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転生魔王と騎士  作者: 如月文
第一部
6/112

闇の騎士の忠誠

目が覚めたら辺りは明るくなっていた。そして再び膝枕。なぜだアレク、あのまま肩を貸してくれるだけでよかったのに。そう思うと同時に思い出す。


(うっわぁ、初対面の男の人に抱きしめられるとか、しかも泣き疲れてそのまま寝ちゃうとか・・・!)


静かに心の中で悶絶していると、どうやらアレクは私が起きたことに気付いたようだ。


「目が覚めたのか?」

「・・・はい、起きました。」


 今回は若干耐性があるためゆっくりと起き上がる。まあ、好き好んで頭突きをかましたいわけではない。


「それで、これからどうしたらいいの?」

「お前はどうしたい?」


 どうしよう、逆に聞き返されてしまった。


「じゃあ、元の世界に戻りたい。」


 駄目もとで言ってみる。


「そうか、なら協力しよう。」


 え?今この人なんて言った?


「・・・え?戻れるの?」

「協力すると言ったんだ。戻れるとは言っていない。そもそも俺の力では不可能だ。」


 ですよねー。じゃあやっぱり戻れないのではいか。肩をがっくりと落す。


「だが陛下の力なら可能だろう。」


 続く言葉にガバリと身を起こす。あれ?でもその陛下って死んでいるんじゃ・・・。


「魔王って死んだんじゃないの?あっそうか、新しい魔王が即位していて、その人の力を借りるってこと?」

「いや、新しい魔王は即位していない。」


 なら無理じゃないか。期待させてから落とすなんてなんてひどい人、いや魔族なんだ!だが、彼の話はそこで終わらなかった。


「陛下はチキュウを知っていた。かつてチキュウについて話していたことがある。『チキュウは青く美しい世界だ。生命力に満ち溢れ、カガクというものが発達している』と。まるで見てきたかのように話していた。つまり彼は、チキュウに渡ったことがある。もしくは、見たことがあるということだ。もしかしたらその方法か手がかりを残しているかもしれない。」


 彼の説明に希望が芽生える。だがそれとともに不安も湧き上がる。


「じゃあそれを探すってことね!でも、ねえアレクあなたはどうしてこんなに良くしてくれるの?いくら私がかつてのあなたの主の魂を持っているからってちょっとおかしいと思う。」

「疑っているのか?」

「そういうわけじゃないけど・・・。」


 何しろ私には彼以外に頼れる相手がいないのだ。だが全幅の信頼を寄せるには彼の事を知らなさすぎる。ついて行ったら最後、元の世界どころかこの世界からも消される恐れもあるのだ。


「疑うのも無理はないな。ならこれを持て。」


 と言いアレクは自分の腰に差してある剣を私に差し出してきた。つい受け取ってしまったが、こんなものを持ったのは生まれてこの方初めてだ。装飾はシンプルだがとても綺麗で、柄には黒い水晶のような石がはめ込まれていた。

 アレクの剣をしげしげと眺めていると、その剣の主は私の前に跪きとんでもないことを言い放った。


「闇の騎士アレクシス・ヴェルドリアはカミシロ・サーヤに忠誠を捧げ、決して裏切らず、彼女を助け守り抜くことをここに誓う。」


 ちょっと待って!と言う前に剣にはめ込まれている水晶が輝きだし世界は白く染まる。そして光は私を包み込み、再び水晶の中へと吸い込まれていった。そしてアレクは立ち上がると剣を受け取り、腰に差した。


「今何をしたの?」

「騎士の忠誠の誓いだ。この誓いを違えれば、騎士は死ぬ。」


 え?しぬ?死ぬって言った?


「・・・冗談だよね?」

『冗談じゃないわよ~』


 突然の第三者の声に驚き、声がしたほうを向けばそこにはナイスバディのお姉様が!えと、いつからそこに?そんな私をよそに、アレクは呆れたような顔でその女性を見る。


「エイラ、何故まだここにいる。」

『アレクの命令どうりちゃんと2人っきりにしてあげてたわよ、失礼ね。あなたが精霊石を介して騎士の誓約をするから驚いて戻ってきたの!』


 この女性は誰?というか精霊石って?もう次から次へなんだというのだ!


『こうして会うのは初めましてね。私はエイラ、アレクと契約している闇の大精霊よ。よろしくね。』

「あ、はい、よろしくお願いします。」


 差し出された手を反射的に握り返す。


「って、え?精霊?」

『ええ、そうよ。で、アレクがご主人様。そして、アレクが精霊石を介して騎士の主従契約を交わしたことで、あなたには私たち闇の精霊の加護が与えられたってわけ。』

「な、なにそれ、どういうこと?」

『え?だって精霊石のついた剣を受け取ったでしょ?精霊石は私たち精霊との契約の石。それでアレクが忠誠を誓ったから、必然的に私たちには主の主を守る義務が発生したのよ。知ってて受け取ったんでしょ?』


 そんなの聞いていない。というか、知ってたら受け取らなかった。そんな私の様子を見てどうやらエイラもそのことに気付いたようだ。


『ちょっとアレク!説明せずに誓約したの!』

「説明したら拒否される可能性があったからな。」


 その言葉を聞いて、思わずアレクを睨みつけてしまう。あれ?そういえばさっきエイラは・・・。


「・・・冗談じゃないってどういうこと?誓約を違えれば騎士は死ぬって・・・。」

『ああ、それはね魔族の騎士の誓約は、魂を通して行われるものだからよ。ようするにあなたは誓約によってアレクの魂を自分に縛り付けているってこと。というかそれも説明されていなかったのね。』


 エイラがアレクを責めるような目で見ている。


「私その誓約受け入れた覚えないんだけど・・・。」

「剣を受け取った時点で受け入れたことになるんだ。ちなみにどちらか一方が死ぬか、誓約を解除するまで持続される。」

「じゃあ今すぐ解除して。」

「断る。どうして解除を望むんだ?不安要素はないに越したことはない。これで俺がお前を裏切る心配はないだろう?」

「だからって、死ぬとか重すぎる・・・。」


 というか私が主じゃないのか?それにしてはアレクがふてぶてしいような気がする。まあ様付けで呼ばれたり、敬語を使われても困るけど。そんなことを考えているうちにアレクとエイラはどんどん先へ進んでいく。


「エイラがここに来たのはちょうどよかったな。転移魔法で俺たちを城まで飛ばしてくれ。2人転移させるにはまだ魔力が回復しきっていないからな。」

『ええ~、もう精霊使いが荒いわね!』

「行くぞサーヤ。」


 エイラが指を鳴らすと、足元の自分の影が体をどんどん飲み込んでいった。


「ちょっ、まっ・・・。」


 とりあえず後でアレクには人の話をちゃんと聞くように言わなくては!





*****


 ついた先はシンプルながら広い部屋だった。まあまず間違いなくアレクの部屋だろう。話を聞く限り彼は魔王の側近のようだった。しかも、いつのまにかエイラはいなくなっている。


「先に言っておく。この城には今俺の他に風の騎士と炎の騎士がいる。2人はお前の存在は知らない。もし知られたら面倒なことになる。だからこれを着けていろ。」


 そう言ってアレクは黒い石のついたブレスレットを差し出した。精霊石とは違い歪な形をした石だ。


「これは?」

「俺の魔力で作られた魔石だ。これを着けていれば、他の魔族にはお前が陛下の転生者だと気付かれにくくなる。それに覚醒を遅らせられる。あくまで遅らせる程度だが。」

「覚醒したらどうなるの?」

「覚醒したら魔石は砕け、抑えていた魔力があふれ出す。おそらく今のお前では制御できないだろう。元の世界に戻るのは難しくなるな。だから魔力は使うな。魔力を使えば覚醒を早める。」

「わ、わかった。」


 私はブレスレットを受け取ると素早く自分の手首に巻きつけた。


「そういえば、風の騎士と炎の騎士って?」

「・・・炎の騎士は脳筋だ、あいつにはばれてもあまり問題はない。風の騎士は・・・・・・・・・陰険腹黒鬼畜眼鏡だ。」


 ひどい言い様だ。けどそれが本当なら風の騎士とはあまりお近づきになりたくない。


「・・・来たな。後ろに隠れていろ。声は出すな。」


 そう言ってアレクは私を彼の背に追いやった。

 そして次の瞬間・・・。


 バンッッ!


「アレク!!一体どこをほっつき歩いていたんです!!」


 扉を壊す勢いで眼鏡をかけた美形様が現れた。






 



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