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第4話「幕間」
「それで、オークションはいつから始まるんだ?」
山田は、取り出した参考書を鞄にしまう竹下に聞いた。
「チラシによると、15時からだそうだ」
山田は机に置いてあったチラシを見る。
赤い蛍光ペンで何重にも丸された’となりまちブルース’。
その商品の写真の右下に「15:00~」と確かに書かれている。
「15時か、まだもう少し先だな」
「そうだなあ」
そういいながら、竹下は茶を注ぐ。
あいかわらず、茶葉の粉末をドバドバドバドバ……。
お湯を注ぐと、大量の茶葉の粉末が液面に浮かび上がる。
「ほい」
それを竹下は山田に渡す。
「え?何これ」
「お茶だけど」
「いやそれはわかるけど」
「おまえの分だよ」
「いや、俺の分あるけど」
山田の手元にある湯呑の中には、先ほど竹下が淹れてくれた激濃のお茶が半分以上残っている。
「おいおい、こういうのは少し冷ます時間も考えて、あらかじめ入れておくものだろ?」
「竹下ゴメン。俺そんなルール初めて聞いたよ」
「ルールじゃねぇよ」
じゃあなんだよ。
「常識だよ」
「竹下ゴメン。俺そんな常識初めて聞いたよ」