*第52話*
和と別れて、私達3人は学校近くの喫茶店に入った。
テイルという、人気が少ないけどとてもいい雰囲気の、私お気に入りの喫茶。
「遥君、コーヒー二つとお水一つお願いします」
「かしこまりました」
丁寧なお辞儀を見送った後、私達は席に着いた。
「あ、えっと・・・怜奈さん、コーヒーでよかった、かな・・・?」
「なんでもいいわよ。玲君と同じなら、ね?」
何か意味ありげな表情をする怜奈さん。
・・・きっと、私がお水を頼んだから何か勘違いして言っているのだろうけど・・・。
少しだけ、胸がちくっとした。
「さて、お話の続きしましょう?」
怜奈さんはニヤリと笑う。
玲はとても真剣な顔で、怜奈さんの方を見ていた。
「正直話すことなんてもうないよ。俺と君はの関係はもう友達以下ということは、認識しただろう?」
「そんなの、勝手な自論じゃない!大学に進学するから別れただけであって、私達の気持ちが離れたわけじゃないのよ?!」
怜奈さんは、玲に訴えるように言った。
「それは私の間違いだよ、怜奈。俺だって、最初は好きだった。・・・だけど、君に縛られている感じがとても耐え切れなくて、大学を境に君を振ったんだ」
「縛る・・・?私が、玲君を・・・?笑わせないでよ、あなたと私は相思相愛で、ラブラブでっ・・・」
怜奈さ「んは声をあげる。
誰もいない、静かな喫茶店に響く悲しい嘆き。
心が痛くなる。
それでも、玲はとても静かに言った。
「なにがどうであれ、今俺が惚れてる相手は唯だ。君じゃない。はきちがえてもらったら、困るよ」
その言葉の終わりには、怜奈さんの頬に涙が伝う。
「いや・・・いやよ!なんでよっ。なんで私じゃないのよっ。今からでもいいから私にしてよ!そ、そういえば聞いたわよ?この子、体弱いんですってね?そんな子といたら玲まで弱っちゃうわ。ちゃんと将来を考えて付き合ったほうがいいわ、そうよ。母親もいないでしょう?あ、体が弱いのなら、赤ちゃんも産めな___」
バチンッ
大きく響く、音。
怜奈さんは、頬を押さえる。
・・・玲が、怜奈さんを叩いたのだ。
「どうしてよ・・・なんで私が叩かれるのよ・・・」
「・・・どうして、唯は君にそんなことを言われないといけないんだよ?唯は、少し体の調子を崩しやすいだけ。弱くない、むしろ俺より強い。毎年毎年苦しみに耐えてでも、笑ってる。・・・母親がいないからなんだよ?そんなこと言ったら、俺だって親なんていない」
そこまで言って、玲はスッと息を吸った。
「赤ちゃんが産めても産めなくても、唯の綺麗さに変わりは無い。第三者に口出しされる覚えは無い」
突き破られそうな玲の眼差し。
怜奈さんと玲は、一分ほどジッとしていたけど、怜奈さんが耐え切れなくなった。
「玲君の馬鹿っ!勝手にしろっっっ!!」
怜奈さんはかばんを引っつかんで、テイルを飛び出してしまった。
「私、追いかけてくるっ」
私は、慌てて急いで立つ。
・・・と、やっぱり、眩暈が起こってしまう。
「おっと・・・危ない。大丈夫?唯」
玲が私の体を抱きかかえるように支える。
「わ、たしは、大丈夫だから・・・怜奈さん追いかけないと・・・」
そういうと、玲はとてもやさしい声で言った。
「大丈夫。・・・怜奈には、このぐらい突き放すのがいいんだ。きっと怜奈はさ、俺に依存してしまってるだけなんだよ。怜奈なら、もっといい人見つけられる。・・・根はいい子だからね、あの子」
ふわりと笑う玲。
・・・やっぱり、玲は優しい。
玲は、何でもかんでも突発的に発言してるんじゃなかった。
表では相手を傷つけてしまう言葉をたくさん言ったかもしれない。
・・・でも、裏ではしっかりその人のことを考えて話してるんだ。
「唯、ごめん。唯、すごく傷ついたよね。ほんと、ごめんね・・・」
玲が私をぎゅっと抱きしめる。
「ううん。大丈夫だよ。あのね、玲が怜奈さんに言い返したとき、私ほんとはすごく嬉しかったよ。玲、私のことすごく見てくれてるって感じた。もっと玲を好きになりたいって思ってしまった」
玲の顔を見ると、珍しく玲が頬を少し赤くしていた。
「・・・毎回毎回キュンキュンさせてくれるよ・・・唯は・・・」
「ふふ、気のせいだよー。ほら、玲!大学行こうっ」
ゆっくり立ち上がってお会計を済まして、喫茶をでる手前で止まる。
「どうした?」
玲が不思議そうに首を傾げる。
私は、玲に手を差し出した。
「手、繋いだ行こう?」
私のそんな申し出に、玲は驚いた表情。
でも、すぐ嬉しそうに笑ってくれた。
「うん、そうだね」
そう言って、私の手を握ってくれた。
私も軽く握り返して、テイルを後にした。




