*第42話*
ホームはもちろん、乗り込んだ電車の車内の混み具合といえば
恐ろしいものだった。
いつもながらそうなのだけれど。
「一応空いてそうなところに乗ったんだけど・・・ほんとに気休め程度だね」
少し申し訳なさそうに言う玲。
「朝ってそんなものでしょう?二駅の我慢だから、大丈夫だって」
「そうそう。こうやってラッシュにつかまるのもひと時の幸せってものさ」
望幸の意味不明な文章をさらっと流す玲。
その光景がなんとなく面白い。
「ふふっ・・・。玲、望幸の事嫌い?」
訊くと、即答だった。
「嫌い」
「うわ・・・俺傷ついたよ?玲君」
「知りませんよ」
やっぱり、ほほえましいなぁなんて、ラッシュ時の電車の中で思うことじゃないんだけどね?
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私達が下りた駅に降りる人は少なく、多分皆次の次の駅ほどで降りる。
まぁ、この駅の近くに会社はないし、大学はロル大だけだから用がある人なんて一握りなんだろう。
「さてと・・・俺のマンションはこっちだから、望幸先生はココで」
「俺も行きたかったけど、さすがにここからは俺も教員だ」
そういう望幸の視線の先には、ロル大に向かう生徒達。
「確かにね」
「真面目にやってくださいね。それじゃぁ、行こうか」
望幸と別れて、玲の家に向かった。
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『メゾフ』ロビー。
「私、ここで待ってるね?」
「あ、いや、ついてきて?ココが一番危ないから・・・」
苦笑いをこぼす玲。
私はよくわからず、とりあえず言われたとおりついていくことにした。
「おじゃましまーす・・・」
今日で、二回目・・・・。
相変わらずシックな物ぞろえで、シンプルな部屋だ。
玲の部屋も相変わらず。
「それじゃ、リビングで待っといて」
そういうと、玲は自分の部屋にはいっていった。
リビングに行くと、ひょこひょこと....真っ白な子猫が近づいてきた。
「子猫・・・?玲、猫飼ってたんだ」
知らなかった。
そういえば、この前はリビングに入ってないもんね?
「・・・かわいー・・・・」
しゃがんで、頭をなぜると目を細めて笑ってるように見えた。
「ふふ、可愛い~」
しゃがんだままだと体制がきついから、ソファを借りる事にした。
座ると、猫ちゃんはひょこっと私のひざに乗ってきた。
「可愛いなぁ・・・。私も、猫飼いたいな・・・なんてね」
そんな独り言を言っていると、リビングのドアが開いた。
「おまたせ」
白地に色々英語とかが描かれているTシャツに黒いジーパン姿の玲。
相変わらず、様になっていて、かっこいい・・・。
「あれ?珍しいね....」
玲が小首をかしげる。
「へ?何が?」
「いや、フワが俺以外の人に懐くなんて」
そう言って私のひざの上にいる猫ちゃんを指差した。
「そうなの?てっきり人懐っこい猫ちゃんだと・・・」
「全然。むしろ孤独な猫みたいな感じだからね、この子」
笑いながら言う玲。
「そうなんだ。・・・でも、可愛いなぁ・・・」
ほんとに可愛い。
フワフワだし・・・・あ、だからフワっていうのかな?
「気に入ってもらえてよかったよ。さて、そろそろ行きますか」
「うん。またね、フワちゃん」
抱っこして、下に下ろすとニャァニャァとかわいい声でなくフワ。
玲がポンポンと頭を撫でると、すぐに静かになり、ぺたんこになって寝始めた。
「ふふ・・・可愛いね~・・・」
そういうと、少しまた笑った気がした。
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