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天使降臨

俺、香月 拡(かづき ひろむ)は真っ暗な道をひたすらに急いでいた。

頭の中は半額の文字でいっぱいだった。

最近はコンビニでも遅い時間になると弁当が半額になったりする。

うちの近くのコンビニは店内手作り弁当を売っているので、毎日確実に半額弁当があるのだが、最近の物価高のせいで速攻売り切れるので非常に急いでいた。

もとからそんなに食べるほうではないが、30代になって体力も落ちてきて.ちゃんと食べないと一日持たなくなってきている。

若いころは栄養ゼリーだけでも一日もったのに。

朝と昼はあまり時間がないので、簡単なものしかたべれない。

ので、せめて夜だけはがっつり食べたいところ。

しかし、一人暮らし独身、彼女いない歴イコール年齢、これといった取り柄もなく趣味もなく、貯金はっ多少あっても豪遊できるほどではなく、ただただ平々凡々と過ごす日々、料理もいまいち得意ではないので毎日何を食べようかと悩んでいる。

いっそ水と空気があればなにも食べなくても生きていける体になりたい。

うちは公務員の父と専業主婦の母、なまいきな弟にこまっしゃくれた妹、俺は3人兄弟の長男で、うちはごくごく平均的な家庭。

裕福ではなかったが、ひもじい思いもしたことはない。

おおむね幸せだったと思う。

不倫などの一大スキャンダルもなく、ごく一般的。

成績も平均で、可もなく不可もなく。

兄弟仲もとりたてて悪いこともなく、顔を合わせればそれなりに話もする。

一人暮らしを始めてからは めったに合わなくなったが、それでも合えばそれなりな関係。

そんな俺があこがれたのは漫画のような劇的な出会いや小説のような異世界転生など、架空の世界設定。

ありきたりな毎日から異世界へ転生、もしくは召喚され、チート能力を与えられて、異世界を無双するとか知らない間に女の子にかこまれてハーレム的な感じで楽しく過ごす。

そんなこと起こるはずもないのに、実現してほしいと祈っていた、10代。

そして、そんな夢からさめることなくただ切望していた20代。

その間にも現実は無情にも過ぎ、何事もなく学校を卒業し、ぶなんな職場、残業はそれなりにあるけど、別にいじめとかもなく、厳しい先輩はいたけれど、それも耐えていれば通り過ぎた日々の1ページ。

毎日判で押したように会社に行き、仕事をして一日が終わる、平で何事もない日々。

劇的な出会いもなければ、嬉し恥ずかしな体験もなく。

童貞で30歳になったとき、朝起きて一日すごして、がっかりした。

魔法使いにもなれなかったと。

現在32歳。

何にもなれず、ただ半額弁当を望んで夜道を急ぐ俺。

今日も定時にはおわれなかった。

しかし、別にブラックというほどではない・

残業はそれなりにはあるが、でもちゃんと働いただけ残業代も出てる。と、思う。

なんて、平凡すぎる人生を思いながらコンビニに急いでいるのだが、外灯の少ないくらい曲がり角にさしかかったときだった。

この角を曲がればゴール。勢いよく曲がると同時に羽毛が降ってきた。

なぜ羽毛?俺そんなに眠たかったのかな?

確かに最近めっきり寒さが増してきて、そろそろ冬支度をしないととは考えてはいたが、そんなに羽毛布団がほしかったっけ?

なんて思いながら落ちてきた羽毛を受け止めた。

どさっずしっと受け止めた腕にかなりの重み。

腕の中の手触りの良い羽毛につい、睡魔にまけそうになる。

はっと腕の中を見るとこんもりとした谷間を持つ、肉塊が。

女性?

「一体、なんなんだぁ」

異口同音に叫んだらハモった。

とてもきれいな人なのに思ったよりも低い声。

「あの、後から事情はききますので、とりあえずコンビニに行かせてください。ここで少し待っててくださいね。」

早口にまくしたてると彼女をその場に残し俺はコンビニへ飛び込んだ。

半額弁当を4つあるだけ買い込みさっきの場所へ戻る。

羽根で自分をかくすようにぽつんと白い塊がたたずんでいた。

自分の上着でかくすようにして家へと急ぐ。

なんとか人の目にとまることなく家までたどりついて、改めて見る。

白い肌、ボンキュッボンな素敵な姿態。

白いゆったりとした衣をまとい、天使の輪がないのが不思議なお姿。

胸の谷間に目のやり場にこまる。

白い服以上に白い肌、さくらんぼのように赤い唇。

そして澄み渡る空のような青い目。

綺麗すぎて目がちかちかする。

「えっと、仮装?その羽よくできてるね。」

買ってきたお弁当をチンッして、すすめながらたずねてみた。

この季節、夜はすでに肌寒い。

さすがにそんな薄布1枚では寒そうだ。

はおるものを貸しながら聞くと彼女は弁当をきょとんとした顔でみながら

「これは食べ物か?」

「そうです。かつ丼きらいですか?」

外人さんかな? もしや日本語わからんとか。とも思ったが日本語は通じるようだ。

天使になりきってるのかと思ったが、外国の人がこんな夜中に仮装して迷子?

おれはかつ丼をかき込みながらお茶で流し込む。

さっさと食べないと睡魔にまけそうなのだ。

おれの食べっぷりをみているだけで彼女は結局口をつけなかった。

お腹すいてなかったか、そう思い冷凍庫へほおりこむ。うちのはあついのもほうりこめるように予備冷凍庫があるタイプなのでチンした直後でも冷凍庫へいれられるのだ。

うちの冷蔵庫ってばなんて優秀!!

「あ、あの、ここは...」

おずおずと話し出すが、途中で口をとじてしまう。

言葉がみつからないって感じでうつむいてだまってしまった。

「どこか行くあては?」

「....」

「羽根おろしたら?重くない?」

「...」

なにも答えない、どうしたものかと彼女をみつめる。

「あの...私、天使族のティリエルと申します。」

唐突に話し始めた彼女を見つめる。

天使族...?

まさかこれはもしや! 念願の異世界がもしやのご来訪?

眠気もふっとび、テンション爆上がりで思わず彼女を凝視する。

たしかに現実味がない、気がする。

こんなにきれいな人がこの世に存在するはずがない。

眠いのといつもと違うテンションに思考がおかしいことにも気が付かず暴走しそうな勢い。

「すいません、少し落ち着くまでここにいさせてもらってもいいでしょうか?」

あぁ。そうだよな。もし本当に異世界からきたのならこんな右も左もわからないとこに放り出すことはできないよな!

なにもいわれないのに、一人納得をして「今夜はここに泊って行ってください。」

と、自分のベッドをあけわたした。

「え。でもそれじゃぁ、悪いし。」

「俺なら大丈夫、その辺の床でも寝れるから。」

「そんなわけには...」

押し問答の末、一緒に寝ることになったものの、ん~やっぱ無理!

「年齢=彼女いない歴の俺には女の人と一緒の布団なんてハードル高すぎて無理。

しかもこんな美人さんとなんて。」

「男の人ならいいんですか?」

やばい、心のつぶやきのつもりが声に出てた。

「え、あ、いや、まぁ。」

「なんだ、女の方がいいかと思ってこの体チョイスしたのに。男の方が良かったのか。」

キラキラと光のカーテンの向こうでなにやらボキボキとf不穏な音。

なんということでしょう。ボンキュッボンな見事なやわらかそうな女体が胸板分厚いマッスルボディに...

もったいない...

「おいで」

俺のベッドに寝転がりながら羽と腕を広げ、ウェルカムポーズ。

そういう経験のない俺だけど、これは素直に従ってはいけない気がする。

新たな扉はできるだけひらきたくない。

平凡第一!...あれ? 俺平凡が嫌で非日常にあこがれていたはずだったのに。






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