第十五話の3 仮面の男と少年
「そっか、おじさん明日から街の広場でショーをやる旅芸人の人だったか。みんな噂してたな」
「団長です」
両手の人差し指を頬にあておどけてみせながら仮面の男は言った。
「おじさんは」
「団長」
「…団長はこんなとこで油売ってていいの」
「ですからあなた方が…」
「シッ! 誰かきた!」
ジャンが仮面の男を引っ張って建物の陰に隠れた。
すでに日は暮れ、夜空には二つの月が上がっている。
人々がそろそろ眠りにつきはじめる時刻であった。
4つの人影が人目を気にするように路地の隅を歩きながらやってきた。
「金を取り立てるんじゃなかったのか」
「ゴネられたら面倒だろう。婆一人、ふんじばって金目のものをかっさらったほうが早い」
「クロード、てめえも手伝えよ。おかしな動きをしたら婆を殺すからな」
「は、はい…」
「キミの言った通りでしたねえ」
「ギャンブルで作った借金とか言ってたから、兵士になったというのは嘘でその日暮らしでもしてたんだろうな」
冷静にジャンは言った。
「さてと。ここからは私の出番です」
「え?」
仮面の男は物陰から姿を現し、4人の男の前に立った。
木札を掲げ何かをつぶやくと、光り輝く鎧の兵士たちが現れた。
彼らは驚くごろつきとクロードをたちまち取り押さえ、縛り上げてしまった。
あっという間の出来事であった。
「すげえ! おじ…団長は手品でも使えんのか」
「そんなとこです。団長ですから!」
えっへんと仮面の男は胸を張った。
「これは…どういうことだい」
話し声に気づいたエレーヌが出てきた。
「まあクロード! あんたどうしたんだい」
「母さん助けてくれよ! いきなり縛られたんだ。こいつらが俺の家を襲おうとしてるのに気づいて取り押さえようとしたのに俺まで捕まえられた!」
クロードが必死で声を張り上げる。
「はあ? 何いってんだ。お前がこの家にたんまり金があるといったんだろ」
「金を全部もっていっていいから奴隷にしないでくれと泣いて頼んだだろうが」
「これがすんだら周辺の家も襲撃すればいいといったのはお前だぞ」
ごろつきたちも声をはりあげる。
「ジャン、どうやらあんたの言ってたことが正しかったようだね」
「おばさん…」
「疑って悪かったよ」
エレーヌは言い争う男達の声が耳に入らないかのように、ジャンに頭を下げた。
「母さん、助けてくれ! このままじゃ奴隷にされる!」
ハァ、とエレーヌがため息をつく。
「旦那をなくして女手一つで育ててきたけど…どこで間違ったんだか…。私はこんなのが息子だったという記憶を消したいよ」
「その願い承りました」
いうが早いか仮面の男が懐から横笛を取り出し吹いた。




