*第35話*
電車のホームから出ると、丁度光と鉢合わせした。
「あ、光」
「よ、美唯。学校帰りか?」
「うん。そうだよ」
「体調、大丈夫?」
心配そうに言う光。
私は、笑う。
「大丈夫だよ」
そういいながら、光が押している自転車のかごにポンッと自分のかばんを入れる。
「ならよかった」
「ほんと、光は小さい頃から心配性だね?」
「・・・それはお前のせいだと思うんだけど・・・」
「そうなの?」
そんな他愛のない会話をしながら、家路を歩いた。
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「そんじゃ、また体調崩すんじゃねーよ」
「わかってるもん。それじゃぁーねっ」
「ホント、意地っ張り」
去り際にそんなことをいう光にむくれながらも、家に入った。
リビングに行くと、海莉と望幸と玲が楽しそうに話していた。
和はソファでスヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てて寝ている。
「あ、おかえり。唯」
「おかえり、美唯」
「お前のせいで若干兄さんに襲われそうになったんだけど」
最後の、海莉の言葉に私は笑う。
玲の横に腰を下ろして、学園祭のメモを玲に渡した。
「これ、生演奏で使う楽器だって」
「へぇ・・・結構使うんだね。俺、楽器系とか実は全然わかんないんだよね・・・」
苦笑いする玲。
私は少しだけ胸を張った。
「それじゃぁ、楽譜は私に任せて?ベースになるものは完璧に作るから」
「任せていいの?」
「うん。お母さんが作曲とかするの、隣で見てたり、自分で作ったりしてたから」
唯一、というか・・・私の数少ない、自慢できる事だったりする。
「美唯、そろそろ勉強会始めるよ?」
「あ、うん」
望幸に声をかけられて、私はノートと教科書を準備する。
望幸は自分のかばんから、どっさりと資料の本だの何だのと机にドカンと置いた。
「こ・・・この山は何・・・?」
「資料とか。こういうの使ったほうが分かりやすいでしょ?」
「いや、まぁ・・・それはそうだけども・・・」
こんなにいるの・・・かな?
ま、まぁ、いいんだけど・・・ね?
「それじゃ、まず数学からね。さっき玲斗くんから聞いたとこによると__」
相変わらず、望幸の教え方はうまい。
なんていうか~・・・大人の教え方だなぁーって改めて思える。
まぁ、望幸って実はすっごく頭いいもんね。
そんなこんなで、勉強会が終了したのは、夜の8時ごろだった。
「はぁ・・・終わったぁ・・・」
勢いよく、和が寝ていないソファに飛び込もうとすると
海利に頭をこずかれた。
「いきなり倒れんな。眩暈起こすだろ」
そう言って、海莉は私を引っ張った。
「うわ、え?!」
引っ張られて体制を崩すと、海莉の腕の中にすっぽりとおさまっていた。
「お前ちっせーな」
ポンポンと私の頭を叩く。
なんか、幼い子供みたい・・・私・・・。
「海莉さん、そこは俺の席じゃないですか?」
「あぁ・・・すまねーな。けど、さすがに唯も限界みたいだ」
そういわれた頃には、私はうとうととしていた。
そういえば小さい頃はよく、望幸や海莉に抱っこされて
今みたいな状態で寝てたんだよね、私。
お母さんのぬくもりも好きだったけど、海莉や望幸のぬくもりも大好きだった。
・・・私は、いろんなぬくもりに抱かれて生きてきたんだよね。
「唯、ほんとに寝ちゃったね」
「今日はいろんなことあったからな」
そんな会話が聞こえたのは、私が眠りに落ちるちょっと前。




