第十九話の2 図々しさを貸してちょうだい
ショーの終わりごろ。
またトラブルは起きた。
ショーを鑑賞しにきている子供の中から数名が選ばれ、ステージの上で動物にエサをやるコーナーでのこと。
「ずるいわ!」
あの声が響き渡った。
雑談していた観衆は一斉に口をつぐみ、そちらを見た。
手を挙げて指名された子を団員が迎えにきた様子に、目を吊り上げて指をさすオーリーの姿があった。隣で母親が必死になだめようとするも、それを振り切って指名された子にずんずんと近づくと、「私に譲りなさい!」と言った。
その子の両親が「なんだね君は!」としかめっ面をする。
「申し訳ありません、申し訳ありません」
母親がやってきて「私だってやりたい! 私が選ばれないならショーなんてやるな!」と暴れるオーリーを引きずって通路を苦労して歩き、テントの外に出て行った。
やがて会場内は何事もなかったかのように熱気を取り戻した。
「いい加減にしなさい!」
「なんでよ! あそこで文句言ったら私になったかもしれないでしょ!?」
「いつもいつもそうやってわがままばかり」
「ママは人が良すぎるのよ! いつも人に譲ってばかり! パパだって友達に頼まれてお金を貸したらそのまま逃げられて、生活が成り立たないからって遠くの街に働きにいったきりじゃない! 私はそんなみじめな生き方はしたくないわ!」
「どうして、どうして…」
母親は泣きくずれてしまった。
そんな母親には一瞥もくれずオーリーは「ショーの途中で出てきたんだから何か見て帰らないともったいないわ!」とテント裏にずんずんと歩いていった。
「奥様、大丈夫ですか」
仮面の男がしゃがみ込んでいた。
「ここは寒いでしょう。どうぞ、中へ」
「でも、うちの子が」
「ご安心ください。会場周辺は団員もおります。後で私も見に行きましょう」
「ご迷惑おかけして申し訳ありません。何かお礼でも」
「いーえー。所詮子供のわがままですからぁ。ささ」
女性の団員がやってきて毛布を母親にかけた。中に導いていく。
お茶お出ししてあげてくださいねー、と言って仮面の男も立ち上がった。
「さてと」
◇◇◇◇◇◇◇
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