*第19話*
オーディションサイトで色々発掘してくるものの
意外といいものが見つからなかった。
結構あるけど、どれもなんかしっくりこなかったり....
私が俯いていると、玲がふっと声を漏らした。
「唯のお母さんの事務所・・・」
その言葉に私はピクッと犬のように反応した。
「お母さんの、事務所・・・!そうだよ、そうしようよ!」
私はパッと笑顔になり玲に言った。
「いいの?」
「うん。歌手デビューは、お母さんの事務所って決めてたんだよ」
「そっか。えっと・・・唯のお母さんの事務所は何処?」
「フェアリーシフォンだよ」
「え?!そんな凄いところの人なの?!」
「うん、そうだよ?」
「・・・もしかして、、、唯のお母さんって、進藤麗奈?」
「そうだよ?」
「す、すごい・・・よね?」
玲がかなり驚いて言う。
私はどうしてそんなに驚くのか分からず
「そんなに凄いの?」
と素で訊いていた。
「だって、週3~4で歌番に出演、アニメからドラマまで
かなりの曲数を作詞作曲して歌っているって言う・・・」
玲が思った以上に詳しくてびっくりした。
「詳しいんだね?」
「俺、麗奈さんのファンなんだよ」
「そうなの?あ、えと・・・ありが、とう?」
どうしてか疑問系でお礼を言うと、玲は照れたように
パソコンに目をそらし
「フェアリーシフォンだよね」
と言いながら検索していた。
ホームページに行くと、初っ端、シャララララーンと音楽が鳴り
白い妖精が画面を飛んで『フェアリー シフォン』と言う文字を作った。
「さすが、フェアリーシフォンだね。ページも豪華だよ」
クスクスと笑いながら玲は画面を目次に飛ばした。
「えっと・・・あ、丁度オーディション募集してるよ?」
そういって玲は『オーディション募集』と表示されているボタンをクリックした。
「えっと・・・『新人歌手募集*歌手デビューしよう*1~5人なら何人でもOK』だって!」
「丁度いいね、コレ受けよう」
「うん!」
念願の、お母さんの事務所・・・!
こんなに嬉しいってことは、私まだ・・・
夢をあきらめてはいなかったんだと今更ながら思った。
「それじゃぁオーディションの歌は、どうする?」
「んー・・・どうしよう・・・」
私的には、玲の歌声が一番良く聞こえる歌がよかった。
私なんかは少し玲のフォローを出来ればいいと思っていた。
すると、玲はそれを見透かしたように
「俺と、唯、二人の声がよく響く歌がいいね?」
と言った。私は苦笑いで
「そう、だね?」
と言った。最近玲はよく、私を見透かしたような発言を
することが多い気がした。もしかして玲ってエスパーかな・・・
そんな事を本気で思っていたとき
「ここまで来たなら、やっぱり麗奈さんの歌がいいかな・・・」
「だったら、私、やりたい曲があるの」
ずっと歌いたいと願っていた曲....
「進藤麗奈と佐藤愛斗のコラボ曲のね、『愛しい人』って言う曲」
デュエットじゃないと出来ない曲。
私は小さい頃、いつか大好きな人と歌いたいと思ったのだ。
そして、今、それが叶うかもしれないということに
自分で分かるぐらいに目を輝かしている。
「コラボ曲ってどんな歌なの?」
「デュエット曲なの」
目を瞑り、大きく息を吸って歌いだす。
『愛しすぎて_愛しすぎて_この手を離したくない_そう思う
愛しいあなたの温かな手は_小さくて儚い_....
まだ愛しきってない愛しいあなた_目の前で止まる時間_Ah・・・』
歌っていくにつれ、思い出す母と父との思い出。
楽しかったあの頃は、いつの間にかなくなっていた。
それが小5ぐらいの頃だったかな。
父の浮気を境に私の家には嫌な雰囲気をかもし出していた。
喉につまりそうな息苦しい家。
それを和らげたのは唯一、母のこの曲__




