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転生魔王と騎士  作者: 如月文
第一部
14/112

3人寄らば?※アギル視点

短めです。

 ―――――深夜2時




「ふぁああああ」


 大きな欠伸をすると目の前にいる眼鏡は青筋を立てた。何でおれの周りにいる奴らはどいつもこいつも沸点が低いのだろう。


「聞いているのですか、アギル!」

「あ~はいはい、聞いてる聞いてる。っていうかさっきから同じことの繰り返しで耳にタコができそうだ。」

「真面目に話し合いに参加しなさい。何のためにあなたとアレクをここに呼び出したと思っているのです。」


 そう、ここはレティスの執務室。かれこれ3時間ほどレティスとアレクは昼間の押し問答を続けている。サーヤを元の世界に戻したいアレクと、魔王にしたいレティス。どちらも引かず、話はずっと平行線のままだ。つーか俺、いらなくね?


「なあ、あのさ俺の意見はもう言ったはずだし、難しいことはわかんねえからさもう戻っていいか?」


「駄目だ。」

「駄目です。」


 何でこういう時だけ息ピッタリなんだよこいつら。話し合いと言っても俺は最初に意見を言ったきり、後は延々とこいつら二人で言い合いしているだけだ。その間俺がやっているのは奴らのカップに紅茶を注ぐだけ。なら帰ってもよくないか?


「あ、俺まだ仕事が残っていたんだった。」

「安心しろ。イオレスに任せておいた。今のお前の仕事はお茶汲みだ。」

「そうです。あなたがいなくなったら誰がお茶の用意をするというのですか。」


 薄々そうじゃないかとは思っていたが、やっぱりお茶汲み要員として留まらせていたのか。本当にこいつら俺の事をなんだと思っていやがるんだ。湧き上がる怒りを必死で抑える。俺とこいつらじゃあどう足掻いてもこちらの分が悪すぎる。いっそ睡眠薬でも入れてやろうか。いや駄目だ、こいつら二人薬物耐性があるんだった。


 はあ、と溜息をついて話題の人物であるサーヤの事を思い出す。まさか彼女があの魔王陛下の生まれ変わりとは・・・。最初に会ったときはそんなこと微塵も思わなかったというのに。


 イオレスを治療するときに放出されたあの強大な魔力。陛下の気配を感じて反射的に跪いてみればそこにいたのは華奢な少女一人。彼女から陛下の魔力感じて、混乱しちまった。陛下?いやサーヤだよな?そして始まった二人の押し問答。そこで初めて彼女が怯えていることに気付いて慌てた。俺としたことが女子供を怯えさせるなんて!内心慌てて二人を止め、前と同じように頭を撫でてやる。そうしたら安心したようにふわりと微笑んだのだ!あの顔は反則だ。あの微笑みを見た瞬間俺は悟ったのだ、ああ、彼女は陛下ではなくサーヤという少女なのだと。


 サーヤとアレクが消えた後、レティスは急ぎの仕事があったらしく悔しそうにその場から消え失せた。残った俺はというと、場の混乱を鎮めるという後処理に追われた。兵士たちによってたかって詰め寄られ、正直何も知らない俺は「サーヤはサーヤだ、彼女を魔王陛下だとぬかす奴は俺とアレクを敵に回すと思え!」と宣言しちまった。まあ、後悔はしていないが。


 イオレスが目覚めた後、事の次第を聞いたあいつは顔を青ざめさせた。「僕は陛下になんてことを・・・」とかぬかしやがったから、一発殴っておいた。俺の補佐官であるこいつが彼女を魔王扱いするなんぞ言語道断だ。


 兵士たちと同じくイオレスも説き伏せた後、焼き立てのスコーンを持ってイオレスと共にサーヤのもとへと向かう。とは言っても彼女は自分の部屋ではなくアレクの私室にいるだろう。なんていったってアレクは彼女の騎士なんだし。というかあいついつの間に誓約しやがったんだ?少しうらやましく思いながらアレクの部屋を訪問すると案の定サーヤがいた。しかも安心しきった顔で。胸が少しズキッとしたが彼女が駆け寄ってくる姿を見て治まる。あの痛みは一体なんだったんだろう?まあすぐに治まったし、大丈夫だろう。俺達が協力を申し出ると彼女は嬉しそうに微笑んだ。だからその顔は反則だって!可愛すぎるんだよちくしょう。


「何をニヤニヤしているんですか、気持ちの悪い。」


 おっと、思考が飛んでいたようだ。というか気持ち悪いってなんだ気持ち悪いって。


「べつに~お前にゃわからねぇよ。」


 あんな可愛いサーヤを陛下と同一視している奴にはな。


 さすがに彼女が異世界から来たというのは驚いたが、まあ陛下がやったことなら、と納得はした。どうしてそんな事をしたのかはわからないが。彼女が元の世界に帰りたがっていると聞いてまたしても胸がズキリと痛んだような気はしたが気のせいだろう。何せ健康だけが取り柄なんだし。


 目の前ではまた二人が言い争いを再開している。あきねぇなぁ二人とも。出そうになるあくびをかみ殺して、明日からのサーヤとの行動に思いを馳せた。

 

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