*第44話*
「い、ゆい、唯」
左耳の傍から声がして、私はうっすらと目を開ける。
顔をあげると、目の前は教室を出て行く人たちが話し声をあげながら歩いていた。
「おはよ、唯」
「あ、え、うん、おはよう・・・?」
あぁー・・・そういえば私、居眠りしたんだっけ・・・。
やっちゃったなぁ・・・。
「唯が居眠りなんて珍しいね」
「あはは・・・なんか、急に眠くなっちゃって・・・」
眠たくてもがんばっておきてるのになぁ・・・いつもなら。
「まぁ、たまには居眠りもいいと思うよ?なんてね」
言いながら、甘い笑顔を浮かべる玲。
そして、普通に直視できていない私。
「・・・ズルい」
「なにが?」
「なんでもないもん・・・」
私は立ち上がって、知ってるくせに知らないフリする玲を置いて出口にむかった。
「唯待ってよー」
そういわれつい待ってしまい、ぴたっと止まると、つぎの瞬間には玲の手が私の手に絡みつく。
「・・・もう」
「寝起きの声可愛いね?」
相変わらず甘い台詞をはく玲に、私は赤面する事しかできなかった。
******
特授を受ける教室と、自分の教室は、校舎の端と端なのでとても遠い。
移動5分かけなければならいないという。
「唯、どう?まだ、誰か見てる?」
「時々、背中がゾクッ・・・とはするんだけど、大分ましになった気がしなくもないかな・・・?」
そんなあいまいは返事をすると、玲は「んー」と唸ってから、「あ、そうだ」と言い少し怪しげな笑みを浮かべた。
「どうしたの?ひゃっ」
なにを思いついたのか聞こうと思ったのに、いきなりお姫様抱っこされて驚く私。
「れ・・・」
「し。ちょっと走るけど我慢してね」
私の言葉をさえぎり、何をたくらんでいるのか分からないけど、走ることを忠告した玲はいつもより少し速いスピードで走った。
そして、はしりこんだ先は相手の死角となる廊下と踊り場の間の壁。
私をおろして、壁にもたれかかる玲。
「玲?」
「まぁ見てて」
ドカッ
そういった矢先、私達がいるところに駆け込んできた生徒がいた。
「ぬわ?!」
その生徒は、玲にぶつかって尻餅をつく。
私は驚いて、玲の後ろに小さいこのように隠れる。
「つってて・・・なにすんだ!・・・よ?」
しりつぼみな文章を述べる生徒は、目を見開く。
「な、し、新羅玲?!なぜここにいる!」
指差すその生徒を、玲は見下すような目で見ていた、
若干怖い。
「君。人にたずねるときは、ていねいに話すのが常識じゃないかな?
しかも、俺と君は初対面。どうしてそんなに生意気なのかよく分からない」
やんわりとした口調が、よりいっそう恐怖を漂わせている感じがしてならない。
生徒は、フンッと鼻で笑う。 ・
「初対面かなにか知らないが、進藤様に近寄る奴は全員敵だ!手なんかつなぎやがって!」
・・・なんとなくだけど、その生徒のこの発言の直後・・・
ブチンッという音が、かすかに玲の脳内を駆け巡った気がした。
あ・・・やばいかも・・・。
そして、私の予想は真ん中一直線に正解した。
「てめぇ、誰にもの言ってんだこの非常識人」
玲の本気でキレている表情と、ドスグロイ威圧感とドスの利いた声に、生徒は立つ事もできなさそうだった。




