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導入部2―英雄の三種族―

・各話基本的に3000字くらいで文量をユルく書いていきます。

・更新は本編優先なので不定期です。

・本編で煮詰まったり、息抜きしたい時にちょこちょこっと書けるものが欲しくて書いています。



 空虚な風が荒野の中を吹き抜け、乾燥した空気とそこに張り詰めた緊迫感がまるで音を立てて聞こえてくるような重苦しい雰囲気を構築していた。

 ここは大陸南西に広がる空僻地と言われる場所。五百年前の大戦争で大規模な神霊力(マナ)の暴走が起きて、それ以来草木の一本も生えない不毛の大地となっていた。

 その寒々しい荒野には三つの軍勢が結集していた。



 三軍の内の一軍は、人間族の中で最も繁栄している国家であるカイザルク王国の主力軍。その主力軍の中でも特に目を引くのが、陣形の最前列にいるカイザルク軍の虎の子である『蒼銀騎士団(セバリルナイツ)』だった。『蒼銀(セバリル)』といわれる濃紺に輝く魔法銀の甲冑に身を包んだカイゼルク軍のまさに精鋭部隊だ。

 更にその両端には、青色の分厚いローブを身に纏いフードを目深に被った一団が並び立っている。この一団はカイザルクの王立魔道師ギルドがスカウトした優秀な魔道師たちで構成された魔法部隊で『青幻魔道師団』と呼ばれている。


 その精鋭たちが束ねる軍勢は十万の兵士と二万の魔術師を動員し、まさに決着をつけるに相応しい規模といえる。

 それも数が多いだけでなく、各兵士にはカイザルク王国が心血を注いで作り上げた聖剣工房によって鍛えられた量産型聖剣が全ての兵士たちに行き渡っている。さらに魔法の才に長けていない者でも使える魔法として、王立魔道師ギルドが編み出した『魔術』を習得したアカデミー出身者の魔術師たちが終結していた。


 その壮観とも言うべき光景を前に笑いながら大きく頷いている人物がいた。

 

「だーはっはっはっは!」


 黒い髪を蒼銀(セバリル)の兜からのぞかせ、爛々と燃え上がる意志の強そうな目も黒瞳。スラっとした体型だが、筋肉もそれなりについている引き締まった体躯をしている。腰には豪奢な剣を帯剣し、その剣の柄と鎧にカイザルクの紋章が意匠されていた。


「いやぁー壮観だっ! ユギルもそう思うだろ? え? 思わない? お前なぁ……余はこれから始まる戦いを考えると、もう武者震いが止まらないぞっ!」


 そう言って隣に立つ男の背中をバンバンと叩くこの男こそが、カイザルク王国の王にして先王が余りに早く逝去したことで若干十四歳で戴冠し、その後二十年間南からはエルフ軍に攻められまくり、昔から二大大国と言われていた同じ人間の国からも攻撃されまくったカイザルク王国を護りきった豪の猛者である豪腕王――ゼノン=エレ=ウルダ=カイザルクだ。


 その王族として色々イタく(・・・)なる時期を騎士の家に生まれた次男坊みたいな性格で迎えて、そのまま更正されずにデカくなって王になったような男だが、その奔放な性格とは裏腹な大胆にして緻密な内政と、先を見通した技術開発に対する惜しみない努力と投資をする姿勢に、臣下からも国民からも非常に人気のある王だった。


 ゼノンにバンバンと背中を叩かれたのは、この軍勢を統率するカイザルク軍元帥の座にいるユギル=ダグ=ウェルダムだった。

 五十代後半とは思えない引き締まった体躯に、ジェントルマンかつワイルドな相貌は、いつも眉間に皺を寄せて何かに悩んでいるかのような表情をしている――彼が何に対していつも胃の痛い思いをしているのかは、言わずもがなだ。


 目の前でダハハハと嬉しそうに笑う王を前に、この一大決戦に付いてくる事を一ヶ月と二週間と6日掛けて諦めさせたはずなのに、ここに来てみれば一般兵の中から何か煩いのが出てきたので怒鳴ったら、自分が仰ぎ見る王だったのだから、指揮用の即席壇上からショックの余り転がり落ちたユギルの心境たるや察して余りあるものがあった。


「陛下。あまり緊張感のない発言は謹んで下さいませ。これは我が国の――いえ、この世界の命運を決める一大決戦なのです」


「だから余が自ら出陣する必要があるわけだ。王と共に戦える――確かに余の身に危険が伴うのは確かだが、兵にとっては何よりの励みになるとは思わんか?」


「それにしても、この戦いは乱戦となります。御身に降りかかる危険が余りにも大きい。いくら兵の士気を上げるための鼓舞にしても、やりすぎでございますっ」


「大丈夫だって! ユギルは相変わらず堅いヤツだなぁ。余のような柔軟な思考を持たねば、これからの世の中は渡っていけんぞ」


 その言葉にユギルは若干怯んだ。

 この王は言葉遣いすら王として相応しいものでもない癖に、確かに王国危機に際して臣下がもうダメだっとさじを投げた場面でも、突拍子のない作戦の数々でそれを乗り切り、様々な新しい法と技術を考え付いては王国の発展に貢献してきたのだ。

 それだけの実績がある上に、ユギルも自分の王に対して生涯を通して付き従うべき王だと心に決めている。惚れた弱みと言うべき甘さで、彼の奔放さにも随分目を瞑ってきた。


 瞑ってきた――が。


「いっつもそんなに眉間に皺ばっか寄せてたらダメだぞ。ウチの上から三番目の娘が持ってる慎ましやかな胸の谷間よりも深いんじゃないのか? だっはっはっ!」


 ブチっ


「王であり父である貴方様が、姫であり娘であるユウリ様に対して、そのような下品なことを!」


「うっわユギルは本当にユウリの事になると沸点低いな……やらんぞ?」


「もらうかっ! 恐れ多い上に失礼な挙句っ私には妻がおるっ!」


 切れると王子時代のゼノンを叱っていた時の勢いとノリが出てしまい、ついつい言動に礼が失するが、ゼノンはそれが嬉しくてやっているので無問題だった。


 二人を見る兵にしても、前列部に集まっているのは軍の精鋭たちであり、彼らはこういった光景は見慣れており、無駄な緊張が取れたいい表情で笑っていた。

 それを感じ取ったゼノンはニッと笑い、ユギルの肩をポンポンと叩いて首に腕を回して自分の方へと引き寄せた。何をっとユギルがゼノンの顔を見ると、そこには先ほどまでふざけていた男の顔は無く、いままでいくつもの絶体絶命の危機を乗り越えてきた『王』の表情があった。


「エルフの連中。やっぱり人数差を補うためにかなりの数の使役獣を連れて来てる。遠見の魔法は遮断されて見えないみたいだから、とにかくどんな獣を連れてきてるのかを確認してから当たれよ。連中の士気と名誉のために前の方には並べてるが、ことさら無策で当たるには今回の戦はやっぱちょっと毛色が違う」


「はっ。了解しました」


 そして二人はもうじき始まる大いなる闘争、そしてその渦中の中心となる荒野を見た。


                   ◇◆◇


 生まれ育った故郷の大森林に比べて、あまりにも空虚で生命の営みが何一つ感じられない空僻地の光景を見渡し、エルフの軍勢は皆一様に押し黙っていた。


 緑と白を基調とした比較的軽装な鎧に身を包み、兵士はそれぞれ弓を持つ者と槍を持つ者に分かれている。弓術はエルフのお家芸とも言えるもので、他種族の射手ではよほど優れている者ではないと太刀打ちできないほどの腕前を持っている。槍術に関しても、人間の兵士が扱うランスなどとは違った細く長い槍をしならせて攻撃する独自の技を持っている。

 射手の中でも、頭に大きな飾り羽をしている者は特に秀でた腕を持っており、幾度と無く戦ってきた人間からは『緑淵の狙撃手』として恐れられている。


 そして、軍勢の中心部にエルフ独特の緑を基調とした布地に、支族のシンボルと守護する獣を刺繍した巫女服を着た一団がいた。彼女たちはエルフ族の巫女として精霊魔法に精通した者達で、長きに渡り森と同化するための修行を積んだことにより、大いなる力として精霊と意思を交わすことができる能力を得ている。


 軍勢の数はおよそ五万。人間の半分にも満たない数だが、その表情は決意と誇りに満ちており恐怖などは一切感じさせないものだった。


 兵士たちに鉄の意志をもたらしているのは、軍勢の先頭に立ち見る者も見られる者もその凍れる意志に慄き、思わず体を竦めるほどの迫力と霊子が込められた瞳の持ち主である女王に起因している。

 金糸のようなきめ細やかな髪質を持つ黄金の髪を長く膝裏まで伸ばし、白磁のように白い肌には染みの一つもない。エルフを象徴する碧眼は、風と大地の流れを見通す力と共に、凍れるほどに冷たく厳しい視線を真っ直ぐに伸ばしている。

 彼女こそ現エルフ七支族を統括する女王――シエナリウナ=ウーデリエル=クルサ=ウェ=シティルその人である。


 寿命の長いエルフである彼女はすでに六百歳を超えており、五百年前の戦争には巫女筆頭として参加していた。今回の戦にも娘を参加させるつもりだったが、長男の激しい反対に遭い仕方なく断念した。三百年前に他界した前王の妻であった彼女は、夫の意志を継ぎエルフが真に高貴なる種族であることを世に知らしめるために、自らを厳しく律して女王として立つ事を反対した支族を納得させるだけの戦果という実績を上げ、以前は争いに対して否定的だった自分の意志を曲げて、種族の先頭に立ち導いてきた女傑だった。


 その彼女の凍てつく瞳が横にすぅっと動くと、隣には一人の男が立っていた。


「義姉上はこのような場においても、やはり冷静沈着なのですなぁ。私、義弟としてその氷河のように冷たい血管には、本当に我々と同じ血が流れているのか心配になりますよ」


 くせっ毛の金髪を揺らし、その碧眼は人を常に馬鹿にしたような色を浮かべて見る者を常に不愉快にさせる。服はエルフの貴族が着る慎ましやかなデザインの礼服ではあるが、ここが戦場であることを考えれば十分に場不相応な出で立ちといわざるを得ない。

 彼は先王の弟にあたる人物であり、大した能力もないのだが、シエナの女王即位に最後まで反対していた支族の族長によって、将軍の地位に祭り上げられてこの場にいる。

 名はイシュヴェン=ウーギンテス=ウダ=ソニ。


 イシュヴェンの粘着質な視線を、シエナは一切の感情を感じさせない瞳で受け流した。そして美しい唇を開き、イシュヴェンに対して一応の質問を行う。


「ソニ将軍。貴公の軍は中衛で待機中のはず。何故ここへ?」


「いやぁーなかなか始まらないので、義姉上がもしやこの期に及んで踏ん切りがつかなくてお困りなのではないかと思いましてねぇ。それでしたら、私がその背中を押して差し上げられればと思い、遠い中衛からわざわざ(・・・・)足を運んだわけです」


 前王が人間との戦いを強行しようとした際に、シエナが王である夫に対して『理性と誇りある対応を……』と嘆願した時のことを言っているのだろう。何しろこの男は、前王が亡くなり空位を一時的に埋めるはずだった自分を差し置いて、その座に就いたシエナのことを深く怨んでいるのだ。


「御心遣い痛み入ります。ですが、そのような事は私には無用です。人間たちの軍勢はこちらの倍以上、それに加えてカイザルク王は戦上手。軽率に先手を打てば、我々は窮地に立たされる可能性があります」


「おやおや、『冷血の氷樹』とまで謳われている御方が随分弱腰なのですな……」


「……」


 なおを絡むイシュヴェンに気づかれないように嘆息し、シエナはすっと北西へと指を差した。その先へと胡乱気に視線をやったイシュヴェンは息を呑んだ。


 荒野と灰色の空を完全に黒く埋め尽くすほどの大軍勢が、そこにはひしめいていた。


 ――魔族軍だ。


「数だけの彼我戦力では、我々は魔族はおろか人間にも負けているのです。特に魔族は魔物を使役できる以上、その数は計り知れない……ソニ将軍、忘れないで下さい。この戦は三つ巴の三すくみなのですよ」


 あの大軍勢を見てもなお冷静なシエナの声に気圧されて、イシュヴェンはチッと舌打ちをすると指揮台から降りていく。その姿を目で追うと、下で待っていた肌の浅黒いエルフ――ダークエルフの少女の首に付いた首輪から伸びる鎖を手にすると、それを乱暴に引いた。突然強引に引っ張られ足をもつれさせて倒れた少女は、イシュヴェンに足蹴にされながらもヨロヨロと立ち上がると、その途端に頬を張られ――そこでシエナは視線を逸らした。


 その見たままの光景もだが、極々個人的な理由から心に深い葛藤と不快感が生まれて気を重くさせる。

 まったくもって不愉快極まりない光景――だが、今は大事の前だった。

 あのダークエルフの少女だけではない――今のシエナには、この世界に住む全てのエルフの運命が委ねられているのだから。


                     ◇◆◇ 

 

 何も無い荒野としみったれた灰色の空に相応しい、賑やかだが何処か陰気くさい集団が荒野の一角で天と地を埋め尽くしていた。

 見る限りゾンビやスケルトンといったアンデット四割、空を覆いつくすほどの低級の悪魔と怪鳥の群れが三割、知性は低いが凶暴さと残忍さには定評のある魔獣が二割、そして強力無比な腕力と魔力を誇るデーモンの群れが一割。


 その隊列も何もない軍勢の先頭で、豪奢な椅子に座って紅茶を飲む者がいた。

 色素を抜き取ったかのような白い髪が、シエナとは別の病的な白さを持つ肌と相まって美しいのだが、同時に怪しく不気味な印象を見る者に与える。そして美しく整った顔は二十代後半くらいに見え、怪しくも艶やかな色気と不気味さを併せ持っていた。その顔には銀色に光る眼を持ち、冷笑を浮べた表情でワイングラスを片手に持っている。服は気品と美しさを併せ持った燕尾服に近いダークスーツを身に纏っている。加えて一番の特徴として、彼の前頭部には二本のツルツルとして宝石のような光沢を放つ黒い角が生えていた。

 彼こそが他種族を殲滅せんとする魔族一派の首領にして高位魔族――レグイエ。


 千年近く生きている彼は、五百年前の戦争にも勿論参加している。

 そしてその戦後、妙に増加した『冒険者』という人間を中心とした者達の台頭によって、元々洞窟や廃墟に住んでいた魔族に被害が出始めた。戦後まもなく戦後処理もままならない状況で開始されたその行為に対して、いくら参加した動機が不純なものだったとはいえ、命を掛けて共に戦ったことは真実であるにも関わらず、かような仕打ちを受ける謂われは無いと、レグイエを先頭に数人の高位魔族が賛同して共に立ち上がった。

 やがてその眷属と彼らが使役する魔物が集まり、軍勢は凄まじい勢いで膨れ上がっていったのだ。


 下位の魔物も含めれば総勢二十万を超える大軍勢が、荒野の一角を地と空を覆い尽くしていた。その圧倒的な数と、振りまく瘴気は得も言われぬ威圧感に満ちていた。


 荒野の真っ只中で椅子に座する魔族の前に、地面から浮かび上がるようにして一体の魔族が姿を現した。


「レグイエ様。ハクシビル只今罷り越しました」


「やぁ、ハクシビル。宴にようこそ。今日は盛大な饗宴となるよ」


 レグイエが片腕を広げて出迎えたのは、デーモンの影を綺麗に剥ぎ取ったかのような立体的な影の魔物だった。異様に胴と手が長く、その全身は漆黒の闇そのもので、頭部に切れ込みのような細い目と口がある。


「壮観な光景でございますな。レグイエ様が先頭に立ち行われてきた戦いの末に、我々魔族は固有領域を獲得致しました。そして今こそ――」


 ハクシビルは後方に展開する大軍勢と、東方と南方に広がる人間とエルフの軍勢を見てその細い目から怪しい光を滲ませながら頭を垂れる。


「――我々は確固たる領域を持つ、この世界の最初の生命体としての矜持を示すべき時でございます」


「あぁ、示すとも。その為にソリンの反対を押し切って、この戦いにこぎつけたんだからね」


「レディ・ソリンですか。あの方は人間贔屓なお方ですからな……我らの考えに賛同して頂ければこの上なく心強い御方なのですが」


「仕方がないよ。彼女は誰にも靡かないし、誰にも従わない夜の王だからね」


 肩を竦めながらもレグイエはどこか陶酔した表情で空を見上げる。そして今話題に上った彼女――レディ・ソリンのことを思い浮かべた。


 その美しい紫紺の瞳は英知と気品に満ち、白蝋のように白い肌と均整の取れた幼い肢体はどんな芸術的彫像よりも見る者を蠱惑的に魅了する。


 魔族の中でも一、二を争う力を持った彼女が人間に対して寛容なことは、レグイエにとって残念なことだが、魔族とは今までずっと奔放に純粋な自らの意志に従い生きてきた種族だ。ゆえに同族であれど、その意志を捻じ曲げようとすることはご法度だった。


「でも、魔族の力を知らしめていけば、もっと仲間は増える。そして魔族が安寧を得られる場所がきっと出来る……そうすれば、今は無関心な立場を取っている仲魔(なかま)たちも、きっと協力してくれるさ」


「はっ。その為にもこの戦――勝たねばなりませぬな」


「勿論さ――」


 ワイングラスを空に(かざ)して、それを握り潰すとグラスの破片が飛び散り赤い液体が噴出した。それを見て、レグイエは立ち上がり片手を上げると、背に集いし二十万の同胞が一斉に雄叫びを上げて、大気が魔物たちの闘争本能による高揚と戦熱で熱く震えた。


                   ◇◆◇


 伝説的な英雄三軍同盟による勝利から五百年の節目の年。

 時を経て今度は敵として集った三軍は、それぞれの思惑を胸に睨み合う。

 決戦の地は、どうしようもないほどに空虚な空間だが、ある意味相応しい場所だと言えた。

 

 数的に最も有利な上に、下級の魔物に対しては過度の気遣いを必要としない魔族が戦いの火蓋を切るべく、首領レグイエに導かれ戦囃子の雄叫びを上げる。


 それに呼応して、人間とエルフの両軍もお互いを警戒しながらも、魔族の攻撃に備える。戦場に張り詰めた極限の緊張感の中で、遂に戦いの火蓋が切られようとしていた。



 そんな三軍の上空に異変が起ころうとしていた。


 空虚な曇天の空に突如としてヒビが入り、凄まじい耳鳴りをもたらす高音が鳴り響く。


 まるで天に地割れが起こったかのように空が裂けた。


 割れたステンドグラスのように砕けた空に開いた亀裂。


 まるで空に出現した奈落のような裂け目の中は暗黒の領域だった。


 そこから突如、巨大な物体が出現した。


 部位の欠損が激しく、全身が赤黒く染まっているが、辛うじて元の原形を留めている。


 それは――巨大な龍の死骸だった。


ご意見ご感想はお気軽にお寄せください。

とても励みになります。


ありがとうございました。

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