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導入部8―世界の崩壊―

・各話基本的に3000字くらいで文量をユルく書いていきます。

・更新は本編優先なので不定期です。

・本編で煮詰まったり、息抜きしたい時にちょこちょこっと書けるものが欲しくて書いています。


 大きく翼を広げた黒龍は、咆哮を上げると両手と胸部、そして頭部にある宝玉を輝かせて膨大な魔力を収束し始めた。その力が周囲に与える影響は凄まじく、地鳴りが唸りを上げて大地を揺らし、空もあっと言う間に暗雲が立ち込めて雷鳴が鳴り響き始める。


 紫電を纏ってバチバチと音を立てながら、体にある四つの宝玉から黒いオーラを立ち昇らせ、黄金の瞳には理性などは一切無く、見る者の心臓を止めんばかりの強烈な原始的な破壊と怒りの衝動をひたすらに発している。


 黒龍が放つ四つの黒い輝きがその眩さを増すと、空を覆う雲に幾何学的な紋様が浮かび、それは怒涛の速さで広がりを見せ、いつしか地平線の彼方まで続く雲の全てに至っていた。


 その紋様はこの世界――インペリアスクーンの世界全土の空に際限なく掛かった厚い雲に浮かび上がっていた。


 ――その日、世界に息づく全ての生ある存在が空を見上げた。


 各地で突如として空を覆った厚い雲と、そこに浮かび上がる不気味な紋様。そして地震と地鳴りが起きて、全世界規模の天変地異は人々を恐怖させ、混乱の極地へと叩き落した。


 世界を震撼させる空を覆った紋様は、現在黒龍が行使しようとしてる魔法を構築する未曾有の大規模魔法の単なる構成魔法陣でしかなかった。だが、この凄まじい規模の魔法陣によって放たれる魔法が齎すその威力が如何なるものかなど――もはや考えるまでもないモノだろう。



 世界そのものが慄く中で、黒龍は一切の躊躇もなく――それを放った。



 黒龍の口腔から放たれた黒い光の奔流は、そこにいた全ての人間、エルフ、魔族が見守る中一直線に地上へと突き進み、時間にすれば僅か一瞬にして到達したそれは――カイザルク王ゼノン、エルフの女王シエナリウナ、魔族の盟主レグイエの三人が立つ場所へと直撃し、その英傑三人を一瞬にして消滅させ、地上に着弾した衝撃によって生じた衝撃波で空僻地に展開していた三軍を薙ぎ払い、続いて発生した凄まじい爆発の熱波に巻き込まれて三軍合わせて約三十七万の大軍勢を一瞬で蒸発させた。


 衝撃波と熱波が地上を怒涛の勢いで焼いて行く中で、地上へと直撃した空前絶後の力を秘めた黒光の奔流は、地表で拡散するような柔な力ではなかった。地上から地下深くへと地層も岩盤も消滅させながら突き進む凶悪な力は、世界の地盤を守るありとあらゆる自然の機構を、その理不尽な力でことごとく貫いて破壊してゆき、その力は程無く世界の中心部へと到達し、世界の成り立ちを保護する根幹である『領域核』を貫き、それを粉々に粉砕し、さらにはその下にある世界を支える極底部を貫通して断ち割った。



 領域核を失い極底部を貫かれた世界は、死を迎え――その存在を保つことが出来なくなる。

 


 破滅の一撃で撃ち抜かれ貫通された世界は、その着弾点から凄まじい勢いで文字通り世界を二つに割る亀裂が生じ始める。そしてその頃には、衝撃波と熱波が地上を蹂躙し尽くしており、もはや地上で生存している生命体は皆無だった。


 世界を引き裂く断裂は瞬く間に広がり、その最も巨大な三筋の裂け目が大陸の端から端まで行き渡り、やがて海へと到達すると容赦なく断裂が海を断ち割り、膨大な量の海水が地の底へと流れ落ちていく。


 割れた断層から湧き上がって来る溶岩が地上へと流れだし、衝撃波と熱波で等しく平らになった地上を赤く赤く染め上げていった。

 地の底へと流れ落ちる海水と地の底から沸き上がる溶岩が衝突し、凄まじい水蒸気を発生させて海洋部から沿岸部にかけてを白く染める。そして、広がり続ける断裂が遂に海に張られていた障壁を打ち破り、境界を蝕みながらさらに広がっていく。

 留まることを知らない破壊の連鎖は、世界を砕く三筋の巨大な断裂が西南北の極点に到達することで一つの節目を迎えることとなる。


 クロウシスによって放たれた暗黒の極光が着弾した地点を起点に、三方向に派生した巨大な断裂筋は世界の端へと到達し、躊躇なく世界を引き裂いた。その結果、世界は巨大な三個の塊に分断されて、それぞれ領域核と極底部という二つの支えを失って沈み始める。


 溶岩の爆発、地殻の断裂、海洋の大規模蒸発。


 そのどれもが死んだ世界の声無き悲鳴にも、死んだ世界を悼む声にも、世界を殺した者に対する怨嗟の声にも聞こえた。



 世界を構築していた基盤の全てが崩れ去り、その全てが久遠の闇へと堕ちていく様を、一つの世界を滅ぼしてもなお収まることのない赫怒に燃える黄金の瞳に映しながら、クロウシスは身体に埋め込まれた宝玉から禍々しい黒い光を放ちながら、巨大な翼を大きく広げて咆哮を上げた。


 クロウシスがいるのは様々な世界が浮べる遥次元界と言われる空間で、高次元の生命体や意識総体のみが存在を許される空間であり、死んだ世界はこの空間の底――久遠の闇へと堕ちていくこととなる。



 その悪夢のような世界に、頼りなく揺れる淡い青い光が差し込む。

 青い光は淡く頼りない光源を揺らしていたが、徐々にその光量を増して行き、遂にはクロウシスの放つ黒い光を覆い尽くすほどに輝きを増して広がっていく。


 包み込むようなその青い光りに気づいたクロウシスは、狂乱に満ちた黄金の瞳をギョロリと光の元へと向けて、眼を見開いて聴く者の心臓を凍りつかせるような咆哮を上げる。

 そして両手をバっと開くと、体中に紫電が走り抜け再び四つの宝玉から黒いオーラが立ち上り始め、クロウシスの体内にある内燃器官が歓喜の唸りを上げて全身に魔力を充填させる。黒角から尾の先まで紫電と化した魔力が走り抜け、バチバチと音を立ててクロウシスの呼気と共に実体化した高密度の魔力が噴き出し、内燃器官内の魔力充填が臨界に達してクロウシスの胸部に赤い亀裂のような刻印が浮かび上がる。

 それと共にクロウシスの背を中心に巨大な魔法陣が浮かび上がり、上下左右に奥行きがない遥次元界では、それぞれの奥行きに際限が無いため、クロウシスによって展開される魔法陣は無尽蔵に広がり、身体から洩れ出る魔力が滅多なことでは干渉を受けない遥次元界を僅かにブレさせる。


 先ほどイスペリアスクーンを崩壊させた力よりも、更に強大な力を収束させたクロウシスの視線の先で、青い光はクロウシスと久遠の闇へと堕ちていくイスペリアスクーンの残骸へと、自身の光を放射し続けていた。今のところ実害などは一切ないが、そんなことは今のクロウシスには関係があるはずもなかった。


 クロウシスは再び世界を崩壊させるに足る威力を秘めた暴虐の力を、躊躇無く放出する。


 それとタイミングを合わせて、青い光が見渡す限り闇の世界である遥次元界を果てなく照らすほどの光を放ち、そこにあった全て存在を包み込んでいった。



 ――その青き光は救済の光か、それとも更なる破滅を招く元凶か。



                ◇◆◇◆◇◆◇



 脈動する苛烈な力の収束に、世界は慄き天と地と鳴動していた。


 大きく翼を広げた黒龍は、咆哮を上げると両手と胸部、そして頭部にある宝玉を輝かせて膨大な魔力を収束させ、その溢れるほどの膨大な魔力はクロウシスが留まる周囲の空間を歪ませるほどに強大だった。


 その力の収束と発散によって、三軍が立つ大地を揺らし、彼らが見上げる空には分厚い暗雲が立ち込め、天空がクロウシスの怒りに呼応するように雷鳴が鳴り響く。


 紫電を纏ってバチバチと音を立てながら、体にある四つの宝玉から黒いオーラを立ち昇らせ、黄金の瞳には理性などは一切無く、見る者の心臓を止めんばかりの原始的な破壊と怒りの衝動をひたすらに発している。


 その荒ぶる黒龍の姿を見て、戦慄に慄きながらゼノンは息を呑み、生まれて初めて本当の意味で畏怖の念を感じていた。


 膝をついたまま、上空から発散される荒々しい魔力に当てられたシエナは、最も原始的な恐怖を感じながら、エルフの巫女としての素養によってクロウシスの精神を蝕むかのような激しい怒りを感じて、その埒外の魔力と感情を発散する姿を直視することが出来ずにいた。


 レグイエは呆然と空を見上げていた。

 他の二人の王よりも長きときを生きてきて、この世界ではほんの僅かにしか生息していないドラゴンとも面識があるのだが、今自分が見上げているアレはレグイエが知っているドラゴンとはまるで別物だった。

 姿形こそ確かにドラゴンと酷似しているが、あのドラゴンから放たれる魔力も気配も次元がまったく異なるモノであり、種族として魔族が最も優れているという自負があったゆえに、神に等しいとさえ思えるほどの力を放つ存在を目の当たりにして、彼は呆然としていた。

 世界が異なれば、そこに住む存在にさえ、ここまでの差があるのか。

 その事実に対する衝撃に、レグイエを打ちひしがれていた。


 黒龍が放つ四つの黒い輝きがその眩さを増すと、空を覆う雲に幾何学的な紋様が浮かび、それは怒涛の速さで広がりを見せ、いつしか地平線の彼方まで続く雲の全てに至っていた。


 その紋様はこの世界――インペリアスクーンの世界全土の空に際限なく掛かった厚い雲に浮かび上がっていた。

 人間たちの各国とその都市も町も村も、そこに住む全ての者が空を見上げていた。


 エルフが住まう大森林と、大陸各地の森に潜伏するエルフたちも木々の間から、あるいは木に上り空を見上げていた。


 大陸各地の廃城や地下迷宮、そしてレグイエたちによってもたらされた領地にいる魔族たちも、他種族同様にやはり空を見上げていた。


 それだけではない。

 その三種族以外の全ての生き物たちが等しく空を見上げていた。


 各地で突如として空を覆った厚い雲と、そこに浮かび上がる不気味な紋様。そして地震と地鳴りが起きて、全世界規模の天変地異は人々を恐怖させ、混乱の極地へと叩き落した。

 

 天変地異の前触れだと騒ぐ者もいれば、世界の終わりだと嘆く者もいる。

 ゼノンの祖国カイザルクでは、出兵している兵士の家族が不安に囚われながらも、家族の無事を祈り空を見上げていた。

 

 世界を震撼させる空を覆った紋様は、現在黒龍が行使しようとしている魔法を構築する未曾有の大規模魔法の単なる構成魔法陣なのだが、その途方も無い規模を考えれば、この凄まじい規模の魔法陣によって完成される魔法が齎すその効果が如何なるものかは――魔法を齧った者でさえ見当がつかないほどに凄まじい力を秘めており、魔法に対する知識がない者にとってはただ怯えることしかできないほどの迫力があった。



 世界そのものが慄く中で、黒龍は一切の躊躇もなく――それを再び(・・)放った。


ご意見ご感想はお気軽にお寄せください。

とても励みになります。


ありがとうございました。


※表現が演出上とはいえ、些か手抜きに等しい事になっていましたので、最後の部分を加筆しました。

2012/11/08


※2013/09/09 誤字修正しました。

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