*第29話*
ソファーの横で体育座りしている私。
・・・何も出来ずにただ、助けを待っている弱い奴。
「タオルケット、これでよかったか?」
海ちゃんがサッカーボールが小さく刺繍されてるタオルケットを抱えて戻ってきた。
「・・・うん」
「加湿器代わりに風呂のドア開けっ放しにしてあるから。」
「・・・うん」
「お前聞いてる?」
「・・・うん」
「・・・はぁ・・・。ホント、ブラコン馬鹿だな・・・美唯は・・・」
「和の事、大好きよ・・・。けど、好きなだけじゃ何もできないの・・・。」
「何言って__」
「ただ、何も出来ずに床にへばってるだけ・・・。どうしたらいいからわからなかった・・・
お世話してもらってばかりで、何も知らないの・・・」
「美唯、お前....」
「ねぇ・・・海莉・・・。私、どうしたらいいのかな・・・。
どうしたら、もっと強くなれるのかな・・・。」
「強く・・・な。・・・俺論からすれば、美唯はすでに物凄い強いと思うが・・・」
「これの何処が強いの?」
聞くと、立って話を聞いていた海莉が私の隣に座る。
「十分強いだろ?毎年毎年体壊して、苦しい癖して嘘でも笑ってて。
俺だったらもう嫌になって、暴走してんだろうな」
「・・・それはそうかもしれないけど・・・。そういうんじゃないくてね・・・?」
「こういう状況に立って、パニックにならない奴はいねーよ。
俺だって電話で言われたときちょっとパニクッたぐらいだ。」
「そう・・・なの?」
「そうだ。大体、美唯でさえも高熱なんてチビの頃に一回しか出した事ないわけだ。
もし、和が美唯の立場だったとしても、パニックになってただろうしな」
そういいながら私の頭にポンッと手を置く。
「いいのかなぁ」
「いいんだよ、大丈夫。つーか、いい加減ブラコン卒業すればどうだ?」
「んー・・・卒業したいところだけど、弟の事が愛おしいって可笑しいの?」
「あぁ・・・。別に可笑しくは無いと思うけど、俺からすれば珍しいな」
「海莉だって、のあがいるでしょう?」
「げ・・・兄ちゃんの名前出すなよ・・・。」
望幸って言うのは海莉の兄、進藤望幸。
海莉の2歳年上のいかにも『大人です』と言う雰囲気を漂わすような
クールでロマンティックな人だ。
海莉みたいな荒っぽい口調とは打って変わって、臨夢まではいかないけど
綺麗な口調で、しいていえば、玲に似た口調かな。
黒髪の短髪で、前髪がいつも長いせいかよく細長いピンで留めている。
「のあの事嫌いだったっけ?」
「別に・・・。嫌いじゃねーけど、愛しいとか寒気するわ」
「のあ、いい人なのに。」
「いい人かもしれないけど、あのエロさに俺は負けるわ」
「あはは・・・。海莉も一回だけ襲われたんだっけ?」
「やめろ・・・お願いだからやめてくれ」
海莉は頭を抱えて下を向いた。
・・・簡単に言えば、のあは世に言う『ホモ』と言うもの。
海莉も一度襲われたらしい。ついでに言うと、臨夢も和も。
臨夢はどうかしらないけど、和は間一髪海莉に救出されたらしい。
「・・・まぁ、兄妹のことが好きだって言えるの、いいのかもしれないな」
少し微笑みながら海莉は言った。
なんだかんだ言って、海莉も兄弟と言うものを大切にしているわけなのだ。
「あ、小学校に電話しないと・・・。」
「おう」
カウンターにある電話を手に取り、和が通う園田学校に電話をかける。
プップップップッ
プルルルルプルルルル
『はい、園田小でございます』
この声は、安野先生かな?
「おはようございます、いつもお世話になっています、進藤です」
『あら、美唯さん?』
「はい、お久しぶりです、安野先生」
『久しぶりね~。あ、どうしたの?』
「あ、はい。今日、和、熱を出しまして・・・。お休みの連絡をと・・・。」
『そうだったの。和羽君は何組かしら?』
「3組だったと思います」
『わかりました。それでは、美唯さんも和羽くんもお大事に』
「ありがとうございます、失礼します」
カチャッ
「はぁ・・・。美唯、後大学までどのぐらいだ?」
「えっと・・・基本的にお昼の授業に間に合えば大丈夫かな」
「そうか。・・・今からさ....美唯のなくした記憶の話、するから。
玲、だっけ?美唯の彼氏も連れて来い。」
「え?!あ・・・う、うん。わかった。メールするね」
海莉のいきなりの申し出に少し驚いた。
・・・そして、記憶の話に少し震える自分。
どうして玲を呼ぶのかは分からなかったけど、とにかくメールした。
宛:玲
件名:無題
本文:
家に来てください。
海ちゃんが私たちに話があるそうです。
もう大学にいたら、ごめんなさい。
唯
『送信しました』
5分ぐらいしてから返信がきた。
宛:玲
件名:無題
本文:
了解(`・ω・´)
玲
「了解だって」
「ん、わかった。」
このとき海莉の表情が珍しく緊張したように
笑顔がなく、硬くて不思議に思った。
・・・私が落とした記憶は、そんなに大きなものなのだろうか?




