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*第34話*

先生が、多分ボーカルの候補者が書いてある紙をジッとみる。

そして、静かに言った。


「今年の学園祭は、新羅君にやってもらいます」


バッと隣をみると、玲がすごく目を見開いていた。

玲にしては、珍しい表情だった。

「俺がボーカル・・・?」

「そうだよ?!よかったね、玲!」

玲より私の方が嬉しかったかもしれない。

玲がボーカル、と聞いただけでとても胸が弾むの。

そして、周りは納得したように大きな拍手を起こした。

先生も笑っている。

「それでは、新羅君。もう一人のボーカルを決めてください」

そう、先生が言うと、玲は即答だった。


「進藤さんでお願いします」


玲はきっぱりと言った。

私はと言うと、自惚れているわけでは...ないんだけど、そんなに驚きはなかった。

「それでは進藤さん。お願いしますね」

「あ、はい」


・・・まさか玲と私がボーカルだとは思っていなかった。

けど、さすがに玲の歌声を上に行くものはいないと思う。

と言うか、いたらその人を確実に褒め称えてる気がするの。


特授が終わって、教室に戻る。

「学園祭の歌、どうしようか?」

「玲が決めて?メインボーカルは玲だから」

「メインもなにも・・・ボーカルってのはその人数を一つと考えてボーカルって言うんだよ」

「・・・でも」

「でもじゃなくて、分かっただろ?あ、一応俺の意見はこの前言ってたデュエット曲がいいな」

玲が笑いながら言う。

楽しげな玲を見てるだけで、少しだけ記憶の事を忘れる事ができた。

「私も、デュエットがいいかな」

「じゃぁ決まりな。楽譜は、どうしようか?」

「生演奏なのでしょう?だったら、どの楽器を使うのかとか、

把握してからじゃない出来ないから、後で先生に聞き行くね?」

「うん、わかった」

話の区切り目で、丁度チャイムが鳴った。


3時間目、理科。

私は相変わらず、授業が分からない。

そして、相変わらず頭に入ってこない。

ずっと外をみて、ボーっと...

夏空は、私の心を置いていくように青すぎてまぶしい。

「進藤、この部分には何が入る?」

「あ、え、あ・・・すみません、わかりません」

「ちゃんと復習するように。新羅、わかるか」

「はい、そこは__」

やっぱり玲は賢いなぁ。

私とは、全然違う。


******


放課後。

楽譜制作のために、先生に訊きに行った。

玲には、(かなり危ないけど)望幸と一緒に先に家に行ってもらった。


「あの、音楽の梅谷先生おられますか?」

職務の先生はいつものようにニコニコと笑う。

「梅谷先生ー。生徒さんが呼んでますよ~」

「はいは~い。あら、進藤さん。学園祭の相談かしら?」

「あ・・・はい。あの、生演奏だって言われたと思うんですが、

どの楽器がどれだけあるかとか、教えてもらってもいいですか?」

「あら、教えるの忘れてたのね。覚えるの大変でしょうから、

今書いてくるわ。少しそこで座って待ってて?」

「はい」

5分ぐらい待つと、先生が足早に帰って来た。

「はい、これ。少し説明しておくわね」

スッと私の横に座って、音楽のベースの参考や楽器で高音低音どちらに適しているかとかいろんなことを説明し始めた。

メモをとりながらの、15分ほどの説明だった。

「分からないところとか、あるかしら?」

「大丈夫だと思います」

「分からないことがあれば、いつでも訊きにいらっしゃいね。それじゃぁ、楽しみにしてるわ」

そう言って、先生は職員室に戻った。


それから私は、もらった紙をかばんにしまって、ちょっとだけ足早に家路についた。

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