*第46話*
「それじゃ、また明日ね」
「うん、また明日」
玲は改札前まえまで送ってくれた。
6時現在、周りはほんの少しだけ薄暗い。
一応、秋が来ているのだとなんとなく思った。
電車に乗り込むと、朝と大違いにスカスカだった。
ちらほらと会社帰りのおじさんや高校生は見えるけど、それでも
私が乗り込んだ車両には私を含めて6人ほどだ。
この時間帯、意外と人って少ないらしい。
二駅の間に、私は楽譜の構成を練っていた。
どんな楽器を使うだとか、どんなところでハモリをいれるだとか・・・。
意外と、考えるだけで楽しくて、気づけばもう最寄り駅についていた。
******
改札を出ると、また光とばったり出くわした。
「よー、美唯」
「また出くわしちゃったねー」
と、言いながらも、私は光の自転車のかごにポンッとかばんをいれる。
「なんか当たり前みたいに入れてるけど、結構重いんだからな」
「いいでしょう?光は幸い背負ってるし。ね?」
そういうと、光は「仕方ないなぁ」というような表情をした。
相変わらずこういう面でも、光は私に甘い。
小さい頃からそうなんだよね、光は。
「今日は一日どうだった?体調崩さなかったか?」
「うん、今日は大丈夫。けど、特授の時に思いっきり居眠りしちゃってね~・・・」
「うわ、居眠りとかだめじゃん」
「えへへ・・・。あ、でもそれより凄い事起きたんだよ?」
少し興味をもった光に、私はストーカー(?)事件のことを話した。
話終えると、光はおなかを抱えて笑い出した。
「あっはは!!なにそれ、やっおもしろ、うわ、え?あっははは!!!」
「そんなに面白いかなぁ」
「いやだ、だって、アレだろ、ゲホッゲホ、うへぇ・・・。なんか、ギャップ大きすぎね?そいつ」
光がやっと笑いを止めて、涙目でいう。
「んー・・・確かに、そうかもしれないね~」
「だろ?そりゃ玲もイライラくるってもんよ」
「そうなのかなぁ」
相変わらず男の子の感情にはついていけない。
んまぁ・・・玲が怒る事は・・・なんとなくだけどわかってた気がした。
私のために怒ってくれたんだって。
けど、そんな感情まであったとはねー・・・。
「ま、解決してよかったな」
ぽんっと私の肩に手を乗せる光。
「そうだねぇ・・・。相手が素直で本当によかったよ」
「だなー」
こんな感じで会話しながら、私達は家に帰った。
******
「ただいま」
リビングへ行くと、和が掃除機をかけていた。
「あ、おかえり、姉ちゃん」
「和動いていいの!?もう体調悪くない?まだ安静に__」
「大丈夫だよ。ちゃんと朝と昼、薬飲んだし、海ちゃんにもちゃんと許可とった」
ニッコリ笑う和。
その顔色が、いつも通りなことに気づく私。
少しホッとした。
「ほどほどにお願いね?あ、今日は私が夜ご飯作るね。何がいい?」
「んー・・・ハンバーグ?」
和が珍しく、小学生らしい事を言う。
ちょっとだけ、嬉しかった。
「よし!美味しいハンバーグ作るねっ?ミンチあったかなー」
私はキッチン近くにかけてある、パステルピンクの元々は母が使っていたエプロンを着て
冷蔵庫を覗く。
冷蔵庫には、ミンチも野菜も全部が何故か豊富だった。
「あれ・・・?お野菜、少しだけきれてた気がするんだけど・・・」
首をかしげていると、和が小さな声で私を呼んだ。
******
「あ・・・あの、姉ちゃん」
「ん?」
和が気まずそうな顔で、
「・・・昼頃に、・・・・お父さんが来た」
「え?!」
思わぬことを口にする和。
え、いや、お父さんって・・・え?
「そのときにね、たくさんお野菜持ってきてくれて、しかもいろんな食材を置いて帰ったんだ」
「・・・へぇ・・・」
意外だった。
お父さんが、そんなことをするなんて。
「で・・・帰り際に、お父さんが言ってた」
和は、伏せていた目を上げて、私を見つめた。
そして、また、思わぬ言葉にを口にする。
「罪滅ぼしだ。いつかまた、出会えたらうれしい・・・って」
・・・あぁ、お父さんも、ちゃんと考えたんだ。
自分の非を認めたんだ。
よかった、気づいてくれて。
「俺には、そのあと少し寂しそうだった気がする」
「・・・そっかぁ。お父さん来たかぁ・・・。ふふ、まぁ、たまには大人だね、あの人も」
そう言って笑うと、和はほっとした表情になった。
・・・きっと、私がまた、パニックを起こさないか心配だったんだ。
「さーてと!お父さんが珍しくも罪滅ぼしで持ってきたんだから、たくさん使って美味しいの作るね!」
めい一杯笑うと、和も無邪気な笑顔を向ける。
お父さん。
私は、あなたに非を認めてほしかっただけなの。
自分が何をしたのか、心に刻んでほしかった。
もしかしたら、私達のえぐれた傷をお父さんにもつけたかったのかもしれない。
だけど、もういいかなって、今日のお父さんの行動で思えた。
・・・偶然街中で会ったら、その時は「お父さん」って呼んであげてもいいかもしれない。




