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転生魔王と騎士  作者: 如月文
第一部
2/112

まさかの初体験!?~膝枕は突然に~

 彼は誰?


 強い既視感。だが、姿は朧気ではっきりしない。


『すまない。君には迷惑をかける。』


『え?』


 あの暗闇の空間に連れて行かれる直前に聞いた声と似ている。だが、あの声は寒気をもたらすほどのぞっとするものだったが、こちらの声には温かみがあった。まるで親が子を心配するような・・・。


『これは私の咎だ。だが、君が選択していかなくてはいけない。』


『どういうこと?』


『もう目を覚まさなくては。大丈夫、私は君の味方だ。それに、あいつなら君の力になってくれる。』


『あなたはだれ?あいつって?』


『説明している時間はないんだ。けどまた会えるよ。さあ目を覚ましなさい。』






 優しくてどこか悲しげな声に導かれ、少しずつ意識が浮上していく。







******





パチパチと火が爆ぜる音。さらさらと髪を撫でられる感触。

どうやら私は意識を失っていたらしい。最後の記憶は誰かに抱きとめられた所で終わっている。おそらく、助かった事に安心して気が抜けてしまったのだろう。助けてくれた人には、ひどく迷惑をかけてしまった。

それにしても、私が頭を預けているものは妙な感触がする。枕にしては固く、かといって地べたに寝かせられているにしては柔らかい。・・・何だろうこれは?少しつついてみる。なんだかはりがあるな・・・。


・・・はり?


「起きたのか?」


男の人の声だ。私を助けてくれた人の声。それが真上から聞こえた。


・・・真上?


恐る恐る目を開ける。すると目の前には美形のドアップが!?


「ひゃあああああああ!」

「おわっ!」


驚いて急に起き上がる私。頭突きがヒットするかと思いきや、すかさず体をひいて避ける美形。うん、反射神経はいいらしい。

じゃなくてっ!膝枕!人生初の膝枕が見ず知らずの男性!しかもする方ではなく、される方とは!


「というか、何故膝枕!」

「地面に寝かせるにしても、木に寄りかからせるにしても固くて寝にくいだろう。女にそんな手荒な真似はできん。」


どうやら親切心だったらしい。冷静な声を聞いて我に返る。


あたりは薄暗く、草木が鬱蒼と繁っている。ただ焚き火だけが辺りを煌々と照らしている。


改めて恩人の姿を見てみる。年は20代後半だろうか?髪は黒。というか全体的に黒い。まるでファンタジーアニメや漫画に出てくるような黒い騎士服らしき装いをしている。しかも、腰には黒い剣?を帯刀している。その中で、肌の白さと、深紅の瞳が強く印象に残った。


ふと、自分の体に黒い外套?が掛けてあることに気付く。彼が掛けてくれたのだろう。それを畳んで彼に差し出す。


「あの、これ、ありがとうございました。」

「いい、着ていろ。」


彼は一瞥しただけで受け取りはしなかった。正直肌寒かったので、お言葉に甘えて借りることにする。


「あの、それと助けてくれた、んですよね?そのこともありがとうございます。」

「いい、気にするな。俺は俺のやるべきことをした。それだけだ。」


 どういう意味だろうか?彼は慈善事業家なのか?そんな馬鹿な。だが、助けてもらったことは事実だ。


 そういえば、自己紹介がまだだった。人付き合いの基本はまずはお互いの名前を知ることからだ!それに、後でお礼をしなくてはいけない。私は今まさに無一文の状態だった。


「私、上代沙綾といいます。あなたの名前を伺っても?」

「アレクシス・ヴェルドリアだ。アレクでいい。カミシロが名前か?」

「いえ、沙綾のほうです。えと、アレクさんは外国の方ですか?日本語上手ですね。」


 そう言った私をアレクさんは怪訝な顔で見る。何か変なことを言っただろうか?


「敬称と敬語は不要だ。それと俺はニホンゴとやらは話していない。」


 では何故会話が通じるのだろう?というかこの状況、なんだか嫌な予感がひしひしとする。いやもしかして私は知らない間に外国語をマスターしていたのかもしれない。すごいな私。英語の成績は5段階評価で2だ、ありえない。


「ちなみに、ここはどこでしょうか?」

「ディウレウス国のアルディエルの森だ。」






 ・・・どこ、そこ?






頭の中の地図を検索してみる。・・・聞いたことがない。外国、しかも小さな国なのだろう。っていうことは、私は不法入国をしてしまったのだろうか?大変だ、どうやって帰ろう・・・。パスポートはもちろん持っていない。いざとなったら、兄に連絡をして・・・。

考え込んでいると、目の前の人物から今一番聞きたくなかった言葉が飛び出した。


「異世界に来たのだから動揺するのも無理はないが、そろそろ本題に入らないか?」


 その言葉で、私の頭はフリーズする。

 



 現実逃避していいですか?

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