって良いのだろうか。
しばらく暇つぶしをしていると、門の中からセラリアが出てきた。
いつもは制服なのだが、私服姿のセラリアはとても可愛かった。制服も良いが、美しい金髪碧眼には高貴なドレスが似合っている。
「お兄さん!」
セラリアが呼んでくる。
セラリアと一緒に戻ってきた門番の視線が痛い。
セラリアと合流した俺はまず最初にさっきからずっと気になっていた疑問をぶつける。
「……どうしてお兄さんなんだ?」
「尊敬する年上の男性を呼ぶときはお兄さんに決まってるじゃないですか」
「尊敬されるようなことをした覚えがないのだが……」
5分ほどそんな感じの話で盛り上がっていたが、いよいよ本題を聞くことにした。
「今日はどうして呼んだんだ?」
「町の案内をするためです。こちらにきて2ヶ月くらい経つのにまだ近所の食べ物屋さんしか行ってないらしいじゃないですか」
……どこの情報か知らないが俺のことを知られているというのはぞっとする。
「というわけで町でデートしましょう!」
―――こうして唐突に俺とセラリアのデートは始まったのだった。
▼
俺たちは近くの商店街に行った。
近くといっても俺は行ったことないのだが。
セラリアが安い店や品揃えまで教えてくれたお陰で次回からは有意義な買い物ができそうだ。
そして、いろいろな店を回っていたら昼時になったので2人で飲食店に入る。
落ち着いた雰囲気の店だが、客が騒がしかった。
その騒がしい中のひとりがこっちを見たと思うとセラリアに声をかけてくる。
「俺らと一緒に食わねえ?」
下品な顔、下品な格好、下品な口調でセラリアをナンパしてくる。
「すいません、私お兄さんと食べますので」
そう言って俺の腕に抱きついてきた。
まだ14歳で発育が終わっていないが、確かにそこにある感触に俺の理性が喰われていく。
「おい、てめえら調子乗ってんじゃねえぞ?」
俺の存在とセラリアの言葉が頭にきたのか男は殴りかかってくる。
面倒くさいので俺は一撃、死なない程度の攻撃を加えると店の外にそいつを放り出す。
それにしてもあいつ頭悪かったな。
▼
そのまま俺たちは食事をしていた。
「このスープ美味しいです」
「この肉もなかなか」
呑気な会話をしている俺を周りは怯えた目で見てくる。
露骨にガン見するとか失礼だな……。
そんな目線を無視して俺たちは食事を全て平らげ、会話に入る。
「お兄さん、この後どこ行きます?」
「そうだな、大体町は案内してもらったし……あ、そういえば人間の街には冒険者ギルドってのがあるって聞いたぞ?」
「冒険者ギルドは冒険者登録していろいろな依頼を受けることができるところです。行ってみますか?」
「おもしろそうだしその依頼ってのを受けてみるか?」
「そうですね、そうしましょうか。お兄さんと私だったら大概の依頼は余裕な気がしますが」
こうして俺とセラリアは冒険者ギルドへ行くことになったのだ。