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第十六話の7 カーテンコール
「素晴らしい歌でした」
歌を披露し通行人から金を集めている黒髪の女性に声をかけてくる者があった。
仮面をつけている男だった。
「私、明日からこの町でショーをする者でして。同じ旅芸人としてあいさつさせていただいた次第です」
「へえ、そうなんだ。アタシはミーナ。旅をしながら歌で稼いでるんだ。少しだけ癒しの効果もあるんだよ。まあ肩こりとか鼻づまりが治る程度なんだけど」
「聞きほれました」
仮面の男は歌の礼として金をミーナに渡した。
「ちょっと、10万ギルも。いいのかい?」
「ええ、以前渡しそびれていた残金です」
「は?」
「いえいえ、こちらのことで。お時間あったらまたうちのショーでも見に来て下さい」
「それは残念。アタシは明日ここを発つんだ。次の街にそろそろいきたくてね」
ミーナは笑って金を鞄にしまった。
そうして立ち去ろうとして振り返り、仮面の男をまじまじと見た。
「あんた、どっかで会ったかい?」
「さあ、どうでしょうねえ」
仮面の男は笑ってみせた。
「ふうん、まあいいや。じゃあね」
「またどこかでお会いできるといいですねえ」
「そうだね」
今度はお互いに振り返ることなく、別々の方向に歩いていった。




