*第20話*
目を明けると、玲が....涙を、流していた。
「え?!ど、どうしたの?!玲?!」
あわあわと玲の肩を揺さぶると
玲はハッと我に返って、「あ、ごめん・・・」と苦笑いした。
「ど、どう、して、涙・・・?」
「あ、いや・・・ちょっとこの歌、俺にはわけアリ歌だね・・・」
ワケアリうた・・・?
「何かこの歌に悲しい思い出があるの?」
「んー・・・大雑把に言えばそういう感じかなぁ。
まぁ俺の家の事情って奴かな・・・アハハ」
玲の空笑いのような声に、私は不安を覚えつつも
「あ・・・朝ごはん、作ってくるね?」
と少し戸惑い気味にその場を去ろうとしたとき・・・
「へ・・・?わ・・・わ・・・」
私は玲に腕をつかまれ、引き寄せられて
ポスッと玲の腕の中に収まった。
私は何がなんだか分からず、玲の顔をみると
玲は寂しそうな笑顔を浮かべ、目を俯かしていた。
なにか、悲しい思い出を脳内に巡らせているのかな・・・?
そうだったら、少し・・・いや、かなり私、酷い人、だよね....
「玲、なんか、ごめんね・・・?」
「ん・・・唯が悪いわけじゃない。・・・ただ、俺の親が悪いだけ・・・
あいつらが悪いだけ・・・麗奈さんの歌を傷つけたあいつらのせい・・・」
玲は悲しそうな笑顔から一変して、すごく誰かを憎んでいるような表情で
「俺を捨てた、あいつらのせいで・・・」
とつぶやいていた。玲とは思えないドスの訊いた、怖い言葉。
・・・けど、その表情の中には何となくだけどやっぱり
悲しさを含む表情もあった。
「何が、あった、の・・・?」
「・・・ほら・・・俺、親が離婚して二人ともいないって言ってたでしょ?
俺の家族は結構仲いい家族だったんだよね。・・・なのに、父の浮気を境に
俺の家族の笑顔はなくなった...。そんな時、俺を唯一和ましてくれたのが
この曲だったんだけどね。・・・父はこの曲をたまたま俺の部屋にあったCDで聴いて
俺に言ったんだよ。『愛してる、愛しいだけで育てられる愛情もないさ。こんな
夢のない曲を聴いて何が楽しいんだ?』ってね・・・。俺は一瞬で、その曲が
傷ついたと思った。だから・・・この曲を聴くたびに、ね・・・?」
悲しいのに無理やり笑う玲をみて私は泣きそうになった。
「それ、じゃぁ・・・この、曲は、やめて、おこっか?」
「・・・ううん。これにしよう。この曲が嫌いなんじゃない。
これを歌って、父を見返してやるんだ」
玲はさっきまでの悲しい笑顔とは違う力一杯の笑顔で
私の方に笑いかけた。私も力いっぱいわらって
「うん!がんばろうね!」
と言った。そのときの玲の表情はいつもより甘く優しい表情だった。
朝食を食べて、時間まで和と私と玲の3人で適当に雑談していた。
何故和がいるかというと、昨日、明日もまだ私が復活しないかなと思って
休むといってしまい、今日は何もないけど休んでいるらしい。
「ごめんね、和」
「いいのいいの、次また学校で具合悪くなるかもしれないからね?」
と和はなんでもないように言った。
・・・けれど私は知っている...和は、学校で、皆からはぶられていると。
それはなにもかも私のせいで、『シスコーン!』とか『お姉ちゃんばっかきもいんだよ!』とか
そんなことを毎日言われていたのだ。
和は私より精神的な苦痛を受けているのだろう。
考えるだけで胸が痛い・・・。
「唯、どうしたの?」
「え?あ、ううん、久しぶりの学校だな~と思ってね?
また、ファンの子たちに追いかけられちゃうかもね?」
適当に笑ってごまかそうとしたけど、やっぱり玲にはそんなの気かないらしくて
「嘘はだーめ。ちゃんと言って?」
と真剣な顔で言われた。なんか最近、玲のこういうペースに流されてない?私・・・
私は和には聞こえないぐらの小さな声で和の事を話した。
「そっか・・・それで思いつめた顔をしてたわけね?」
「うん・・・」
玲は俯く私を優しくなぜて
「一人で思いつめないでよ?二人で考えよ、ね?」
そんな玲の優しい言葉に、私はいつのまにか顔を上げて
安心しきった笑顔で笑っていた。
相談できる人がいるって幸せだよね。
私は今、すっごく幸せだよね・・・?
AM8:00
大学は8時30分に出れば間に合うからまだ時間があった。
暇なので結局3人で大富豪をしていた。
「5で!」
「私は・・・7で」
「俺は、12」
「よし!このターン、俺が貰った!ジョーカー!」
「嘘~・・・パス・・・」
「和羽、まだまだ甘い。もっとここを使わないとね?」
玲はここと言いながら自分の頭を人差し指でコツコツと軽くつついて
「俺は・・・スペ3返し!」
と言ってスペードの3をバンッと出した。
「えぇ~!ずるいよ~」
「これも実力のうちだよ?」
スペードの3を出して、玲の手札は後1枚になった。
「玲はやいね・・・」
「唯は遅すぎるよ」
私の手札を指差して言う玲。
ちなみに私はいまだに手札が5枚もある。
和3、私5、玲1だ。確実に玲の勝ちだよね・・・
玲が自分の手札を出そうとしたときだった。
ピンポーン
「あ、俺でるよー」
和がインターホンに出て「はい」と言うと
男の人と思われる人の声が聞こえた。
「キミは・・・・和羽、か・・・?」
「え?そ、そうですけど・・・」
私はその声に聞き覚えがあった。
「そうか・・・和羽・・・。美唯はいるか?」
この、声・・・・
え・・・?まって、この声・・・って・・・
「ちょ、ちょっと和!退いて!」
「え?!う、うん・・・?」
インターホンの前までくると__
私が思ったとおりの人がいた。
「その声・・・美唯なのか・・・?」
なんで・・・こんなところにいるのよ・・・
「お父さん・・・」
玲と和は目を見開いてインターホンと向かいあう私を見ていた。




