表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王と騎士  作者: 如月文
第一部
3/112

異世界旅行のしおり① まずは状況を把握しましょう

 異世界・・・。



 思考は過去へ遡る。




 あれは去年の夏、私は受験勉強におわれ疲労困憊になり、休憩と称してリビングのソファでアイスを食べていた。隣では同じくアイスを食べながらゲームをする兄がいた。ゲームの内容は、異世界に召喚された少年が勇者となり世界を救うという王道設定のRPGだ。

 毎日続く受験勉強という名の地獄に私の心は荒んでいた。そう、いつもなら言わないことを言ってしまうくらいには。


『異世界に召喚なんて絶対にありえないよね。』


 ありえないからこそのゲームなのに、そんなことを言ってしまうくらいには私の脳は疲れていた。

 だが、兄はその言葉に対して笑って流すどころか、わざわざゲームをしている手を止め、私に向き直り、真面目な顔をしてこう言った。


『いいか沙綾、この世に絶対なんてありえない。今この瞬間にお前が異世界に行ってしまう可能性だってあるんだ。だからいつそうなってもいいように、きちんと準備をしておきなさい。』


 いくら人にはない力があったって、異世界になんて行くはずはない。兄の言葉に突っ込もうとしたが、兄は続けてこう言った。しかもドヤ顔で。


『まあ、たとえ沙綾が異世界に行ったとしても、俺がきちんと助けに行ってやるからな!』


 兄のシスコン振りにあきれ私は部屋へ戻り、勉強を再開した。



 *****



 意識が過去から現在へと戻ってくる。どうやら現実逃避をしていたらしい。

 

 あの時、兄にもっと詳しく聞いておくべきだった。

 兄が務めているのは表向きは世界的な調査機関、実態は能力者を保護、育成し派遣する組織だ。もしかしたら知り合いに異世界トリップを経験した人がいるのかもしれない。もしくは、予知能力を持つ兄の友人兼同僚が妹が異世界に行くということを警告してくれていたのかもしれない。それならそうと言え、兄よ。後悔しても後の祭りである。

 とりあえず、まずは状況を把握しなくては!


「えっと、アレク、私は異世界に来たって言ったけどどういうこと?ここは地球でも日本でもないってこと?」

「この世界の名は、ウェスティリア。先ほども言ったが、ディウレウスという魔族の国だ。」




 まぞく・・・魔族!?


(魔族、魔族って言ったよね!ということは、私が召喚されたのは勇者になるためでも、聖女になるためでもないってこと?)


 いや待てよ、目の前の人物が魔族であるとは限らない。そもそも召喚したのが彼だとも言っていないじゃないか!


「アレクは、その、まぞくなの?」

「?ああ、俺は魔族だ。」


 当然だろう?という顔で返されてしまった・・・。


「じゃああなたが私をこの世界に?」

「いや、それは・・・。半分は俺の責任だ。」

「どういうこと?」


 歯切れの悪い彼に先を促す。彼は溜息を吐き、説明を始めた。


「そもそものきっかけとなったあの暗闇の空間、俺たちの世界では次元の狭間と呼んでいるが、あそこにお前を連れ込んだのは俺ではない。」

「じゃあ誰?」

「次元の狭間は、全ての世界と繋がっている。世界が生まれ、世界が消滅する場所。・・・人族の間では、天の神がいる場所と言われている。」

「天の神?ということは、天の神が私をその次元の狭間に呼んだっていうこと?」

「さあな、それは俺にはわからない。次元の狭間で何か見たり聞いたりしなかったか?あそこに行く前は?」


 問いかけられ、私はあの声を思い出す。そして次元の狭間で感じ取ったあの存在を。あれが神様?


「声は聞いた。それに何かがあそこにいたのは感じ取れたけど・・・神様というには、その、正直に言って、おぞましい?って感じだったよ。」


 もしも彼がその天の神を信仰しているのだったら、冒涜だと言われてしまうかもしれない。でも彼は人族が、と言ったのだ。魔族は信仰していないのかもしれない。そしてそれは当たっていた。


「俺たち魔族は地の神を信仰している。だから天の神のことはよく知らない。その声と、存在が天の神だという確証もないしな。」

「そう。じゃああなたの責任というのは?」


 思い返せば、彼にはおかしな部分がある。先ほど彼は次元の狭間をすべての世界と繋がっている場所だと言っていた。つまりそれはかなり広大な場所ということではないのか?その中からピンポイントで私を見つけるなんて、干し草の中から針を探すようなものだ。しかも彼にとってそうまでして私を助けるメリットはあるのだろうか?


「それは俺が次元の狭間からお前を引っ張り込んだということだ。つまりこの世界に連れ込んだのは俺だということになる。」

「でもそれは私を助けるためでしょう?そもそもどうしてあなたは私があそこにいるとわかったの?私を助けた理由は?」

「お前があそこにいるのがわかったのは俺が闇の騎士だからだ。闇は俺の領域。それにこれはお前を助けた理由につながるんだが・・・。」


 アレクは真剣な眼差しで私を見つめまたしても衝撃的な一言を発した。








「お前が俺の主、魔王陛下の魂を持っているからだ。」








 お兄さんは後程ちゃんとした登場をする予定です。あれ?ちゃんと・・・?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ