連載になるかもしれない、ネタ。
#twnovelのネタに、加筆修正。
何となく、連載にできそうじゃない? と。
ぱたぱたと聞こえる軽い足音。
その後に続く、それよりも少し重い足音。
カシャカシャと金属の擦れ合う音とともに、だんだんと近づいてくるそれに、口元に笑みをはく。
「母上、失礼いたします!!」
返事をする前に開け放たれた扉に、傍に控えていた侍女が目を剥く。
しかし、これはいつものこと。
すぐに平常を取り戻し、その顔はいつもの無表情を取り戻した。
「まぁ、王太子。そんなに慌ててどうしました?」
ゆったりと腰掛けていたカウチから腰を上げ、突然入ってきた我が子を出迎える。
普段の大人びた表情とは違う、どこかむくれたその顔に、突然の訪問の理由を悟った。
「父上が、また、新しい側室を迎えられると・・・」
そこにありありと不快を表す我が子に、予想通りの理由に、笑ってしまう。
「えぇ、存じておりますよ。大層お美しい姫君であらせられるとか。今宵は新しい側室様を迎える宴が開かれましょう」
「母上は平気なのですか?! お辛くないのですか?!」
はんなりと笑ったわたくしに、我が子は激情のまま声を荒げる。
どこか潔癖のきらいがあるわが子は、父親の好色が理解できないらしい。
「いくら陛下が側室を迎えられようと、陛下のお子は、わたくしの生んだ可愛い子だけ。この後も、それだけは変わらぬのですよ」
「・・・。それが、父上の、母上に対する愛、だとでも?」
ぎゅうっと固く握る両手を包み、ゆっくりとさする。
泣きそうに歪むその顔に、笑いかけた。
「この国の王太子は、わたくしの可愛い貴方。陛下のお子は、わたくしの可愛い貴方達だけ」
ゆっくりと言えば、いくらか落ち着いたわが子の体から、強張っていた余計な力が抜けた。
「母上が、母上こそがこの国の国母、王妃陛下であられるのに!! 母上には、4人もお子がいるのに!!」
なのにどうして、新しい側室など迎えるのか、と言う我が子。
「陛下には、陛下のお考えがあるのでしょう。数多の側室を迎えるのも、一国の王の務めですからね」
「それで、子ができでもしたら・・・」
異母兄弟ほど、邪魔な存在はない。
生母の身分が高ければ、余計な問題を抱えることになる。
今回迎える側室は、小国とはいえ、一国の王女。
王子でも生めば、後宮は荒れるだろう。
しかし・・・
「大丈夫ですよ。此度の側室の姫君にも、子は宿りません」
抱き寄せた我が子には見えないように、扉の前に立つ騎士を見て笑った。
できるはずがない。
陛下には、種が無いのだから。