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*第12話*

5分ほどしてから玲は和と入れ替えで部屋に入ってきた。

入ってきた・・・じゃなくて呼んだ、かな。

「大丈夫?」

優しい笑顔で訊いてくれる玲だけど

いつもの甘い笑顔ではなく『心配』の顔色が目立っていた。

わたしは出来るだけ元気よく

「うん、大丈夫」

と答えた。もちろん笑顔を添えて。

でも、私の笑顔はまだ少し足りなかったらしい。

「唯。無理して笑わなくたっていいんだよ。

自分の感情にあわせた表情を持ち合わせてるのが人間なんだから。ね?」

そう甘く優しい笑顔で笑い、私を抱きしめた。

観覧車で抱きしめられたような、夏なのに心地よい温かさだった。

そして私の目からは必然的に涙が流れる。

・・・これで玲の前で涙を流したのは何回目かな・・・。

「ごめ・・・んね・・・ごめ・・・ね・・・」


1時間ぐらい掛けて、玲に私の病状や事情をすべて話した。

ゆっくり・・・ゆっくり・・・

それでも、玲はすべてを優しく受け止めてくれた。

「言ってくれてありがとう。・・・疲れたでしょ?もう横になりな」

「うん、・・・ありがとう。おやすみなさい」

玲に促されて横になった私は、数秒で眠りに落ちた。




「唯、おはよう。調子、どうかな?」

和の声・・・ではなく、甘い甘い声で私は目覚めた。

・・・そして、目の前には玲がいた。

一瞬驚いたけど、もう声に出して驚かないよっ・・・!

「え、っと、・・・ゲッホゲホッ・・・見てのとおり・・・かな・・・」

苦笑いしか出来なかった。この状態で「元気だよ!」とか

いえるはずないもんね・・・あはは・・・

「今日も欠席だね。さて・・・今日も俺はサボりになろうかな」

「え!?ダメだよ!ちゃんと授業出ないと・・・。って、今日もってことは・・・?!」

「あはは・・・昨日はあの屋上でサボってたんだ。あ、でも特別授業はちゃんと出たよ?」

玲の特別授業は、音楽だったっけな。

実は玲は歌手を目指している。でも私はその歌声を一度も聴いたことはない。

「なら、いいんだけどね・・・?今日の特別授業は?どうするの?」

「今日はこれといって大切な授業でもないから大丈夫。てことで、唯の家でサボろっかな」

「んー・・・玲がいいならいいけどね?」

「俺はべつになーんともないからいいよ。あ・・・でもサボるってなんかやだから

唯の看病を口実に休もうかな?」

玲はニコニコしながら言った。

その私の看病を口実に・・・が、本来の目的だと

ずうずうしいかもしれないけど私は思った。

「・・・ありがとう・・・」

そうお礼を言ってみたものの玲には聞こえなかったらしく

「なにかいった?」

といわれて私は少し残念に思った。

・・・けど自分から素直に『ありがとう』と言えただけで嬉しかった。


「お姉ちゃん、玲兄、朝ごはんもって来たよ」

「和羽ありがとう」

「和ありがとう。・・・と言うか、玲と和の呼び名が少しずつ変わっているのは気のせいかな?」

「多分気のせいじゃないだろうね」

「俺が頼んでそう呼んでるんだ!かっこいいでしょ?」

和の無邪気な笑顔に私は

「玲に迷惑掛けちゃだめだよ?」

とだけしか返せなかった。


「朝ごはんパンでよかったかな?」

「うん、大丈夫。・・・っと、フレンチトースト?」

「うん!そう!甘さ控えめでおいしいよ?」

和が自信満々に言った。

確かに和のフレンチトーストは甘さ控えめで

とってもおいしい。甘いものがそんなに好きじゃなくても食べれるぐらい。

「和羽はなんでも出来るね?」

「んーそうかもしれないけど、もっともっと出来る事増やさないと!」

笑ってそういう和の顔色に無理をしているという表情はなく

私は少し安堵の息を漏らした。

「お姉ちゃんは昨日と同じおかゆだよ。今日は野菜の摩り下ろし汁だからちょっと味がついてる」

「そっか、ありがとう。」

「それじゃぁ俺は下にいるから、食べ終わったら呼んでね?」

そういって和はとにかく元気よくしたにおりていった。

朝から騒がしい子だな・・・あの子は・・・


「唯、食べれそう?」

「ん・・・」

まだあまり食欲はなかった。

スプーンですくって口元までは持ってくるけど

それ以上には進まず、何度も何度もそれを繰り返していた。

「昨日も言ったけど食べないと薬飲めないから、ちょっと食べよう?」

玲はパンを置いて、スプーンを手に取り

昨日と同じように「あーんは?」と言いながら

スプーンを口元まで持ってきた。

・・・そして私も昨日と同じように、反射的に

「あー、、、ん・・・?」

と相変わらず語尾には疑問符がついた状態で食べさせてもらった。

この歳になって恥ずかしいけどね・・・あはは・・・

「よくできました。はい、もう一口。あーん!」

「あーん・・・んぐむぐっ・・・」

「お味はいかがで?」

シェフのように聞いてくる玲にならって

「さすが和羽シェフの料理ですね、絶品です!」

とレポーターのように言って見せた。

玲に食べさせてもらったからか、喉に物も通ったし

それを美味しいと思えた。


ご飯を食べ終わって、恐怖の薬の時間。

「玲、ごめん、外に・・・」

「俺もいる。俺は唯がどんな状態であろうと

受け止める気でいるから、ね?」

その優しさは嬉しかった。

けど、本当にそうなのか怖かった。

・・・その私の気持ちを読み取ったかのように玲は

「絶対だよ。こわがらなくったって大丈夫」

と私を安心させてくれる笑顔で言った。



薬を飲み、歐吐えずいている間も玲は私の背中を優しく摩り

「大丈夫、ゆっくり、ゆっくり深呼吸して落ち着いて・・・」

と優しく甘く小さな子供に語り掛けるように言ってくれた。

そのおかげではやくおさまり、疲れた私はコトン・・・・と眠りに落ちた。

そのさいに玲はわたしの耳元で甘く甘くささやいた。


『おやすみ、俺の可愛いハニー』


寝る直前にも私の頬はきっと赤かっただろう。

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