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*第9話*

遊園地に行ってから約1ヶ月。

夏休みは8月一杯だからあと少し。

そして・・・7月からせっせとやっている課題は

8月になっても山済みのまんま・・・。

最近徹夜続き・・・。

「はぁ・・・気が遠くなりそうだな・・・」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

部屋に水を持ってきてくれた和が

心配そうに私を覗き込んだ。

弟に心配されるなんて、だめだなぁ・・・

しっかりしないとね・・・?

「ごめんね、でも大丈夫だよ。水、ありがとう」

「うん、しんどくなったらいつでも言ってね!」

元気よく部屋を出て行って階段を下りていった和。


・・・ごめんね和。

私がもうちょっと元気な体だったら

和にそんな心配させないでよかったのに。


病気がちで入退院を繰り返していた母親から生まれた私と和。

私は母の病気にうつってしまい毎回入退院を繰り返した。

和は母の病状がかなり良くなった頃に生まれた。そのおかげで元気な体ができた。

・・・そこまではよかったんだ。

だけど、父が出て行き、母が病死で亡くなったとき。

私は自分が無能で役立たずな事に気づいてしまった。

体が弱く、運動も全然できない。むしろ人に心配されるばかりで

役に立ちたくてもたてない有様。

・・・そのせいで、今こんな風に和までにも心配されてしまっている。

この前の遊園地に行ったとき。少し遊園地を回っただけで

凄く息が切れていた。観覧車に乗っていたときはましだったけど

帰ってからしんどかったのを今でも覚えている。


そして、今も、なんとなく嫌な予感がしていた。

「頭痛いなぁ・・・」

暑さに負けて多分頭がダウンしてるんだと思う。

けど・・・こんな事和に言ったら・・・

そう思ってシャーペンを手にとって、文字を書こうとしたとき。

「アレ・・・?」

文字が二重に見えた。

そして、目の前も二重に見えて次の瞬間には真っ暗になった。

だめだね、私。こんな弱い体で、どうやって和の親代わりになろうって言うんだろうね・・・

倒れた時にそう思う私は無能すぎた。


「ん・・・ふ・・・」

目を覚ました時、私はちゃんとベットで寝ていた。

そして、甘い声が横から聞こえた。

「唯、大丈夫?」

玲が、和に膝枕して座っていた。

「玲・・・私・・・倒れて・・・」

なんで、玲が・・・?

「和羽君が慌てて俺に電話してきたんだよ。唯のケータイで」

あ・・・そうか・・・

私、また、和に心配かけちゃって・・・

やっぱり私は...

「無能すぎるね・・・」

必然と流れる涙。

自分の無能さに腹が立っているにもかかわらず

本当に弱い奴のように泣いてしまった。

そんな私を優しくなぜてくれるのは玲だった。

「唯は無能なんかじゃないよ。大丈夫、唯は強い子だよ」

「強くなんか・・・ない、よ・・・!私は、かず、の、、親代わり、さえ、にも・・・!」

「唯・・・」

無能な上に恥さらしな私。

・・・親代わりにも・・・玲の恋人にも

似合わない・・・っ・・・

「唯!今、なにかんがえた?!」

「何・・・って、、、私は親代わりにも、玲の恋人にも似合わないって・・・」

「なんでそんな事思うんだよ!?」

「だって、だって・・・!私は、無能なんだよ・・・!?

和に心配かけてばっかり、玲に迷惑掛けてばっかり!

役に立つことが一度もなっ・・・んっ・・・」

私の言葉は、玲の唇によって止められ

その代わりに甘いキスが私を惑わした。

「ん、はぁ...玲・・・」

「それ以上言うな、俺怒るよ?唯は無能なんかじゃない。

俺は唯の事を迷惑だなんて一度も思ったことないよ?

むしろ俺今となっては唯がいなかったら生きていけないよ。

和羽君だってそうだと思う。和羽君にとって唯はたった一人のお姉ちゃんで

たった一人の家族なんだよ?心配しないわけもないんだよ?

だから、唯。一人で悩むな。勝手に無能なんていうな!

俺も和羽君もいる。だから、な・・・?」


玲の言葉にまた流れ落ちる涙。


「ひっくっ・・・れ、、い、、、」

「ん?」

「・・・アリ、、ガト、、」

「うん」


私はその日思い出した。

和を抱きかかえて、微笑む母の言った言葉。


『私の命はもう長くないの。だから、美唯。お願い。親代わりなんて思わなくてもいい。

無理もしなくてもいい。だけどね、和を優しく包んであげてね』

母はこの言葉を言った1週間後に帰らぬ人になった。

私は泣いて泣いて、もう未来なんてないと思った。

けど、泣いてる私を「どうしたの?」と

心配そうに見るまだ4歳の和がいると分かったとき

私の心は少し立ち直れた。


お母さん、和、玲。

本当に、ありがとう。

これからは私がお礼しないと、ね?

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