*第2話*
玲君と友達になって、早2ヶ月。
6月の上旬、いきなり梅雨時期に入り毎日雨続きだった。
それでも私は毎日眠たい。雨でも温かいから。
私と玲君は大学にいる間、ずっと一緒にいた。
二人ともこれといってほかに友達もいなくて
ただただ雑談をして笑っているのが楽しかった。
「梅雨って嫌だよね。じめじめしてさ」
「そうですねー・・・けど、温かいですよ?
あ・・・でも、電車のラッシュは苦痛ですかね」
「確かにね。びしょびしょにおじさんとかいると引いちゃうよね」
「はい、なんか近寄らないでほしい・・・なんて言うと失礼ですけどね」
「まぁ皆そんなもんだよ、俺だってそう思うからね」
にっこり笑う玲君の笑顔はいつも甘い。
その笑顔と同時に玲君独特の甘い匂いと甘い色の髪の毛。
なんでこんな人に友達がいないのか私には分からなかった。
「・・・なんで、唯みたいな可愛い子に友達できないのかな?」
(何故唯と呼ばれているかというと、美唯の唯を読み方にすると
唯になるから、玲君はそれがいいっていってそれでよんでいます)
急に玲君がつぶやいて、私はびっくりした。
私がさっき思っていたことと同じだって言うのにびっくりしたのと
私を可愛いといった玲君に驚いていた。
「わ、わたしは可愛くないですよ?!逆に言えば、玲君みたいな、その・・・
甘い人に友達がいないのが不思議です」
そういうと玲君は首を傾げて
「俺、甘いの?」
と不思議そうな声で言った。
「はい、玲君は甘いです。笑った顔とか髪の毛とか匂いとか・・・」
「へぇ・・・そんなの気にしたことなかったな・・・
あ、でも髪の毛はよく言われるかな?出来立ての綺麗なキャラメルみたいって」
「キャラメル・・・ですか?私はその、ホワイトチョコと普通のチョコを
混ぜた綺麗なチョコレート色・・・って思ってました」
薄くもなく、濃くも無い玲君の髪色は私の中で
チョコレートって言うイメージが大きかった。
「んー、俺はそっちの方がいいかも。俺チョコレート好きだし」
「そうなの?なんか意外ですね」
「そう?まぁ甘党ってわけじゃないけどね、チョコレートだけすきなんだ」
「ふふ・・・なんか変わってますね」
「よく言われるよ、それ。」
こんな雑談をしているときだった。
『玲様ぁぁぁぁ!!!!!!』
いきなり、廊下からたくさんの女子の声が聞こえて
廊下の方を向くと、そこには・・・何十人もの
女子が、『玲様』というキラキラの団扇をもって目を輝かせていた。
玲君はというと、そっちを見て唖然としていた。
「玲君、知りあい?」
「大学での知り合いは、唯だけ・・・だけどな・・・」
「えぇ・・・?!それじゃ、誰でしょう・・・?」
「さ、さぁ・・・?俺は、知らないよ?」
じゃぁ・・・なんだろ?
というか、めっちゃキラキラだな・・・
ふと、団扇を裏向けてた人をみたとき、そこに
『玲様ファンクラブ』
とでかでかと書いてあった。
あ、そうか、この人たちは玲君にほれたファン達・・・
「玲君、この人たち、玲君のファンですね・・・」
「え!?なに、それ?!」
「ほら、みてください。一番左の人の団扇。」
「ん・・・?玲、様、ファ、ン、クラブ・・・?!え!?えぇ?!」
「玲君、どうしますか?皆の相手した方がいいんじゃないですか?」
「といわれても俺大勢の人って苦手なんだよねー・・・。
あ、そうだ。いっその事逃げよっか?」
「逃げる・・・って?」
「ついてきて!」
玲君は急に立ち上がり私の手をつかんで走り出した。
わたしは最初少し引っ張られるようにして玲君についていった。
後ろからは『キャァァァ!!玲様ぁ~!!』
という声が響いていて、廊下でしゃべっていた男の子達は呆然としていた。
無我夢中で走っていると、急に玲君が止まって
玲君の背中にぶつかってしまった。
「大丈夫?」
「ハァ・・・ハァ・・は、い・・・大丈夫、です・・・」
私は体力が全然ない。こんな事ごときですぐ疲れてしまう。
「おいで」
玲君が差し出してくれた手を私はつかんで
薄暗いどこかを上っていた。
「どこ、いくんですか?」
「ここ上って、そこの光が漏れてるところから外に出たら屋上なんだ」
そういうと玲君は早く上って私を引き上げてくれた。
転げる状態で屋上に出たとき、雨は降っていなかった。
「ここまでくると、大丈夫だね」
「そうですけど・・・地面、ぬれてるからゆっくりできないですね」
水溜りがあるぐらいにぬれいている。幸い転げたところは上に屋根があって
ぬれていなかった。ぎりぎりセーフ。
「大丈夫、いいとこあるから」
立ち上がって、プレハブみたいなところに向かっていく玲君を追った。
玲君はプレハブの裏に回ると、振り返ってにっこり笑って
「ここ、穴場なんだよね」
と言い、私をそこに促した。そこの地面はぬれていなくて
屋根がついているから雨が降ってきてもぬれないところだった。
「本当に、あなばですね」
座りながら私は玲君に言った。
「どうしてこんなところ知ってるんですか?」
「あぁ、兄貴がもとここの大学に通ってたんだよね。で、ちびっこの俺は
よく勝手に家を出て遊びに来てて、兄貴に連れられてここまで遊びに来てたわけ。
まぁ屋上の扉は南京錠5つという恐ろしい鍵の量だから、そこの間から出てきたってわけ」
「へぇ・・・なんか、すごいですね・・・なんか、ちょっとドキドキします」
「でしょ?冒険みたいで、楽しいでしょ?」
「はい!」
思いっきり笑うと、玲君はちょっと驚いてから甘く笑って
「やっぱり、唯は可愛いね」
と甘い言葉を言った。私はその言葉に赤面。
「玲君っ」
「どうしたの?」
少し意地悪く言う玲君。
んも・・・!時々意地悪なんだから・・・!
「なんでもないですよっ」
「ごめんごめん、そんなにすねないで」
「すねてませんよっ」
「ははっやっぱり可愛いね。」
こんな玲君の甘い言葉に自分が知らないうちに
惹かれていたって気づくのは
あと、少しのお話・・・・。