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オークション工房  作者: とびうお
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第5話「分割入札式オークション」

「そうだ、ここのオークションの方法を、俺が見た範囲で説明しておくよ」


山田が入店するよりだいぶ前から入店していたらしい竹下が、本命のオークションに向けてオークション方法の説明を買って出た。


「お、頼む」


「まずレーンを見てくれ。何がある?」

「何って……皿、かな?」


以前まで寿司が回っていたであろうレーンには、何も乗っていない色とりどりの皿がひたすら流れている。

皿だけが流れている様子は、かなり異様な光景だ。


「そう、基本は皿だけだ。しかし、他にもある」

「え?……ああ、あれか?」


よく探してみると、台紙が乗っている皿がひとつだけある。

回転寿司で寿司のネタを宣伝するときに使うアレだ。


ただ、台紙に描かれているものは寿司のネタではなく『人形』の写真だった。

その写真の説明として『ぜんまい式からくり人形』と書かれているのが見える。


「……ぜんまい式からくり人形?もしかして、あれが商品なのか?」

「ああ、そうらしい」


竹下はオーダー端末を見せてくる。

回転寿司屋でよくある、寿司とか味噌汁を注文するのに使うオーダー端末だ。

竹下がずっと手に持っていから、山田はてっきり竹下が何か注文するのかと思っていたが、どうやら違うらしい。


オーダー端末を見ると、確かに今行われているオークションの商品が表示されている。

ーーーーーーー

商品名 ぜんまい式からくり人形

現在 2周目


金皿 / 5,000円

銀皿 / 3,000円

白皿 / 1,000円

赤皿 / 500円

青皿 / 100円


現在落札価格 22,000円

この卓の金額 0円

ーーーーーーー

「分割入札というらしい」

「分割入札?」


オークション工房に行くにあたって、オークションについて少し調べてきたが、そんな言葉は初めて聞いた。竹下曰く、この店独自の言葉だそうだ。


「出品者が競売品の希望販売価格を提示すると、その額を分割して各皿の金額が設定される。競売者は欲しい商品があれば皿を取る。とった皿の合計金額が最も高かった競売者が、その金額で商品を落札する」


つまり、レーンに流れている皿を使って、オークションしているということか。

あの色とりどりの皿をとって、競売価格をうまく調整する。

そういうことなら、先ほどからレーン上を流れてくる寿司の乗っていない皿にも納得がいく。


「なるほど、そういう仕組みか。……この、2周目ってのは?」

「さっきの台紙があるだろ?あれが俺たちの卓を何回通過したかを示してる」


「台紙が3周した後は、皿を取っても値段の吊り上げはできなくなり、全ての卓が3周するとオークションが終わるみたいだ」


話していると、例の台紙が近づいてくる。

なんの変哲も無い、回転寿司屋でよく見かけるネタ紹介の台紙だ。


変わってるところといえば、およそ回転寿司屋で見かけることのないであろう商品が描かれているところだろうか。


「台紙がオークション終了時間の目安ってわけか」

「ああ。そしてもう一つ、このオークションの難しいところがある。オーダー端末を見てくれ」


渡されたオーダー端末を山田は見る。

ーーーーーーー

商品名 ぜんまい式からくり人形

現在 3周目


金皿 5,000円

銀皿 3,000円

白皿 1,000円

赤皿 500円

青皿 100円


現在落札価格 ???円

この卓の金額 0円

ーーーーーーー


竹下の言った通り、台紙が通過したため『現在 3周目』になっている。

だが、それ以上に変化した場所がある。


「これは、落札価格が……」

「そうだ。どうやら、3周目になると現在の落札価格が見えなくなるらしい」


「はじめのうちは落札価格が見えるが、3周目になって見えなくなる、か。このルールだと最後になって値段が釣り上がったりしそうだな」

「まさにそんな感じだ」


竹下がオーダー端末の画面右上にある「履歴」ボタンを押すと、画面が切り替わり、商品の情報が一覧で表示される。


「今日のオークションで落札された競売品だ。お前が来るまでの間に、3回ほどオークションの様子を見ていたが、3回のうち2回は、3周目で落札価格が跳ね上がった。このオークションの肝はここだろうな」

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