*第21話*
「唯・・・?」
「お姉ちゃん・・・?」
私は玲と和の不安を和らげるために
「あ、ごめんね、ちょっと待っててね」
と言い、急いで外に出た。
勢いよくドアを開けて、出たすぐ近くに・・・私の父はいた。
「美唯・・・久しぶりだな・・・」
「・・・なんで、いるのよ・・・」
「今日は、美唯の和に謝罪しようと思ってここに来たんだ。」
「謝罪・・・?ふざけないでよ・・・。そんなつもり、どうせさらさら
なかったんでしょう?なに?お金がほしいの?そんなのないよ?
お母さんが残してくれた大事なお金しかここの家にはないの!」
「いや・・・違うんだ。美唯、訊いてくれ・・・私は・・・
本当に君たちに謝りにきたんだ・・・。勝手に出て行って本当にすまなかった・・・。」
「・・・私は・・・私と和は、そんなことを謝ってほしいんじゃない!
あんたが勝手に出て行った事に関して、私たちは何の興味もないの!
もっと、もっと最低な事をしたのをあんたは忘れてる!!!」
「最低な事・・・俺は、何をしたんだ?」
いつのまにか私は泣いていた。
「あん、たが、、、、あんたが、お母さんの、、、歌、を・・・・!!!!」
「美唯、落ち着いてくれ!俺が何をしたって言うんだ?!」
「あんたが!!あんたがお母さんの否定したんだ!!おかあ、さん、を・・・・!!!」
とてつもない大きな声を張り上げたからだろう。
玲と和が家から走って出てきた。玲はすぐに、崩れ落ちる私を支えてくれた。
「お前は・・・ほんとに、うるさい子供だ。私が仕方なくでも謝ろうとしているのに・・・
今まだ朝の8時過ぎだぞ?そんなに大声出して、近所の迷惑にならないとでも思っているのか?」
こいつ・・・は、何を、言っているの・・・?
うるさい子供?仕方なく謝ろうと?近所の迷惑?
・・・知らない、そんなの知らない。
うるさい子供?それで結構。私はあんたに訴えてるの・・・!
仕方なく謝ろうと?じゃぁこんなところにこないでよ・・・!!
近所の迷惑?それは・・・・
「あんたのせいでしょ!!!!!!!!!!」
自分でもわからないぐらいの叫び声。
その声とともに、私は、意識を失った。
「ん・・・」
目を開けると、なじみのある真っ白な天井。
少し横目には緑色のカーテン。
それだけでわかった。
ここは、病室。大体、私が入院するとここの病室に入れられる。
そのぐらい、今私がいる病室には馴染みがある。
そういえば、丁度明日は検査だったんだよね。
病室がしっかり用意されてる理由がわかった。
そして、手には心地よい温かさを感じ、ついでに寝息が聞こえる。
顔だけ動かして、横を見ると、玲が私の手を握ってベットに突っぷして寝ていた。
その寝顔があまりにも無防備で可愛くて、私は握られていないほうの手で頬をなぜる。
そういえば、私は前にこの反対の状況だった事があったななんて思った。
お母さんがなくなる少し前。もうかなり弱ったお母さんの手を握りひとりでに
お母さんに話しかけていた。すると、お母さんの白い手がスッ・・・と伸びてきて
私の頬に触ったのだ。思った以上に温かかったその手に私は安らぎを覚えた。
「・・・唯・・・」
不意に玲が私の名前を呼んだ。私はびっくりしてまた玲を見たけど
玲はまだ安らかに眠ったままだった。
「なんだ、寝言か・・・」
少し残念に思ったのは内緒ね?
それから少しして病室のドアがあいた。
足音で誰かは分かった。
「和」
「お姉ちゃん」
無邪気な笑顔でベットの傍に来る和。
その笑顔は、私が入退院を繰り返していた頃とおんなじ。
「急に、倒れちゃってごめんね・・・」
「ううん、大丈夫。きっと疲れてたんだよ、お姉ちゃん。
体調崩している間も、色んなことあったもん。ね?」
そう言ってくれる和だけど、きっと数時間前のやり取りを気にしているに違いない。
「あのね、和__」
「ん・・・唯...和羽・・・・?」
話始めようとしたとき、玲がタイミングよく目を覚ました。
「玲、心配掛けてごめんね」
「ううん、痛いところとかない?大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。玲が受け止めてくれたおかげだね?」
クスクスと笑いながら言う私。
そして、さっき話そうとしたいた事・・・父の話を切り出した。
「和、玲。聞いて?さっきの私と・・・お父さんのやり取りの事・・・。」
「お父さん・・・だったんだね」
「あれが・・・俺の、お父さん・・・?」
それぞれ違う反応をするものの、父親に良い印象はないようだった。
それもそうだろうね、さっきのやり取りからして、お父さんが悪いもの。
「そう、あの人は私たちの父親。・・・まぁもう、父親とはいえないかな?
・・・あの人は、根っから最悪な人。偽りの態度をとり、人をだまし、この世を生きぬく
最低な男。・・・今日も、お金を貸せって私たちの家に来たの。
最初は謝りたいって言ってきたんだけどね。あの人に限ってそんな事でここに来るわけないもの。
お金だってすぐにわかったよ。・・・まぁそれだけ、最低な人間。世の中のくずかな。」
冷静に言ってみたものの、今すぐにでもあの人を殴ってやりたい。
憎き相手。どうしてもどってきたの・・・?ほんと、いらない。
「そう、なんだ・・・」
和はとても悲しそうな顔をした。やっぱりいきなりすぎたかな・・・
「和・・・ごめんね。いきなりこんな酷い事・・・
もっとオブラートに包んだほうがよかったよね・・・?」
「・・・ううん。ありがとう、お姉ちゃん。大丈夫、俺強いもん。
・・・記憶のない父親が酷い人だってしっかり分かった。・・・
俺、は・・・泣いたり、しないし・・・」
それでも和は涙目で言う。私は和を抱きしめて
「ごめんね・・・大丈夫。私は絶対和の味方だから・・・ね?
たよんないけど・・・もっとお姉ちゃんを、頼っていいんだよ?」
「う・・・ぐっ・・・うぇぇ・・・ん・・・ひくっひくっ・・・」
人は、憎しみにや悲しさ、恐ろしい真実を知ると必然的に
涙が出てしまう生き物なのだ。
けれど人は、そのかわりに、人の優しさに触れると自然に
温かい涙が流れ落ちるもの。
人がデメリットだけで出来ているはずは、ないのだから。




