*第33話*
皆、次々とオーディションを受けていく。
ついには、玲の番になった。
「次、新羅君」
「あ、はい」
私に小声で、いってくるねと言ってから、先生の下へゆったりと歩いていく玲。
私はその後姿を眺めながら、ふぅ・・・と息を吐く。
・・・どうしてかわからないけど、玲が歌うことに緊張している私。
あ、次の番が私だから緊張してるのかな?
「新羅君は何にしますか?」
「佐藤愛斗さんのキミでお願いします」
先生はコクンとうなずいて、ピアノを弾き始めた。
大好きな曲が、教室に流れる。
しーんとした教室に、スッと玲の吸った息が聞こえた。
そして、次には玲の綺麗な歌声が教室を包む。
『最近は 喧嘩してばかり 正面向かって話すことなんて__」
玲の歌声に、少しコソコソ話していた男子達も、静かになった。
教室には、玲の歌声しか響いていない。
短いバージョンだったので、1分ぐらいで終わった。
玲の声もピアノもやむと、自然に皆、大きな拍手をしていた。
玲は驚いたらしく、私のほうを見た。
私はニコリと笑って、口パクで「よかった」と伝えると、玲が嬉しそうに笑う。
そして、席まで戻ってきた。
「お疲れ様。とっても綺麗だったね」
「ありがとう。今度は唯の番、ほら、行っておいで」
玲に促され、私は立ち上がる。
少し足が震えたけど、玲がポンと背中を押してくれて、すっとピアノの前までいけた。
「進藤さんは何にしますか?」
「進藤麗奈の桜の季節でお願いします」
さっきと同じように、先生はコクンとうなずいて、ピアノを弾き始める。
私の鼓動は、歌の始まりに近づくほど、ドクドクと波打ってきた。
少し怖くなって、玲のほうをパッとみると、玲はふわりと優しく笑ってくれた。
・・・大丈夫、わたしならちゃんと歌える・・・。
『こぼれ落ちた涙_桜の季節が来たね_さよならの季節__』
私の口からは、言葉のように歌が流れた。
そして、脳内では母との思い出がぐるぐると巡り巡る。
歌が終盤に行くにつれ、私の思い出は母とではなく和とのものに変わる。
・・・・それだけ母との思い出が少ないのだと、少し泣きたくなった。
だけど、こんな公で泣いてどうするの?と言う話だから、ぐっとこらえて
しっかり、歌い終えた。
ふー・・・と息を一気に吐くと、ちらほらと拍手が聞こえた。
その中に、玲の拍手が入っていたのは、言うまでもない・・・のかもしれない。
席に戻ると、玲が優しく甘い笑みで「お疲れ様」と言ってくれた。
その笑顔にほっとして、崩れるように椅子に座る私。
・・・こんな、人前で歌うなんて初めてすぎたのかな・・・?
そんなことを思っていると、先生の声がかかった。
「それでは、オーディションの結果発表をおこないますね」
先生の言葉に、皆一斉に先生に注目した。
・・・誰が、ボーカルになるのかな?
結果が、楽しみなような、怖いような・・・そんな気持ちでたくさんになった。




