*第1話*
桜が舞い散る4月。
私、進藤美唯は
エトロル大学、通称ロル大に入学した。
いかにも超賢いイイとこの大学って感じだけど
現実は全然普通の大学で
むしろ他よりお金が安いぐらいだ。
まぁ賢い事に変わりはない、かな?
「えぇ、皆さん入学おめでとうございます___」
ロル大の学長、外村英二の挨拶を
私はうとうと・・・としながら聞いていた。
冬が終わり温かい季節になったから最近、よく眠くなる。
おまけに今は学園長のどうでもいい話を聞いてるから
睡魔が私を襲う。まぶたは今にも閉じそう。
うとうとしてても誰にも気づかれない理由は
私のこの長い茶色の髪の毛で顔が隠れるから。
学長の長い長い話が終わり、入学フラグが終わり
自分のクラス、私は1-Aに行った。
黒板に書いてある通りの席に座って私は机に突っぷした。
そして、まぶたを閉じて他の人達の雑談を聞きながら
またうとうととし始めた。
教室に誰も友達がいない私にとって暇のなにものでもなく
結局は寝るしかないのだ。幸い私は毎日眠たい。
「君の髪、綺麗だね?」
不意に聞き覚えのない甘い声と甘い匂いがして顔を上げた。
すると目の前には・・・世に言う『イケメン』というものに
正直ど真ん中ストライクぐらいに当てはまる男子がいた。
瞳が茶色で、肌は白く、整った顔立ち。
なにか甘い香りで、落ち着く香り。髪の毛も甘い色綺麗な茶色毛。
私に笑いかけているその笑顔はまるで空から舞い降りてきた天使のようだった。
「大丈夫??」
「あ、はい。大丈夫ですよ。」
私、なにを心配されたんだろ?
「よかった。俺をみてボーっとしてるからびっくりしちゃったよ」
あ・・・考えてるときずっと見ちゃってたんだ・・・。
「ごめんなさい。驚かせちゃって。考え事するとついボーっとしちゃうんです。」
「そっか、俺なんか変な事しちゃったかと思ってひやっとした」
私の悪い癖は人をジッ・・・と見てしまう事。
気になった人とか不思議な人とかこの男子のような人とかには
いつもそういう風な感じになってしまう。
「ね?君の髪、どうやって手入れしてるの?」
いきなりの質問に私は困ってしまった。
・・・なぜなら、私はよくこの質問をされるのだけれど
毎回言うことが一緒なのだ。そして、それを言うと
その翌日には嫌な噂が回る。中学・高校とそうだった。
「おーい?聞いてる?」
「あ・・・えと・・・」
いつも言う答え。それは、「別になにもしてないよ」だった。
私は本当になにもしてないし、むしろ周りの人より放ったらかしだと思う。
「もしかしてなにもしないでその髪??」
その男子がちょっと驚いた感じで言った言葉に
恐る恐る私はコクリと頷いた。
また嫌な目で見られるかと思って目をそらすと
「俺と、一緒だ」
と目を細めて笑った。私はそれに驚いてつい
「嫌な目で見たりしないん・・・ですか?」
と訊いてしまった。その子は不思議そうに
「どうして嫌な目で見るのさ?」
と逆に訊かれてしまって困った。
「いつも、嫌な目で見られちゃうので・・・」
「それも俺と一緒だね?嫌だよね、あれ。
俺達なにも悪い事してないのにね」
驚いた。この子もそんな思いをしてたんだと。
「君、名前は?」
「あ・・・私は進藤美唯といいます」
「俺は新羅玲。美唯、俺と友達になってくれないかな?」
まだ友達のいない私にとって、嬉しい申し出だった。
「はい・・・!」
私は笑顔で玲君が差し出して手を握っていた。